しばらくしてモーガンが部屋に入ってきた。
「パパ、ママ?」
が、部屋には父親の姿はなかった。
「パパ……パパ?!」
何度呼びかけても、トニーは姿を現さない。いや、姿が見えないだけではない。父親の気配はぷっつりと消えてしまっていたのだ。
それはつまり…。
顔色を変えたモーガンは、慌てて母親に触れた。
「ママ?」
ペッパーは息を引き取っていた。
幸せそうに微笑んだペッパーは、トニーの写真を胸に抱いたまま永遠の眠りについていた。
モーガンは母親の冷たくなった頬を撫でた。
モーガンは気づいた。
パパはママとずっと一緒にいるために、幽霊となり、ずっとこの世に居続けたのだと…。私が寂しくないように、そばにいてくれたのだと…。
『ゆっくり眠れなくてもいい。ペッパーとモーガンが幸せなら、それでいいんだ…』
うんと昔、『パパはねんねしなくていいの?』と尋ねたら、父親は笑ってそう言っていた。
自分たちが望んだから、父親は眠ることよりも、自分たちの幸せを最優先に考え、この世に幽霊としてとどまり続けてくれたのだ。
つまり、今度こそ…父親は本当にゆっくり眠ることができるのだ。
それは母親がそばにいるから…。
涙は止まることなく次々と流れ続けた。が、モーガンは考えた。
きっとパパもママも、笑顔で見送って欲しいと思っているはず…。
そこで、涙を拭ったモーガンは、父親の写真とそして母親に向かって笑って告げた。
「パパ…ママ…。私たちは大丈夫…。だからゆっくり眠ってね…」
【END】