I love you 3000… Ⅱ ⑧

LAから戻ってきた3人は、空港からNYの街中を通り帰路に着いた。
3ヶ月前までは、霧がかかったように鬱陶とした街だったNYも、今では以前の活気を取り戻し、輝いていた。

街中を運転しながらトニーは感じた。
5年前、この街から逃げるように湖畔に移り住んだが、今後のことを考えると、そろそろ戻る時期が来たのかもしれない…と。だが、今の湖畔の家も気に入っている。のんびりとした自然の中でモーガンを育てるのには、ピッタリの場所だから。
ペッパーに相談してみようと助手席に視線を送ったトニーだが、妻はすっかり夢の中。ちなみに後部座席の娘は、飛行機の中から爆睡中。
「帰ってからにするか」
大欠伸をしたトニーは、音楽を娘のお気に入りのプレイリストから自分のものに変えると、鼻歌を歌い出した。

その夜。
モーガンを寝かしつけリビングに戻ってきたペッパーに、トニーは昼間の考えを相談してみることにした。
「なぁ、NYに戻るか?」
「え?どうして?」
眉を顰めたペッパーに、トニーは自分の考えを話した。

ペッパーは黙って夫の話を聞いていた。
トニーと同じく、ペッパーもここの暮らしが気に入っていた。だが、周囲から隔離されているため、モーガンは限られた人間としか接することができない。それはそれでいいかもしれないが、ペッパーはディズニーランドであった出来事を思い出した。

夜のショーを見るために座って待っていた時のことだった。待ち時間を退屈しないようにと、トニーはモーガンのためにホログラム内蔵の腕時計を作っていた。
席に着くや否や、早速ホログラムで遊び始めたモーガンだが、そばにいたモーガンと同じくらいの男の子が、それに食いついた。
「すごいね!それ!どこでかったの?」
男の子からしてみれば、珍しい物を見つけたので聞いてみた…それは自然なことだ。だが、モーガンは男の子を警戒するように見つめた後、トニーに抱きつきシクシク泣き始めたのだ。
「坊や、これはおじさんの手作りなんだ。だからどこにも売ってないんだ」
男の子にウインクしたトニーは、それから暫くペッパーと2人で娘を宥める羽目になった。

モーガンは産まれた時から限られた人物としか接したことはなかった。彼女が知っているのは、ハッピーとローディだけだった。本当に時折だが、用事で街に連れて出ることはあったが、閑散としている街では、出会う人は殆どいなかった。そのためモーガンは、極度の人見知りになっており、敵から守るためだと良かれと思いやってきたことが、逆によくなかったのでは…と、2人はその後話し合ったのだ。

「そうね。モーガンもそろそろプリスクールに通わせた方がいいでしょうし…」
ペッパーがそう言うと、トニーは溜息を吐いた。
「それはそれで寂しくなるな…」
生まれてこの方、娘とベッタリだったトニーは、モーガンのいない時間を考えると、寂しさを感じたが、それも娘の成長のために必要だから仕方ない。
「だが、週末は必ずここで過ごそう。家族だけでのんびりと…」
「そうね…」
見つめ合った2人はキスをすると、早速NYでの家を探すことにした。

⑨へ…

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