Don’t leave me…

「パパ、いかないで…」
目に涙を浮かべたモーガンは、トニーの足に縋り付いた。シクシク泣き始めた娘の頭を軽く撫でたトニーは、困ったようにペッパーを見つめた。
「モーガン。パパは髪を切りに行くの。だからすぐに帰ってくるわよ」
娘のそばに腰を下ろしたペッパーは、彼女の背中をゆっくり撫でた。妻に続けるように、トニーも娘に声を掛けた。
「ママの言う通りだ。パパはかっこよくなって、すぐに帰ってくるぞ?」
両親から慰められたモーガンはピタッと泣き止むと、上目遣いでトニーを見つめた。
「ホント?」
その仕草は、ペッパーにそっくりで、トニーは自然と頬を緩めた。
「そうだ。帰りにモーガンの好きなアイスクリームを買ってこよう」
パッと顔を輝かせたモーガンは、今度は満面の笑みでトニーに抱きついた。
「じゃあね、あたしね、ここでまってるね!」

トニーが出掛けようとするとモーガンが愚図る…それは数週間前から始まった。特に何かがあった訳ではない。だが何故か分からないが、モーガンはトニーから離れようとしないのだ。

その日が近いのかもしれない…。
モーガンにはそれが分かるのかもしれない…。

行かないでと泣く娘の手を振り切ってでも行かねばならない時が…。
二度と…我が子を腕に抱くことの出来ぬ日が…。

そんな杞憂を拭い取るように頭を振ったトニーは、母親と手を振っている娘を見つめながら、車に乗り込んだ。

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