「モーガン…」
寝息を立てている娘の頬を突きながら囁くと、モーガンは目を開いた。寝ていたと思っていたのに起こしてしまったと鼻の頭を叩いたトニーだが、父親によく似た彼女の大きな瞳は、嬉しそうに煌めいている。
あーあーと声を出した娘をトニーは抱き上げた。
何やら訴えるようにお喋りを始めた娘に相槌を打っていたトニーだが、ふと恐怖と不安が襲いかかってきた。
「なぁ、モーガン…。もし…もしも、パパが…」
トニーは言葉を切った。首が座ったばかりの幼子に言っても、覚えていてくれないかもしれない。だが、トニーは毎朝必ず自分の思いを娘に伝えていた。いつその時が来てもいいように…。
「もし…パパが…モーガンのそばにいられなくなっても……パパのこと…覚えておいてくれよ…。モーガンとママは…パパの…大切な世界そのものなんだ…」
じっと父親を見つめていたモーガンだったが、手を伸ばすとトニーの頬に触れた。
小さな温もりは、トニーの心をいつだって癒してくれる…。
離れたくない…。やっと手に入れた家族というものを手放したくない…。出来ることなら、この子の成長を見届けたい…。託すことのできる相手が見つかるまで…妻と2人で…。
目をギュッと閉じたトニーは、何度か首を振った。そして今日という日を精一杯愛情を込めて過ごそうと、娘を連れてリビングへと向かった。