12月。
願書も出し、後は結果を待つだけのペッパーは、もうすぐクリスマスということもあり、浮かれていた。
「プレゼント、何にするの?」
「何がいいかなぁ…。あ、この帽子とかどうかなぁ?」
放課後、友達とショッピングに出かけたペッパー。クリスマス前のショッピングは、必然的にプレゼント選びとなるのだが、今年はペッパーもその中に入ることができるため、お喋りしながらお互い見繕っていたのだった。
だが、ペッパーに彼氏がいることは知っているものの、誰一人として相手のことは知らない。みんな知りたくてしょうがないのだが、ペッパーは断固として会わせようとしない。
つまり、ペッパーの話を継ぎ合わせた『27歳の社会人。子供っぽいところもあるけれど、キスの上手な世界一カッコいい大人の男性』というのが、みんなが知っているペッパーの彼氏だった。
「何がいいかしら…」
唸りながら真剣に考えるペッパー。と言うのも、トニーは社会人。大抵の物は持っているし、逆にペッパーはいつも買ってもらってばかりなのだ。
「ペッパーの彼って、働いているから、何でも持ってそうよね? 難しいわよね」
「うん…。何がいいかなぁ…」
ブラブラと店内を歩くペッパーの目にある物が止まった。
(あ!これなら…。きっと使ってもらえる!)
色とりどり並ぶ中から、ペッパーはトニーに似合いそうな物を手に取ると、レジへ向かった。
放課後、いつものように二人きりの甘い時間を過ごした後、帰ろうとしたペッパーにトニーが声をかけた。
「クリスマスはどうするんだ?」
「毎年、親戚で集まるの…。あなたのことも紹介したいけど…。無理よね…」
しょんぼりと肩を落としたペッパーを元気付けるように、トニーは頭をくしゃっと撫でた。
「じゃあ、来年の俺の席、予約しといてくれるか?」
「分かったわ!ねぇ、トニーはどうするの?」
「俺か?普段と変わらないかな…家にも帰らないし。毎年、独り者同士(ちなみに、スティーブとバナー)集まって、うちで朝まで飲んでるから…今年もそうなるだろうな…」
苦笑するトニーだが、その目はどこかさみしそうだった。
せっかくのクリスマス…やはりトニーとも過ごしたい…。そう思ったペッパーは、トニーの方へにじり寄った。
「ねぇ?24日は無理だけど…23日はお泊りしていい?」
上目遣いでおねだりするペッパー。そのかわいらしい姿にトニーは頬を緩めた。
「ああ。二人でパーティーやるか?」
「うん!トニー、大好き!」
腰に抱きついてきたペッパーの頭に、トニーはそっとキスをおとした。
***
23日。昼過ぎにトニーの家にやって来たペッパー。リビングで存在感を放つクリスマスツリーを見たペッパーは、飛び上がって喜んだ。
「どうしたの?このツリー。この間来た時はなかったのに?」
ツリーも買えばよかったな…と思っていたペッパーは、予想以上に大きいツリーに目を白黒させていた。
「せっかく君とクリスマスを過ごせるんだ。買ってきたんだ。ほら、飾り付けするんだろ?」
ツリーの足元に置かれたオーナメントの入った袋をトニーは笑いながら指差した。
「トニーってどうして私が考えてることが分かるの?」
オーナメントを飾りながら、ペッパーはトニーに以前より思っていたことを聞いてみた。
「さぁ、どうしてかな?」
不思議そうな顔をしているペッパーにキスをおとしたトニーは、楽しそうに笑い続けた。
ペッパーの作った夕食を食べた二人は、ソファーの上で抱き合っていた。
「一日早いけど、プレゼントだ」
細長い箱から現れたのは、小さなダイアモンドの付いたネックレス。
「かわいい!ありがとう、トニー!でも、高いんでしょ?いつもいろいろ買って貰ってるのに…」
顔を曇らせたペッパーに、トニーは笑って答えた。
「いいんだ。その代わり、身体で貰ってるから…」
(身体で?つ、つまり…。そ、その…)
真っ赤になったペッパーは、恥ずかしさのあまり手で顔を覆ってしまった。
(からかいすぎたか?)
頭から湯気が出そうなくらい赤くなっているペッパーを見たトニーは、ポケットの中を探り始めた。
「あとこれは…プレゼントというか…ずっと渡そうと思っていたんだが、どうもタイミングが合わなくて…」
ポケットから取り出した物を、ペッパーの手の上にそっと乗せた。
それは、トニーの家の鍵だった。
ずっと憧れていた合鍵を目の前にして、ペッパーの心臓は跳ね上がった。
「いいの⁈」
「ああ。いつでも来ていいからな」
「ありがとう!嬉しい!」
トニーの顔に何度もキスをしていたペッパーだが、自分もプレゼントがあることを思い出し、トニーの膝の上から飛び降りた。
ツリーの下に置いたブルーの袋を手に取り、跳ねるように戻ってくると、トニーの目の前に差し出した。
「これ…私からのプレゼント。ごめんね…少ないんだけど…」
差し出された袋から、丁寧にラッピングされた箱を取り出したトニーは、ペッパーを膝の上に再び座らせると、顔を覗き込んだ。
「開けていいか?」
無言で頷くペッパー。
(トニーは気に入ってくれるかしら?)
ペッパーの背中を撫でながらトニーは箱を開けた。箱の中には、ブルーのストライプのネクタイと、ネクタイピンが入っていた。
「ありがとう、ペッパー。一目で気に入った!これは、とっておきの一本にするよ」
「トニーも時々ネクタイしてるでしょ?ネクタイ締めてるトニーって、カッコいいんだもん…」
トニーの言葉に自分のプレゼントが気に入ってもらえたと安心したペッパー。恥じらいながらも甘えるようにトニーの頬に自分の頬をすり寄せ、トニーをじっと見つめた。その期待に満ちた瞳を見つめたトニー。
「そうだ、もう一つもらっていいか?」
そう言うと、小さく頷いたペッパーに甘く蕩けるようなキスをした…。
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