Kiss the Teacher~夏編3

「ちゃんと目的を果たさないとダメだろ?」
翌日、ペッパーの希望する大学へとやって来た二人。
キャンパス内を歩き回っていた二人だが、
「スタークくんじゃないか?」
という声に振り返った。
「先生!」
初老の男性はトニーに向かって手を振っている。聞けば、トニーが大学時代お世話になった恩師だという。

十年ぶりの再会に盛り上がる二人。自分の知らないトニーの話に、気を利かせたペッパーは少し離れたところにいたが、二人の会話はしっかりと聞いていた。
「先生はいつからこちらに?」
「二年前だよ。だが、君のような学生にはなかなか出会えないな…。あの時、研究室に残るよう説得しておけばよかったよ」
「そんなことはないですよ」
「謙遜するな。そういえば、君はまだ教師をやっているのか?」
「えぇ、性懲りもなくやっています」
苦笑するトニーの肩をトニーの恩師は小突いた。
「君のように優秀な人間がもったいない…。早くお父上の跡を継いであげなさい。君のように優秀な頭脳は、もっと世の役にたてないとダメだ!ところで、どうしてここへ?」
「生徒の付き添いです。ここに入学したいと言っているんで、見学しに来たんですよ」
「あの子かい?君も変わったな。いや、いい意味で、だ。人間らしくなったというか…」
「彼女たちのおかげですよ」
「そうか…。今度来る時は連絡してくれ。一杯飲みながら…な?」
手を振りながら去って行った恩師の後姿を、トニーはじっと見つめていた。

『早くお父上の跡を継いであげなさい』
その言葉を追い払うように、頭を振ったトニーは、ペッパーの元へ歩いて行った。

「ペッパー、待たせて悪かった」
「ううん。久しぶりにお会いしたんでしょ?」
「あぁ、十年ぶりだ」
どこか深刻な顔をしたトニーに気付いたペッパーは、わざと明るい声で言った。
「トニーってやっぱり優秀だったのね。すごいわ」
「そんなことはないさ。もう見たい所はないか?なかったら、どこかで食事して帰ろう」

***

途中ハンバーガーを食べた二人は、LAの市内を抜け帰路についていた。
助手席でうとうとしていたペッパーは、
「しまった…」
と小さく舌打ちしたトニーの声に目を開けた。
「どうし…、あ…」
ペッパーの目の前にはとてつもなく大きな会社が広がっていた。
あちこちに見える社名、それを目にしたペッパーは、トニーが何に対して舌打ちしたのか気付き口を閉じた。
何か言おうとしたペッパーに気付いたトニーは、
「…うちの会社だ…」
と言うと肩をすくめた。
トニーに嫌な思いをさせてしまった…。偶然とは言え、今日は彼にとってはあまりいい日ではなかったはず…。
「ごめんなさい…私がLAに来たいって言ったから…」
「何で謝るんだ 俺が道を間違っただけだ。君のせいじゃない。それに、楽しかっただろ?」
涙ぐんでいるペッパーの頭をトニーは笑いながら、くしゃっと撫でた。

***

「ここでいいのか?」
ペッパーの家の近くで車を停めたトニー。
「うん。家の前だと、パパとママにばれちゃうから…」
「そうか。暗いから気をつけろよ」
「大丈夫よ、すぐそこなんだから…。トニー、ありがとう。すごく楽しかったわ」
唇にキスを落としたペッパーは、後部座席の荷物を手に取った。

「あ!そうだ!忘れてた!」
大きな袋の中からミ○ーのぬいぐるみを取り出したペッパーは、それを助手席に置いた。
「トニー、この子はあなたが持って帰ってね」
「俺が?」
「そう!私がいないときは、私だと思って可愛がってあげて?私もミッ○ーをあなただと思うから…」

助手席のドアをバタンと閉めたペッパーは、トニーに手を振ると、家の方へ走って行った。

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