No surprise(IWネタバレ注意)

「サプライズはもうなしよ」
婚約会見の後、嬉しそうに笑いながら、ペッパーはトニーにそう告げた。だが、トニーは元々ペッパーを驚かせ、そして喜ばせることが好きなので、そんな約束を守るはずもなく…。

ある週末。先に目を覚ましたトニーは、まだ眠っているペッパーを起こさないように起き上がった。
バスルームに向かうとシャワーを浴び身支度をすると、昨日買っておいたグルテンフリーのマフィンを温め、コーヒーと共に寝室へ戻った。
「ハニー、おはよう」
朝食をサイドテールに置いたトニーは、まだ微睡んでいるペッパーをシーツごと抱きしめると、顔にキスをし始めた。
「おはよ…」
小さく欠伸をしたペッパーは起き上がると伸びをした。
「ほら、今日は出かけるから、早く支度しろ」
そう言いながら朝食をセッティングし始めたトニーに、そんな予定はあったかしらとペッパーは小首を傾げた。

「どこへ行くの?」
車に乗り込み、走り始めても、トニーは行き先を教えてくれない。何度聞いても話をすり替え教えてくれないのだから、10分も経つと諦めモードになったペッパーは、外の景色を眺め始めた。
と、トニーが車を停めた。
「ハニー、着いたぞ」
車を降りたペッパーは、呆然と立ちすくんだ。というのも、目の前にある建物は、誰がどう見ても教会なのだから…。
「え……」
口をまん丸に開けたままのペッパーがトニーを見つめた。するとトニーはペッパーに怒られるのではないかと一瞬ビクッと肩を震わせたが、ゴホンと咳払いをした。
「ハニー、もう我慢出来ないんだ。だから、結婚しよう」
結婚しようも何も、再来月には式を挙げるのだ。マンハッタンの教会で式を挙げ、その後大勢を招待しパーティーを開くことになっている。今ここで挙式するということは、その予定を全て不意にするということだろうか…。
「再来月の式は、ど、どうするのよ?!」
目を三角にしたペッパーに、トニーはあっけらかんと答えた。
「再来月は予定通り式を挙げる。2回目の式を。2回も君のウェディングドレス姿を見れるなんて、私はラッキーな男だ。ペッパー。一刻も早く君を妻にしたい。早く君と夫婦になりたいんだ」
一刻も早く結婚したいのはペッパーも同じだが、これこそ本当にサプライズ。去年の婚約発表といい、どうして彼はこうもサプライズ好きなのかしら…と、ペッパーは頭を抱えた。
「トニー、サプライズはもうなしよって言ったでしょ?」
怒っている素振りを見せているが、ペッパーの顔には満面の笑みが浮かんでいる。可愛らしく睨みつけてくるペッパーの腰を抱き寄せたトニーは、チュッと唇を奪った。
「いいだろ、こういうサプライズは」

控え室で髪とメイクを整えてもらい、ウェディングドレスを着たペッパーは、ブーケを持つと深呼吸した。
「お綺麗ですわ、ポッツさん」
馴染みの美容師は、ニコニコと嬉しそうだ。
「トニーったら、いつから用意してたのかしら…」
総レースのドレスはサイズもピッタリで、おそらくオーダーメイドだろうから、トニーは随分前からこのサプライズを用意していたに違いない。
忙しい合間を縫って準備してくれていたのだろう。彼の気持ちが嬉しくなったペッパーは部屋を飛び出した。

祭壇前にはトニーがいた。
タキシードに身を包んだトニーは、ペッパーの姿を見ると一瞬目を丸くしたが、見たことがないような優しい笑みを浮かべた。
席にはローディとハッピーがいた。
「ちょっと待って。みんなグルだったの?」
そう言いながらトニーの元へと進むと、そういうことだとニヤッと笑ったトニーは、ペッパーの手を握りしめた。
誓いの言葉を述べ、婚約指輪と同じくハリーウィンストンの結婚指輪を互いの左手に収めると、トニーはとびっきり甘いキスをした。
「これで正式に君を我が妻にできた」
ペッパーの腰を抱き寄せたトニーは、出口に向かって歩き始めた。
「ローディ、ハッピー、後は頼んだぞ?」
そう告げると、トニーは胸元のリアクターに触れた。途端にトニーの身体はアーマーに覆われた。
「さて、ハニー。ハネムーンに出発だ」
「え?!ハネムーン?!」
このサプライズは一体どこまで続くのかと目を白黒させているペッパーを抱きかかえたトニーは、そのまま空高く飛び上がった。

しばらく飛び続けたアイアンマンは、ハンプトンにある一軒の家へ降り立った。
「ここ、どこ?」
「我が家さ」
「我が家?!」
世界各地に何軒か家はあるが、ハンプトンにはないはず…。ポカンと口を開けたままのペッパーに、アーマーを格納したトニーは慌てて告げた。
「買ったんだ。結婚祝いに。NYから近いし、週末の別荘にはうってつけの場所だろ?」
確かにNYからハンプトンはすぐだ。問題はお互い忙しく、週末も休みがないことが多いこと。だがこれからは時間を作り、週末は夫婦でゆっくりするのもいいかもしれない…。
「ありがと、ダーリン。次の週末が待ちきれないわ」
ニコニコと笑みを浮かべたペッパーはトニーに抱きつくとキスをし始めた。

近くのカフェでランチを食べ、ブラブラとショッピングをし、トニーが予約していた海辺のレストランでディナーを食べ…。誰にも邪魔されず、ありきたりだが平穏な一日を過ごした2人は、我が家へと帰ってきた。

「シャワー浴びるけど…一緒にどう?」
リビングのソファーに寝転び、TVのリモコンに手を伸ばしかけたトニーだが、ガッツポーズをすると、そそくさとペッパーに続いた。

シャワーを捻ると、2人に熱いお湯が降りかかった。背後からペッパーを抱きしめたトニーは、胸から尻を撫で回しながら、彼女の首筋に印を刻んだ。段々ともどかしい感触に耐えきれなくなったペッパーの口からは甘い吐息が零れ始めた。クネクネと動くペッパーの腰を掴んだトニーは、反り返った自身を取ると、熱い蜜壷へ入り込もうとしたが…。
「待って…」
トニーを制したペッパーはくるりと向きを変えると、彼に向き合った。
「どうした?」
小さく唸ったトニーに、ペッパーは慌てて首を振った。
「あなたの顔を見ていたいの」
そう言いながら、ペッパーはトニーの胸元にある青白い光にそっと指を這わせた。

数週間前、トニーの胸元で再び光だしたリアクター。一度は除去したはずなのに、この6年、彼を捉えて止まない、まだ見ぬ脅威のために、彼は再びリアクターを身につけた。これがある限り、彼は戦い続けるだろう…。これが必要なくなる日は来るのだろうか…。

目をキュッと閉じたペッパーは、トニーの胸元に顔を押し付けた。
「ハニー、愛してる…」
ペッパーの耳元で甘ったるい声で囁いたトニーは、彼女の背中を壁に押し付けると、片足を持ち上げた…。

身体中に愛を刻み込まれたペッパーは、降り注ぐ朝日で目を覚ましたのだが、先に起きていたトニーがじっと自分を見つめていることに気づくと、左手を伸ばし彼の頬に触れた。
「おはよう、ミセス・スターク」
「おはよ、ダーリン」
左手を握り合うと、お揃いの結婚指輪がぶつかりあい、心地よい金属音が響いた。
それは自分たちの関係がまた1つ前進したという証。誰にも裂くことの出来ない絆がまた1つ増えたという証…。
嬉しさのあまりクスクス笑い出したペッパーを、同じく笑みを浮かべたトニーは腕の中に閉じ込めた。
顔中にキスを受け、ペッパーはくすぐったそうに身をよじったが、何か思いついたのか、ニヤニヤし始めた。
「ねぇ、結婚しちゃったことは、2人だけの秘密にしない?」
悪戯めいた表情のペッパーに、トニーは眉を吊り上げた。
「ローディとハッピーは知ってるぞ?」
「あの2人は特別。家族ですもの」
それはそうだと納得したトニーだが、どうして秘密にしたいのか理解できない。
「何で秘密にしたいんだ?」
首を傾げるトニーの胸元に、ペッパーは甘えたように顔を擦り寄せた。
「だって、極秘に結婚したってバレたら、マスコミが騒ぎ立てるわ。今まで以上に追いかけ回されて、ここで週末をのんびり過ごせなくなるかもしれないわよ。私ね、束の間の平穏な暮らしを体験してみたいの」
言われてみればそうだ。ただでさえ、結婚式はTV中継させろと煩いマスコミなのだ。極秘にさっさと結婚したとなると、今以上に騒ぎ立てるのは目に見えている。
「それは一理あるな」
納得したように頷いたトニーは、ペッパーと顔を見合わせると腹を抱えて笑った。

***
ジョギングシーンでトニーが言っていたサプライズがこういうことならいいですね。

3 人がいいねと言っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。