『日本には餅つきという風習があるらしい』
どこから聞きつけたか知らないが、スティーブ・ロジャースが木製のハンマーと樽のようなものを担いでスタークタワーに現れたのは、1月1日のことだった。
新年早々何しに来たんだと顰め面をするトニーに気付いているのかいないのか、荷物を下ろしたスティーブは額の汗を拭った。
「だから、餅つきをしよう。折角だから、みんなにも声を掛けたんだ」
面倒だと言おうとしたトニーだが、ブルースにソー、ナターシャにクリントが到着したのに気付くと、口をつぐみやれやれと首を振った。
「で、どうやるんだ?」
臼の中に蒸かしてきたもち米を入れたブルースは、横に跪くと餅つきについて説明し始めた。
「杵で餅をついていくんだ。で、僕が時々、餅を真ん中に集めていくから、その時は僕の手を叩かないでくれよ」
要するに、白い餅を杵というものでついていけばいいのだと何となく理解した面々だが、やったことがない作業なのだ。一体誰がつくのかとお互い無言で牽制し始めた。
「悪いが私はパスだ」
一番に口を開いたのはトニーだった。皆の非難めいた視線を感じたトニーはひらひらと左手を振った。見るとその手には白い包帯が巻かれているではないか。
「仮病じゃないぞ。火傷したんだ、火傷」
実はトニー、風邪で寝込んでしまったペッパーのために料理を作ろうとしたのだが、料理どころか自分の手に火をつけてしまいこの有様なのだが、詳細までもは話したくない。若干疑いの目を向けてくる仲間から主人を救い出さねばと考えたジャーヴィスは、助け船を出した。
『本当でございます。風邪で寝込まれているペッパー様のために、トニー様は料理を作られ、火傷をされたのです』
ジャーヴィスの言葉に妙に納得してしまった一同は大きく頷いたが、そうかと言って自分が一番にやりたくはない。というのも、失敗すれば何を言われるか分からないからだ。微妙な空気に目をくるりと回したトニーは、スティーブの背中をバンっと叩いた。
「言いだしっぺはキャプテンだ。だからまずはキャプテンが手本を見せてくれ」
まさかトップバッターに指名されると思っていなかったのか、スティーブは目を白黒させているが、皆に拍手喝采で乗せられると、渋々杵を手に取った。
ようやく餅つきが開始できると腕まくりをしたブルースは、ここで重要なことに気付いた。
キャプテン・アメリカはスーパーソルジャー。杵を頭上に振りかざし思いっきり振りかざそうとしているようだが、下手をすれば餅つきどころの騒ぎでなくなるのではと…。
「あ、そうだ。餅つきは薪割りとは違うんだ。杵を力いっぱい打ち付けな…」
そう忠告しようとしたブルースだが、遅かった。思いっきり杵を臼に向かってスティーブは振りかざした。そんなことをすれば、どういう結果になるかは分かりそうなものなのだが、如何せん、初体験ということもあり、誰もがその結末を予測できなかった…。
思いっきり振りかざされた杵は、餅どころか木製の臼をも打ち砕き、辺り一面に木片が飛び散った。そして肝心の餅はというと…。
「きゃー!!!」
「わーーー!!!!」
臼から飛び出した餅は宙を舞いながら分裂しボタボタと床に向かって落下し始めた。頭上から降り注ぐ餅から何とか逃げ出したアベンジャーズの面々だが、至る所に落ちた餅で部屋は悲惨なことになっているではないか。
「おい…どうするんだ…」
机の下から這い出したトニーは、ペッパーのお気に入りのオブジェに纏わりつく餅を引っ張るとため息をついた。
とっさに頭上をガードしたのだろう、餅だらけのシールドを恨めしそうに見ていたスティーブだが、逃げ遅れて頭から餅だらけになっているブルースと、ムジョルニアについている餅を食べているソーを見ると、溜息をついた。
「バナーは風呂へ直行してくれ。ソー、食べてばかりいないで、まずは掃除だ。バートンとロマノフ、掃除道具を持ってきてくれ。スターク、君はペッパーの様子を見て来た方がいい。この大惨事を知れば、余計に熱が上がるだろうからな。では、アベンジャーズ、アッセンブル!!」
新年一発目の掛け声がまさか掃除のためだとは思いもしなかったが、皆足早にそれぞれ持ち場へと散って行った。
***
新年のご挨拶に代えまして…って、しょうもないネタですみません(;’∀’)