事件から1ヵ月経ち、トニーは無事に退院した。が、病み上がりということもあり、ヴァージニアはトニーに家で大人しくしておくよう告げていた。ということで、トニーは自宅で機械弄りや車の整備を行ったり読書をして過ごしていた。
退院して3日目の夕方、前触れもなく突然ヴァージニアがやって来た。
「どうしたんだ?」
確か出張で彼女は明日まで不在だったはずなのに…と、例え仕事は休んでいてもヴァージニアのスケジュールを全て把握しているトニーは眉を吊り上げた。が、ヴァージニアはやたらニコニコ笑みを浮かべると、部屋の中にズカズカ入り込んでいった。
「3週間、休暇を取ったの」
「つまり?」
首を傾げたトニーにヴァージニアは抱きついた。
「私とあなたの分。あなたには、休息が必要よ?私がつきっきりで看病してあげるわ…」
急に3週間も休暇を取って、仕事はどうするんだと喚くトニーの荷物を手早く詰めたヴァージニアは、彼の手を引くとさっさと車に乗り込んた。そしてそのまま有無を言わせず飛行場へ向かうと、そこには当然のようにプライベートジェットが待機していた。
「まだ怒ってる?」
飛行機が飛び立つと、ヴァージニアは恐る恐るトニーに尋ねた。目をくるりと回したトニーは大袈裟にため息をついた。
「怒ってるだと?ジニー、君はこの先3週間の会合や商談全てを延期させたんだ。これがどういうことか分かってるのか?」
今日何度目か眉を吊り上げたトニーに、ヴァージニアは怒られると思い肩をびくつかせたが、ふっと笑みを浮かべたトニーは彼女を抱き寄せた。
「つまり…嬉しかった。君がそこまでして俺との時間を作ってくれたこと。ありがとう、ジニー」
トニーは怒っていなかった。寧ろとても喜んでくれている。
パッと顔を上げたヴァージニアは、満面の笑みでトニーに抱きついた。
「よかった!てっきり仕事をほっぽり出してって怒られるかと思ってたから…」
甘えたように胸元に顔を擦り寄せてくるヴァージニアにキスをしたトニーは、彼女を膝の上に座らせると耳元に口を近づけ何やら囁いた。頬を真っ赤に染めたヴァージニアは、恥ずかしそうに瞬きした。
「…今からお世話してもいい?」
「あぁ、頼む。着陸するまでまだ時間はたっぷりあるからな」
ヴァージニアを抱き上げたトニーは、キスをしながらプライベートエリアへと向かった。
***
数時間後、2人はカリブ海のアンギラへと降り立った。
プール付きのヴィラは、目の前にプライベートビーチもあり、木々に囲まれ周囲からは見えない造りになっていた。
「ここ、いいな」
プライバシーの守られたヴィラをトニーは満足そうに見渡すと、隣にやって来たヴァージニアにキスをした。
「まずは何か食べに行かない?それから…」
トニーのシャツをきゅっと握ったヴァージニアは、彼の肩に頭をのせた。
「さっきの続きだろ?」
どうして彼はいつも考えていることが分かるのだろうか…。上目遣いにじっとトニーを見つめたヴァージニアだが、彼の手は腰から太股を何度も往復している。ヴァージニアの視線に気づいたトニーは悪戯めいた目でウインクすると、彼女の腰を引き寄せカフェへと向かった。