リビングにある大きな箱。
ペッパーがその箱の存在に気づいたのは、今朝のこと。出社しようとしたペッパーは、人が入れそうな大きさの箱を目にすると飛び上がった。一体何が入っているのかと箱の周りをグルッと回ると、『トニー・スターク様』と名前が殴り書きされているのが見えた。
きっとろくな物ではないわね…と、ため息を付いたペッパーは、玄関へ向かった。
ところが、夕方になり帰宅してもその箱は朝と同じ場所にあった。
「トニー!この箱、どうにかして!」
大声で叫んだペッパーだが、いくら待てども返事はない。
「トニー!!どこにいるの?」
何度呼んでも現れない恋人に、その場で足を踏み鳴らしたペッパーだが、ふと箱に視線を送ると首を傾げた。今朝見た時にはトニー宛だった箱には、『ペッパーへ。開けてみろ!』とトニーの字でデカデカと書かれているではないか。
「私宛?」
恐る恐る近づいたペッパーは、箱を軽く叩いたが、特に変わった様子はない。開けてと言われているのだから、開けるしかないだろう。
何度も深呼吸をし心を落ち着けたペッパーは、思い切って箱の蓋を開けた……。
と、何かが箱から飛び出してきた。
「きゃぁぁぁー!!!!」
目を閉じたペッパーは、その正体を確かめることもなく、手を闇雲に振り回した。
「ペッパー!ハニー!おかえり!」
聞き覚えのある声に薄ら目を開けると、箱から顔を覗かせていたのはトニー・スターク。何故かうさぎの着ぐるみを着たトニーは、あんぐりと口を開けたままのペッパーに向かってニヤッと笑うと、箱からぴょんっと飛び出してきた。
「な、何?!」
一体何事なんだろう…。へなへなと床に座り込んだペッパーに、トニーはウサギ飛びして近づいてくると、隣にちょこんと腰を下ろした。
「何って君へのプレゼントだ!あの馬鹿でかいうさちゃんは気に入らなかっただろ?だから今度は私がうさちゃんになったんだ!」
要するに自分がプレゼントと受け止めていいのだろうか…。サプライズは嬉しいが、こういうサプライズは身がもたないから勘弁して欲しい…。
「全く…何考えてるのよ!!」
キーっ叫んだペッパーは、近くにあったクッションでトニーを叩き始めた。
「お、おい!ペッ…ペッパー!や、やめ…」
バンバン叩かれたトニーは、床にひっくり返った。投げつけられたクッションを受け止めたトニーだが、今度はペッパーが飛びかかってきたため、クッションを放り投げると彼女の身体を受け止めた。
「これもダメだったか?」
拗ねたように唇を尖らせたトニーは可愛らしく、クスッと笑ったペッパーはその唇を軽く摘んだ。
「そうね。あなたのサプライズは好きだけど、こういうのは心臓に悪いわ」
わざとらしく眉を吊り上げると、トニーは大真面目な顔をした。
「心臓発作でも起こされたら大変だ。次はもっと驚くようなサプライズにするよ」
クスクス笑い続けるペッパーにキスをしたトニーは、彼女の身体を抱きしめたまま起き上がった。
「ところで、君の分のうさちゃんもあるんだが…。ここでは渡せないから移動しよう」
つまりそういうことだろう。頬をポッと赤く染めたペッパーを抱き上げたトニーは、悪戯めいた瞳を向けるとウインクした。