Change!①

「ペッパー…」
「あぁ…ん…と、トニー…」
その夜もいつも通りだった。ただ、いつもと違うのは、ベッドではなく、なぜかキッチンのカウンターの上だということだろうか…。

パーティーの後、キッチンでワイン片手に軽くつまんでいたはずが酔いにまかせて何時の間にか始まっていた情事。
ペッパーをカウンターに押し倒し、いざ本番…。
いつもの癖で体を反転させたその時…

ドスン!!

落下音とともに、床に真っ逆さま。

「痛~い…」
先に気がついたのはペッパー。
頭を抑え周りをキョロキョロ見回すと…。
「な、何で私が横にいるの?!」
見ると横にいるのは倒れているペッパー・ポッツ。
「え?あら?何だか声がハスキーなんだけど…」
慌てて全身を見回すと、さっきまでトニーが着ていたスーツ姿。顔を抑えると口元にはヒゲ…。
恐る恐る後ろを振り返り、窓に映った自分を見ると…

「キャー!!!!!!!な、なんでー!!!!!!」

そこに映るは、どこからどう見てもトニー・スターク。

「うるさいなぁ…何事だ」
ペッパーの悲鳴で目を覚ましたのは、ペッパーの姿をしたトニー。
「と、トニー?」
「ペッパー?!な、何で私が目の前にいるんだ?!」
「それはこっちのセリフよ!!!」
「なんで私はスカートを履いているんだ!いや、これは君じゃないか?!どうなってるんだ?!」
「よ、よく分からないけど…入れ替わっちゃったみたいなの!」
「は?!入れ替わった~ぁ?!」

どうやら落下した時に、中身が入れ替わったらしい。
大股を開きどうやったら元に戻るか唸りながら考え込むトニー(見た目はペッパー)に、ペッパー(見た目はトニー)は恐る恐る尋ねた。
「ねぇ、トニー…このまま元に戻らないとか…ないわよね?」
「きっとあるはずだ。元に戻る方法が…。そうだ!同じことをやってみればいいかもしれないぞ!そうだ!早速やってみ…」
「ダメよ!もう朝!今日は朝から会議があるのよ!…どうするの?トニー!あなたじゃないと分からないことだらけ…」

オロオロと慌てふためくペッパー。

それもそのはず。今日は政府の高官の前でトニーが新製品の説明をする日なのだ。
見た目はトニーでも中身はペッパー。
一通りのことは分かっていても、細かいことはトニーしか分からない。

「いや、ペッパー…どうにかなる。一通りのことは分かってるだろ。私もサポートするから…」
「そ、そうね…どうにかしないと…」
「だが、その前に…そのもじもじするのはやめろ。気持ち悪い。私はそんなことしないぞ…」
「トニーこそ!私はそんな大股広げて座らないわよ!」

こうして幸先不安な1日が始まった…。

会社に出勤した2人。
今日は1日一緒にいた方がいいだろうということで…いや、実際いつも一緒にいるので、社内の者は誰一人つっこまないのだが…会議室でもトニー(中身はペッパー)の横に座るペッパー(中身はトニー)。

「お、お二人共…仲がよろしいですな…」
緊張のあまりペッパー(中身はトニー)の手をぎゅっと握りしめるトニー(中身はペッパー)。
「社長、皆さんが見ていらっしゃいます」
引きつった笑いを浮かべながらトニー(ペッパー)の手を振り払うペッパー(トニー)。
「キャー!ヤダ!…い、いや、すまない。ポッツくん」
慌てていつもトニーがするように眉間にシワを寄せて威厳を必死に出そうとするトニー(ペッパー)だが、その後もやたら乙女ちっくなことを連発。

一方のペッパー(トニー)は、トニー(ペッパー)が答えに詰まると、さりげなく…ではない、かなり堂々と助け舟を出し(中身がトニー・スタークなのだから当たり前なのだが…)、男前すぎる側面を出しまくり。

そんなこんなで、何とか商談も無事成功。

が、『トニー・スタークはこんなにカワイイ一面があるのか…。 こ、今度は是非プライベートでご一緒したいものだ!』と鼻息荒い政府の高官の心を無駄に掴んでしまったのはここだけの話。

これ以上ボロが出る前に…と、トニーの体調が悪いとウソをついて、何とか午前中に退社した二人。

「しかし、どうやったら元に戻るんだろうか…」.
帰宅し、あぐらをかいて座るペッパー(中身はトニー)に横にちょこんと座るトニー(中身はペッパー)。

…はっきり言ってややこしいので、ここからは『トニー=見た目がペッパー、ペッパー=見た目はトニー』と置き換えて読んで下さい。

「トニー…元に戻らなかったらどうしよう…」
トニーの袖を掴んでシクシク泣き出すペッパー。(ちなみにトニーがペッパーに寄りかかってシクシク泣いているので、傍目から見ると正直気持ち悪い)。
「そうだな…戻らなかったら困るな…、朝も言ったが、とりあえず同じことをしてみるか?」
「同じことって?」
「あの時、カウンターから落ちる時、お互いの頭がぶつかった…。おそらくその衝撃で入れ替わったのでは…。それと…」
「分かったわ!」
と言うやいなや、トニーの頭を掴み、自分の頭を思いっきりぶつけるペッパー。

「痛っ!!!」
「ぺ、ペッパー…い、痛い…。く…思いのほか私は石頭なんだな…」
真っ赤になってズキズキと痛むおでこを抑えながらトニーは唸った。
「ち、違う!そうではなくて…あの時しようとしてたことをだ。もう一度…と言いたかったんだ!」
「って…」
トニーは、顔を真っ赤にして俯くペッパーの頬に手をあてるとニヤリと笑い、ペッパーの唇を奪った。
「そうだ。そういうことだ…しかも入れ替わるなんて滅多にない機会だ…こうなったら、いろいろ楽しませてもらうよ…」

2へ…

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