Home~トニー視線

今回の敵は強敵だった。
いや、私たちのことを研究し尽くしているというべきか…。

マスクを剥ぎ取られた私は、アーマーを貫通する砲弾を何とかよけながら最後の一人を殴り倒した。

「スターク、大丈夫か?」
あちこち傷だらけのスティーブとソーが駆け寄ってきた。
「あぁ、何とかな…」
ズキズキと痛む身体に眉をしかめるとみんなが一斉に心配そうな顔をした。
「大丈夫だ。心配するな。それよりも逃げた奴らがいる。何か対策を練らなくては…」

そうだ。
再び来襲するに違いない。こんな無様な闘い方ではダメなんだ…。

***
アーマーを脱ぎ捨て、怪我の具合をチェックする。
『トニー様、酷いですね…』
「黙れジャーヴィス」
ジャーヴィスに言われなくとも、自分がいかに酷い状態かは分かっている。
左足は痛むし、肋骨も数本折れているのだろう…。
出血の止まらない撃たれた右肩にバンドエイドを貼ると、脱ぎ捨ててあったTシャツを着た。
「おい、ジャーヴィス。ペッパーには言うなよ」
彼女に知られるとまた泣かせてしまうからな…と思ったのもつかの間。
『トニー様。ペッパー様は下で3時間前からお待ちです。明日の会議の準備をされています』

しまった!例の会議は明日だった!これはペッパーに怒られるぞ…。

戦々恐々と階下へ降りて行った私を待ち構えていたのは、私の姿を見て泣きそうなペッパー。
病院に行けと言うが…時間も時間、今は深夜だ。
明日…いや正確には今日の朝だが…のプレゼンには間に合わない。

会議が終わったら絶対に行くと約束すると彼女は渋々納得してくれた。

***
睡眠薬と鎮痛剤を飲んだおかげで、目が覚めることはなかったが、最悪の目覚めだ。
身体中は少し動くだけでも悲鳴をあげるし、熱もあるのか全身気だるい。

隣で眠る彼女を起こさぬようそっと起き、何事もないかのような顔をして新聞を読んでみたが、相当酷い顔色をしていたらしい。

目の周りの痣や顔中の傷をいつものようにメイクでうまく隠してくれながらも、昨日のうちに病院へ行っておけば…とブツブツ言っていった。

***

「さすがMr.スターク!素晴らしいですな!」

ポーカーフェイスを装っているが、立つたびに痛みが走るし…朝よりも息苦しさが酷くなってきている。
何より顔をしかめるたびに、後ろで控えるペッパーが心配そうにしている。
ゴホッと小さく咳払いをすると、口の中に鉄の味が広がった。

そろそろ限界か…熱のためか痛みのためか…頭も朦朧としてきた…。

「…では、Mr.スターク。これでよろしくお願いしますよ。」

会議が終わるや否や駆け寄ってきたペッパーだが、運悪く呼び出しの連絡。
どうやら昨日の奴らが戻ってきたらしい。
泣きながら私を止めるペッパーに…我ながらズルいとは思うが…必ず戻ってくるからと、キスをして無理やり黙らせる。

アーマーを装着し、いざ向かおうとした時だ。
遠くから爆発音が聞こえ始めた。
始まった。早く行かなければみんな待っている…。

涙を流す彼女を抱きしめると「必ず帰ってきてね…」と優しいキスをしてくれた。

ペッパー…君がいるから私は命をかけて闘えるんだ…。
何があっても帰ってくるから、待っていてくれ…。

後ろ髪惹かれる気持ちを断ち切って、私は仲間の元へ向かった。

***
こんな状態で闘うこと自体ムリがあったのかもしれない…。
動くたびに激痛が走る身体で、ジャーヴィスの指示に従い何とか敵を倒していくが、仲間の方も自分の目の前の敵を倒すのに苦戦している。

突然、目の前がグルグル回り出し、一瞬隙ができてしまった。
『トニー様!』
ジャーヴィスの声で気付いた時には、すぐそばに敵が現れ、ガードする間もなく殴り倒されてしまった。
仰向けに倒れた私に馬乗りになり、マスクを剥ぎ取り、顔を何度も殴られる。
ただでさえ朦朧としていた意識がさらに遠のく…。

もはやこれまでか…と思ったその時、私の上にいた敵が吹っ飛ばされた。
「トニー!大丈夫か?!」
ソーだ。
起き上がることのできない私を座らせてくれたソーだが、
「トニー、お前は帰れ。ここは俺たちだけで大丈夫だ。…だからこれ以上怪我しないうちに帰れ!」
と叫んで、自分の持ち場に戻って行った。

「大丈夫だ…まだ闘える…」
実際闘える状態ではないことは自分が一番分かっている。
ここにいてもかえって足でまといになるのか…。

そう思っていた時…
「スティーブ!」
遠くでクリントが叫んだ。

見ると、目の前にスティーブが倒れている。そこへ向けられる複数の銃口。
気を失っているスティーブは気づいていない。あいつの装備ではあの攻撃は防ぎきれない…。
銃口が火を吹く直前、私はスティーブの元へ走った…。

***
「…ク…、スターク!」

遠くで声が聞こえる。スティーブか?無事だったのか…。
目を開けて返事をしようにも、開ける力もない…。

「分かるか?!」
誰かが手を握っている。かろうじて動いた指先が、その握った手に触れた。

「おい!しっかりしろ!スターク!」
大丈夫と伝えようと口を動かすも、うまく呼吸ができず、喉奥から出るのは大量の血。

必ず帰ると約束したんだ…何があっても帰ると…頼む…彼女の、ペッパーの元へ…。

そこで私の意識はプツリと途絶えた。

***
目を開けると、白い天井が見えた。
無数のコードに囲まれ、辺りは静まりかえり、規則正しいモニターと人工呼吸器の音が聞こえるのみ。

誰もいないのか…。
誰かがずっと手を握りしめ、呼びかけてくれていた気がしたんだが…。

心なしか温もりが残る右手が、自然と温もりの続きを求めて彷徨う。
しかし、誰一人いない空間の中では、空虚を掴むのみ。

誰か…。
いや、今一番会いたいのは…やはり…

「トニー?」

その時、右手にずっと探し求めていた温もりを感じた。
繋がれた手をそっと握り返すと、目の前に彼女の泣き顔が現れた。

ペッパーだ。
ずっと求めていた大切なヒト。
「大丈夫?」
涙がこぼれ落ちそうな彼女の瞳を見つめ、チューブが挿管されているため喋れない私は、目を軽く閉じ大丈夫だと頷いた。
「よかった…もう…逢えないかと思った…」
私の手を握りしめ、崩れるようにベッドサイドの椅子に座った彼女の手を指先でそっと撫でる。
「心配したのよ…5日も目を覚まさなかったから…。このまま逢えなくなるなんて…私には耐えられない…ずっとあなたを失ったら…と考えてたの…」
流れる涙もそのままに俯き話すペッパー。
「でもね…あなたは命をかけて頑張ってる。いつだってあなたは正しいと思ったことをやるでしょ?…たとえ私が反対してもね?だから…何かあっても…きっと最後は私の所に戻って来てくれるって信じてた。」

次々とこぼれる涙を袖で拭き取ると、私の頬を撫でながら…私の大好きな笑顔で微笑んだ。
「おかえりなさい、トニー。戻ってきてくれてありがとう」

ただいま、ペッパー。
待っていてくれてありがとう…。

Falling Down(R-18)

トニペパ。何があってもペッパーの元へ戻って来るトニー

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