ペッパー誕生日(2015年)①

9月27日はペッパーの中の人の誕生日ということで…。

***
もうすぐ10月になろうというある日。いつになくめかしこんだペッパーに、トニーは今日は何か予定があっただろうかと首を傾げた。
「めかしこんでどうしたんだ?」
大あくびをしながら尋ねるトニーにペッパーが小さくため息を付いたのは気のせいではないだろう。
「今日はこれから誕生日パーティーなんです」
昨日言ったはずですよと眉を吊り上げたペッパーだが、トニーはキョトンとしている。
「誰のだ?」
やっぱり覚えてないわねと首を振ったペッパーだが、自分の社会保障番号すら覚えていない男なのだ。自分の誕生日は覚えているだろうが、秘書の誕生日など覚えているはずがない。
コホンと咳払いをしたペッパーは自分で自分を指差した。
「私です、社長」
口をポカンと開けてペッパーを見つめていたトニーだが、しばらくして我に返った彼は、椅子をひっくり返さんばかりの勢いで立ち上がった。
「た、誕生日なのか?!聞いてないぞ!」
聞いていないと喚く上司を宥めたペッパーは、彼の秘書となり早5年なのだが、毎年繰り返されるお馴染みの光景に少々白けた視線を送った。
「そのセリフ、去年も聞きました。去年だけではありません。今年でもう5回目です。」
「え…」
ピタリと動きを止めたトニーに呆れ顔のペッパーは
「いいんです。社長はお忙しいですから、秘書の誕生日まで覚えていらっしゃらないですよね。では、お先に失礼します」
と言うと、呆然と佇むトニーを残し、社長室を後にした。

その場に座り込んだトニーは机に顔を伏せると、額を何度か打ち付けた。
(何てことだ…!ペッパーの誕生日を忘れるなんて…トニー・スタークのバカ!)
後悔してみたが、はっきり言ってもう遅い。彼女は誕生日パーティーに出掛けてしまったのだから…。彼女のパーティに乗り込んでもいいのだが、そのパーティーがどこで開催されるのかすら知らないのだ。

「来年こそは忘れないぞ!」
と固く決心したトニーなのだが…。結局、翌年もその翌年も誕生日を忘れてしまい、毎年のように繰り広げられる光景が終わりを告げたのは、彼らが出会って10年余りの歳月が経った頃だった。

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