IM3後
「ねぇ、トニー…。私はいつになったら元に戻れるの?」
あちこち傷だらけでベッドに横たわるトニー。身体中アザと火傷だらけのトニーは、起き上がろうとしたが悲鳴をあげた。
「トニー、ダメよ!起き上がったら…」
トニーがこんな状態になったのは、自分のせいなのだが、トニーはそのことでペッパーを決して責めることはなかった。コントロールできるようになったとは言 え、極度に興奮するとやはり抑えることのできないペッパーは、それでも毎晩自分の相手をしてくれるトニーに対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「あとは最終チェックをするだけだ。二、三日のうちには完成するさ。ブルースに任せているから大丈夫だ、ハニー」
ニヤリと笑ったトニーは、ペッパーに笑顔が戻ったのを見ると言葉を続けた。
「ホットな君が見られなくなるのは少し残念だ…。君の燃えるような身体を触ると、こっちも興奮するんだがなぁ…。だが…」
(要は元に戻るなってこと?自分が怪我してもいいってことなの?!)
毎日のように彼を傷つけ、家も破壊しつつあることを一番気にしているのは、他ならぬペッパー自身。それなのに、トニーは気にする風でもなく、挙げ句の果て に今のままでいいというようなことを言い出した。トニーの言動に頭に血が上ったペッパー。その目には炎が燃え上がり、熱くなり始めた身体が着ているシャツ を焦がし始めた。
「お、おい…ペッパー…」
変貌していくペッパーに気づいたトニーは慌てて、ベッドから起き上がろうとした。だが、ペッパーの方が早かった。トニーよりも数段強いのだから当たり前なのだが…。
「どういうことよ!私にずっとこのままでいろってことなの!」
飛び上がったペッパーは、トニーの上にのしかかった。
「ち、違う!そういう意味ではない!」
首元を締められたトニーは、足をばたつかせ、ペッパーの手首を掴んだ。だが、皮膚の焦げる臭いとともに、あまりの熱さに耐えきれなくなり、手を離した。
「じゃあ、どういう意味なのよ!」
トニーの首元を掴んだペッパーは、そのまま身体を持ち上げると、壁に向かってトニーを投げつけた。
トニーは壁際の本棚に嫌というほど身体をぶつけ、床に倒れた。
ただでさえボロボロの身体に衝撃が走り、トニーは床にうずくまったまま呻いた。その上に非情にも本が次々と積み重なっていく。
思わず修理したばかりのアーマー(マーク42)を呼びそうになったトニーだが、そんなことをしても今のペッパーに敵うはずもない…。
ふと前を見ると、ベッドの上に座り込んだペッパーが見えた。その瞳は平常心を取り戻しており、いつものペッパーだった。
トニーが助けを求めようとしたその時、本棚に残っていた厚さ30cmもある分厚い本が頭に落ち、トニーは気を失った。
我に返ったペッパーは、トニーが部屋の反対側で倒れているのに気づいた。
「大変…私ったら、何てことを…」
慌ててトニーの元に駆け寄ると、彼は頭から血を流して気を失っているではないか。
「トニー!トニーったら…しっかりして!」
彼の上に積み重なった分厚い本を退かしたペッパーは、トニーを抱き上げるとベッドへ運んだ。
「ジャーヴィス、トニーは大丈夫?」
泣き出しそうなペッパーに、ベッドに横たわるトニーを素早くスキャンしたジャーヴィスは安心させるように告げた。
「ペッパー様、トニー様は軽い脳震盪を起こしておいでです。加えて、右足首の軽い捻挫が見られます。全身の打ち身と火傷、肋骨にも数本ヒビが入っていますが、こちらは先ほどできたものと言うより、この数週間のお二人の夜の営みで…」
「わ、分かったわ。要するに大丈夫ということね…」
「そうでございます。もうすぐ気がつかれると思います」
バスルームからタオルを持ってきたペッパーは、額に流れている血を拭き取ると、濡らしたタオルを頭にのせた。
柔らかな髪を掻き上げ額にキスをしていると、小さく唸り声を上げてトニーが目を覚ました。
ボーッとした表情のトニーの頬を優しく撫でたペッパー。その目に溜まった涙が顔に降り注ぎ、トニーはまぶしそうに目を細めた。
「トニー、ごめんなさい。またあなたを傷つけてしまったわ…」
ポロポロと零れ落ちる涙を拭うことなく、ペッパーはトニーの胸元に顔を埋めた。
「いいんだ、ハニー。君のせいじゃない。故意にしたのではないんだ。だから大丈夫だ」
小さく震えるその背中は、凄まじいパワーを身につけたと雖も、自分よりもずっと華奢で、トニーは両腕にその身体を閉じ込めた。
「ペッパー、私は君に元に戻るなとは言っていない。最も君が今のままを選択するなら別だが…。さすがにこのままだと私の身が持たないからな」
くくっと小さく笑ったトニーは、ペッパーの頭にキスをした。
「私が言いたかったのは、君の声も熱も全てが私を狂わせるということだ。君は昔から強くてホットな完璧な女性だ。私にはもったいないくらいにな。だが、気づいてるかどうか知らないが、君は例のパワーを手に入れてから、以前よりもいろいろ曝け出してくれてるだろ?」
「曝け出してるって?」
顔をあげたペッパーに、トニーはウインクした。
「全てさ。私に抱かれる時も、今までよりずっと感じてるだろ?締まりもい…」
「トニー!!恥ずかしいから言わないで!」
真っ赤な顔になったペッパーは、トニーの胸をポカポカ叩いた。
その力強い衝撃にトニーは思わず顔をしかめた。
「お、おい…痛いから、やめろ!」
ペッパーの手を掴んだトニーは、そのまま身体を反転させた。まだ真っ赤な顔をしているペッパーの唇を甘いキスをおとしたトニー。
「つまりだな。君は私にまだ隠してたってことだ。だから、元に戻っても変わらないで欲しい。私にもっと自分を見せて欲しい。もっとホットな君を見せて欲しいってことさ」
首筋にキスを始めたトニーの頭を抱きしめたペッパーは、無言で頷いた。
「よし、ペッパー。まだ見せたことのない君を見せてくれないか?ただし私もあちこちボロボロなんだ。だから、加減してくれよ?」
「努力するわ」
クスっと笑ったペッパーは、トニーを力強く抱きしめると、唇を奪った。
IM3後のトニペパ。エクストリミスペッパーに振り回されるトニー第二弾。