本格的にトニーのリハビリが始まったと聞き、ブルースはスティーブを連れて病院へと向かった。正確には、何かにつけて見舞いに行こうとしないスティーブをブルースが無理矢理引っ張って行ったというのが正しいだろうが…。
病室に向かうと、トニーは一人だった。
「見てくれ!動くようになったんだ!」
右手をわずかに持ち上げたトニーは、前回見舞いに訪れた時よりもハツラツとしていた。嬉しそうに笑みを返したブルースだが、それとは対照的にスティーブは引きつった笑顔を向けた。
(じいさんの方がリハビリが必要だな…)
ため息をついたトニーは、チラリとブルースに視線を向けた。二人きりにさせてくれという無言の訴えを感じ取ったブルースは飲み物を買いに行くと、席を外した。
ブルースが出ていき、気まずそうにしているスティーブに、トニーは声を掛けた。
「じいさんの声が聞こえた」
「え…」
顔を上げたスティーブは明らかに困惑していた。
会話が唐突すぎたかと思ったトニーだが、そもそもどこから話していいのか分からないのだから、自分の想いを素直に伝えることにした。
「あの時、ずっと部屋の隅で自分が死にゆく姿を眺めていた。部屋の向こうでは君たちが泣きわめいているし、何よりペッパーが泣き叫んでいるのが辛かった。一刻も早く戻りたかったが、どうやって身体に戻ればいいか分からなかった。さすがに今度ばかりはお陀仏だと思った。諦めかけた時、聞こえたんだ。『君がいなくなったら、誰が彼女を守るんだ!』と。その言葉で諦めてはいけないと思い、ペッパーに会いたいと強く願った。すると身体に戻っていたんだ」
すぅっと息を吸ったトニーは、目を潤ませているスティーブを真っ直ぐに見つめた。
「キャプテン、礼を言わせてくれ。あんたのあの言葉で私は生き返ることができたんだ。ありがとう」
何度か瞬きをしたスティーブは、鼻を啜ると微かに笑みを浮かべた。
「スタークに感謝されるとは思ってもみなかった」
「なら、ありがたく思ってくれ。滅多にないことだから」
耳たぶまで真っ赤にしたトニーはぷいっと横を向いた。