①初めての朝
初めて共に迎える朝。腕の中に閉じ込めている無邪気な顔をした女性は未だ夢の中。しばらく寝顔を見つめていたトニーだったが、柔らかな唇に吸い寄せられるようにキスをした。その感触は昨晩の夢のようなひと時を彷彿させ、続きを求めるように、口づけは次第に深くなっていった。
そのまま組み敷いた胸元に紅い花を散らしていると、吐息混じりの甘い声が聞こえた。
「…何回目?」
顔をあげたトニーは、首筋にキスをするとニッと笑った。
「キスのことか?今ので99回目だ」
数えてたの?と目を白黒させるペッパーの頬を撫でたトニーは、何か言おうとしている彼女を黙らせるかのように唇を奪った。
「ペッパー…愛してる」
一晩中囁いたのに何度聞いても飽きることのない愛の言葉は、100回目のキスと共に贈られた。
②とあるパーティーでの一幕
「ねぇ〜、キスして?」
滅多にない彼女のおねだりに、トニーはビクッと身体を震わせた。胸の高まりを鎮めようと、何度か咳払いしたトニーは軽く触れる程度のキスを一つ。だが、ワインを飲み過ぎ酔っ払っているペッパーはお気に召さなかったらしい。頬を膨らませたペッパーはトニーの膝の上に座ると、身体を擦り寄せた。
「も〜、トニーったら!そんなキスじゃイヤ!もっと、も〜っっとね、激しいキス!いっつもしてくれるでしょ?私の腰がねー、砕けちゃうくらいー、あっつーいキス!」
右手に持ったボトルを軽く振ったペッパーは、ケタケタと笑うと、トニーの頬をぺろりと舐めた。
ひぃ!と叫び声を上げたトニーだが、周囲の人々が固唾を飲んで自分たちの動向に注視しているのに気づくと、彼女を諭すように話し始めた。
「ペッパー…人前だぞ?それに、君は飲み過ぎだ。誰に聞いても、今夜の君は飲み過ぎだと答えるだろう。つまりだな、もう帰ろう。家に帰って君の要望通りのキスをしよう。な?それでいいだろ?」
まるで子供を諭すように語りかけるトニーだが、瞳を潤ませたペッパーは、唇を尖らせた。
「イヤなの!今して欲しいの!今すぐキスして、私のこと、抱いて?お願い!」
お願いされても、無理なものは無理だ。いや、2人きりの場所ならば、お願いされなくてもその場に押し倒したいところだが…。いくらトニー・スタークでも、人前で恋人とどうこうする程、分別がない訳ではない。
思わずため息をついたトニーは、宥めるようにペッパーの腕をさすった。
「ハニー、ここでは無理だ」
拒否されたペッパーの目から、大粒の涙が溢れ落ちた。
「私のこと、キライなの?!」
どうしてそういう話になるんだと頭を抱えたトニーは、
「嫌いな訳ないだろ?君のことは世界一愛している」
と、2人きりの時にしか出さないような声で、愛の言葉を囁いたのだが、酔っ払っているペッパーには通用しなかった。
「だったらキスしてよ!」
これ以上酔っ払い相手に話し合っても無駄だ。まだキスしろと喚いているペッパーを抱きかかえたトニーは、足早に会場をあとにした。
そして残された人々はその夜以来、固く誓った。ペッパー・ポッツを二度と飲ませすぎてはならないと…。
~トニペパでキスの日~