Stay with me

IM3直前の話

NYからマリブへ戻るのを機に、二人は正式に一緒に暮らすことになった。とは言っても、思いが通じ合ってからペッパーは、トニーが仕事で留守にしている時 を除けば生活の基盤はマリブだったし、加えて衣類や生活用品の大半は持ってきていたのだから、実はロングビーチの自宅の方が仮住まいの状態だったのだ。
それでも二人で暮らし始めるにあたり、トニーはペッパーに
「せっかくだから模様替えするか。君が好きなようにしろよ」
と告げたのだった。
だが、恋人になる前からトニーの家には出入りしていたペッパー。リビングのソファーもキッチンも愛着があり、結局絵を飾ったり観葉植物を置いたりする程度 で、大幅に模様替えはする必要はなかった。ただ、一つ大きく変わった物と言えば…。今までカリフォルニアキングサイズだった二人のベッドが、少し幅広のキ ングサイズになったくらいだろうか…。

***

引っ越し当日。
リビングでペッパーが業者に指示を出していると、ローディがやって来た。
「ペッパー。どうしたんだ?大掃除か?」
バタバタと慌ただしい室内をローディは見渡した。
「いらっしゃい。あのね、ここに引っ越したの」
ペッパーの言葉にローディの顔に笑みが浮かんだ。
「と言うことは…ついに一緒に住むのか?!おめでとう、ペッパー!」
「ありがとう」
ペッパーを抱きしめたローディは、背中を軽く叩くと身体を離した。
「今までも一緒に住んでいたようなもんだろ?まあ、でも正式に…ということか。ところで、トニーはいるか?」
「えぇ、ラボにいるわ。こっちに戻って来てからずっとこもっているの…」
顔を曇らせたペッパーは、心配そうにラボへと通じる階段を見つめた。

しばらくして業者が引っ越しの終了を告げた。ローディはまだラボから戻って来ない。寝室へ向かったペッパーは、山積みになった荷物にため息をついた。
「よし!片付けなきゃ!」
化粧品類は寝室に備え付けのバスルームへ、衣類や靴(と言っても、自宅の方にはほとんど残っていなかったが…)は自分の元の部屋ほどもある大きさのクローゼットへ…。本や書類などは寝室の隣にある書斎へ運び、片付け終わった頃には、日も暮れ辺りは薄暗くなっていた。

(今日はデリバリーでいいわよね?)

ラボを覗くと、トニーは一心不乱に作業中。背後に立っても気づかないトニーにペッパーは頬を膨らませた。
(もう…。私よりアーマーの方が大事なのかしら…。何だか嫉妬しちゃうわ…)
口を尖らせたペッパーを見るに見兼ねたジャーヴィスがトニーに声を掛けた。
「トニー様、ペッパー様が…」
ジャーヴィスの声に我に返ったトニー。その拍子に目の前にあったアーマーの部品が音を立てて崩れ落ちた。
「と、トニー?大丈夫?」
「あ、あぁ…大丈夫だ。気がつかなくてすまない」
頭を掻きながら部品を拾い始めたトニー。先ほどまで浮かんでいた何かに取り付かれたような表情は消え、目の前で笑っているのはいつものトニーだった。
「どうしたんだ?」
部品を台の上に置き、手を洗ったトニーはペッパーの腰を引き寄せるとキスをした。
「そろそろ晩御飯にしない?何か頼もうかと思って…」
「近くに新しく中華の店が出来ただろ?その店のにするか?」
「そうね。じゃあ、注文するわ。その間にあなたはシャワーを浴びてきて。顔に油が付いているわよ」
「分かった」
ペッパーの頬にキスをすると、トニーは寝室へとあがっていった。
店に電話を掛けたペッパーは、ラボを見渡した。あちこちに散らばる部品。次々と完成するアーマー。トニーは何をしているのか話してくれない。ただ、ひたすらにアーマーを作り続けるトニー。まるで何かに追われるように…。

どうして話してくれないのかと思ったこともある。でも、きっと私を危険に晒したくないのよね…。彼は私が傷つくこと…そしていなくなることをとても恐れているもの…。

ため息を付いたペッパーの耳に、玄関のベルが鳴り響く音が聞こえた。

***

シャワーを浴びたペッパーは、バスローブを羽織るとベッドに寝そべるトニーに笑いかけた。
「今日からあなたと私の家なのね…」
感慨深けに辺りを見回すペッパーに、トニーはニヤリと笑った。
「そうだな。後は君がポッツからスタークになれば完璧だな」
「そうね…って!え⁈」
「そういうことだろ?何だ?その件に関しては了承済だろ?忘れたのか?」
「わ、忘れてないわよ!ただ、改めて言われると何だか照れちゃって…」
バスローブの裾を握りしめ真っ赤になったペッパー。ベッドの上に起き上がったトニーはペッパーの手を引っ張り引き寄せた。
「もう待てない。今すぐにでも君が欲しい。いや、そういう意味ではなくて…。君を正式に私だけのものにしてしまいたい。ダメだ、ペッパー、我慢できない。よし、明日結婚しよう!」
「あ、明日?!トニー、さすがにそれは…。私も早くあなたの奥さんになりたいけど…」
飛び上がったペッパーをトニーはベッドに引っ張り上げた。
「仕方ない…待つか。君が準備しているウェディングドレスを見なければいけないから…。だが、この新しいベッドの使い心地は今すぐ試してもいいだろ?」
「あら?私も同じことを考えていたの」
ペッパーの顔を優しく両手で包み込んだトニーは、甘く深い口づけをした。

***

「トニー、ちゃんと眠ってね」
身体が離れた後、ウトウトし始めたペッパーが、トニーの胸元にキスをしながらポツリと言った。
あのNYでの出来事の後、悪夢が毎晩のようにトニーを襲い続けた。夜中に何度も目を覚ますトニーは、次第に眠らなくなっていた。
環境が変れば…と戻ってきたものの…。数日は眠れていたようだが、ここ最近何度も寝返りを打つトニーがペッパーは心配だった。
トニーは何も言わずペッパーを抱きしめた。
ペッパーはトニーに脚を絡めると、背中に手を回し身体を寄せた。ペッパーの吸い付くような素肌に指を滑らせていたトニーだったが、ペッパーが眠ったのを確認すると、起こさないようにそっとベッドから起き上がった。
しばらく頭を抱えていたトニーだったが、部屋に散らばった服を着ると、ラボへと降りて行った…。

IM3プレリュードのより。(アベンジャーズ~IM3の間にペッパーはトニーのマリブ邸に引っ越して同棲し始めました。)

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