トニーとダミー
ガシャーン!!
床の上に散らばる工具。
持って来いと言ったが、散らかせと言った覚えはないぞ?
額に手をやり、ため息を付く私の顔色を伺うように、あいつは小さく音を立てた。
「おい!ダミー!ワイン棚にするぞ!」
咄嗟に出てきた悪態に、ダミーはしょんぼりと首を垂れて部屋の隅に行ってしまった。
怒鳴るつもりはなかった。だがなぜか分からないが…昔から気心の知れた仲(実はペッパーよりも付き合いは長い)だからか、あいつにはきつい言葉を浴びせてしまう。
本当に不器用な奴だが、あいつには命を救われたこともある。あいつは、その昔、私が認められた証であるが、同時にずっとそばにいてくれたかけがいのない存在。だから、誰が何と言おうと、いくら失敗しようとも、あいつを手放す気持ちはないんだ…。
散らばった工具を片付け、物思いにふけっていると誰かが肩を叩いた。
振り返るとコーヒーカップを持ったダミーがいた。
かぐわしい香りに私はこの琥珀色の飲み物を欲していたことに気づいた。
「気がきくな。さすが私の作ったダミーだ」
先ほど怒鳴ったお詫びではないが、アームを優しく触ると、ダミーは嬉しそうに声を上げた。
不器用だけど手放せない相棒ダミー