95. Speed

「あっという間の1年だったな」
つい数時間前に撮影したばかりの写真を見ていたトニーは、いつになくしんみりしている。
ケーキを掴み生クリームだらけの娘、そしてその娘を抱き上げ顔中クリームだらけの自分。
今日は娘の1歳の誕生日。
こんな日々が自分に訪れるとは思ってもみなかった。
妻と娘に囲まれ、幸せな日々を過ごせるとは、十年前の自分に聞けばあり得ないことだと笑われるかもしれない。
だが、自分にも訪れた。いつか大切な人と築きたいと思い描いていた日々が。

娘が産まれ、初めて聞いた泣き声、そして恐る恐る抱き上げた腕の重みも、つい昨日のように鮮明に覚えている。
だが、いつか離れて行ってしまうのだろう。それが子供なのだから…。そしてその日まで愛情を注ぎ守るのが親なのだから…。

お気に入りのアイアンマンのぬいぐるみを抱きしめ眠る娘の頬にトニーはそっと触れた。
「そんなに急いで大きくならなくてもいいんだぞ?だが、お前はパパとママの子供だ。パパとママはいつだってお前を愛し、そして守るためにいる。それだけはいくつになっても変わらない。だからお前はお前の人生を歩んでくれよ」

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