He talks openly.

調子にのると喋りすぎる社長と、振り回されるペッパー。

「スタークさんお願いします」
「あぁ、何でも聞いてくれ」

今日は某女性誌のインタビュー。
何でも読者アンケートの『抱かれたい男~企業編~』の1位をトニーが15年連続受賞したとのことで、読者から寄せられた100の質問に答える記念企画らしい。

セクシーな服を着てトニーに迫らんとばかりの勢いの女性記者を目の前にして、ペッパーを連れて来ればよかった…とトニーは小さく息を吐いた。

「では、早速ですが…質問1です。えっと『好きな食べ物は何ですか?』です…。何この幼稚な質問…」
トニーは、ブツブツと言う女性記者に向かって
「好きな食べ物だな?チーズバーガーだ。私はチーズバーガーに目がなくってね…。」
と、苦笑いしながら答えた。

その後も次々と出てくる質問に答えるトニー。
ちなみに…好きな色は?言葉は?車は?など一般的な質問から、アイアンマンのスペックについてのややマニアックな質問まで幅広く、気づけば質問は80個まで終わっていた。

「お疲れ様です。残り20問です。一度休憩なさいますか?」
大きく伸びをするトニーを見た記者が…これまた色目を使って聞くと、
「そうだな…少し休憩させてもらおうか…」
トニーは携帯片手にラウンジへと向かった。

実は、あからさまに迫ってくる記者に嫌気がさしていたトニー。
愛しのペッパーの声を聞けばリフレッシュできるだろう…と、電話を掛けようとしたその時…
「スタークさん…よろしいでしょうか?」
先程まで目の前にいたあの女性記者が背後に立っていた。
「何だ?」
ペッパーに電話しようとしていたところを邪魔され、かなりムっとしたトニーは、声を掛けたのがあの色目を使ってきた記者だと分かり、眉間に皺を寄せた。

「スタークさん!抱いて下さい!!!」
そう言うと突進してきた女性をトニーは身を翻してかわすと
「悪いが間に合っている!」
と逃げ出した。

だが、逃げた方向は、運悪く行き止まり。隅に追い込まれたトニーを女性記者の魔の手が襲おうとしたその時、タイミングよくトニーの携帯が鳴りだした。
「悪いが電話だ」
さすがに電話を邪魔しようとまでは思わなかったのだろう。
急に大人しくなった女性記者は窓から外の風景を眺めだした。
トニーが携帯の画面を見ると、愛しい女性の笑顔が…。
何というタイミング…煩いあの女性を追い払うにはちょうどいい…。ニンマリしたトニーは楽しそうに電話に出た。
「やぁ、ハニー。君の声を聞きたかったよ…」
どこから声を出しているんだと思うような甘い声を出したトニーを先程の女性記者は目をギョッとさせて振り返った。
「トニー…どうしたの?大丈夫?」
聞いたこともないような声で電話に出たトニーに、ペッパーも少々戸惑い気味…。
「どうしたもこうしたも…愛しい君の声が聞きたくて…電話しようと思ってたんだ。ペッパー…君は何してるんだ?」
「何って…大したことじゃないんだけど…今日の晩ご飯どうしようかと思って…。ねぇ、ホント大丈夫?!何かあったの?」
どこか様子がおかしいトニーにペッパーは本気で心配しているようだ。
「大丈夫だよ、私は正常だ。ただ、君のことがちょっとばかり不足しているのかもな…。ペッパー…今、君のことが抱きたくてたまらない…いや、キスだけでも いいくらいだ。今夜は早く帰れそうだ。どうだ?迎えに行くから、たまには外で食事でも…。君の手料理も世界で一番美味いんだが…。食事をしたらそのまま君 が一度泊まってみたいと言っていたホテルへ行こう。君のこと、足腰が立たなくなるくらい一晩かけて愛してあげるから…。どうだ、ペッパー?」
まくしたてるように言うトニーに対し、ペッパーは電話口で絶句している。
顔を真っ赤にして口をパクパクしているであろうペッパーを想像したトニーは、ククっと笑うと
「じゃあ、終わり次第迎えに行くからな…あ、明日は休暇取れよ。愛しすぎて明日は出勤できるか分からないからな…。じゃあ、また後で…。愛してるよ、ハニー」
電話を切ったトニーが振り返ると、脱兎のごとく走り去る女性記者の姿が…。これで変な気を起こすことはないだろう…と、ペッパーの声を聞き上機嫌になったトニーは意気揚々と部屋へと戻って行った。

「で、では…続きを…」
先ほどとは打って変わって真っ赤な顔をしてうつむき加減の女性記者。これ以上惚気させると暴走しかねない…危険を感じた記者は、早急にインタビューを終わらせようとした。…が、残りの質問を見ると顔を青くして
「き、今日のインタビューは!これで終了です!あ、ありがとうございました!!!」
と強制終了させようとするではないか。
「おい、待て。まだ20問残っているんだろ?」
様子のおかしい記者を不審に思ったトニーは、彼女の手元の質問事項が書かれているメモを奪いとった。

「何々…質問80、『彼女いますか?』だと?いるぞ。愛してやまない女性が1人だけな…。質問81、『好きな女性のタイプは?』か。ペッパーだ。質問 82、『女性の好きな仕草は?』。好きな仕草か…上目遣いで私の方を見上げるときかな…特にアレをしてくれる時のペッパーは最高だ。質問83、『彼女の好きな所は?』だな。ペッパーの好きな所か…そうだな…あのまっすぐな瞳かな…。いつもそばにいてくれるんだよ…。質問84、『どうやってリフレッシュするんですか?』か。アーマーの整備をしたり…そうだな、あとは彼女と過ごすことが何よりのリフレッシュだ。彼女を抱きしめて…あの柔らかな身体と甘い口づけがあれば…。次、質問85、『どこにキスをするのが好きですか?』だと?…よく朝になると首筋に痕が残っていると怒られるんだが…。次、質問86、『セックスは週に何回くらいしますか?』だと?!…赤裸々な質問だな…最近の女性はこんなことが聞きたいのか?…聞かれたから答えるべきなのか…。毎日だな…。 いや、彼女がいる時はだ。もちろん無理な時もあるが…大丈夫な時は毎日だぞ。…ゴホン!つ、次だな…質問87、『一晩で何回くらいしますか?』…普通って どれくらいなんだ?3回4回は平気だが…大体ペッパーの方が気絶するからな…その時によるか…。それにしても、際どい質問が増えてきたな…質問88、『スタークさんは巧そうですが、実際はどうなんですか?』…これも…答えろと?…巧いのか?自分では分からん。ただ、ペッパーはいつも涙を流して喜んでるぞ。 次、質問89、『好きな体位は?』?!…いや…その…何と言うか…。後ろから攻めるとペッパーは…」

「も、もう結構です…」
もっと聞いていたい…と思いつつも、これ以上続ければ危険と判断した記者が慌ててトニーからメモを奪還。
途中で中断されたトニーは不機嫌そうに唸ったが、周りを見渡すと、みんな真っ赤な顔で俯いているため、少々やり過ぎたか…と思い、それ以上は何も言わず、
「では、以上で終了だな。私は帰らせてもらうよ。彼女とデートがあるんでな…」
とスキップしながら部屋を出て行った…。
残された記者たちは、この企画、なかったことにした方がいいのでは…と思ったとか思わなかったとか…。

後日…。
「ちょっと!トニー!何よ、これ!!」
ペッパーが真っ赤な顔をして社長室に飛び込んできた。
「どうしたんだ?」
書類から目を上げ、不思議そうな顔をしているトニーに、ペッパーは手に持っていた…正確には握りしめてぐちゃぐちゃになった1冊の雑誌を投げつけた。
「これよ!これ!見に覚えがないとは言わせないからね!」
投げつけられた雑誌を手に取ると…表紙にはポーズを決めた自分の写真。
見ると先日のあのくだんのインタビューが掲載された雑誌ではないか。

思わず彼女の顔を見上げると、
「…中を読んで!」
と、目に涙をためて顔をさらに真っ赤にしたペッパーの姿が…。

ヤバイ…これはかなり怒っているぞ…。

トニーが恐る恐る雑誌を捲ると…
『トニー・スターク、私生活を赤裸々に語る!彼女との性生活まで語ります!』
というド派手なタイトルとともに、先日のインタビューの際どい内容のところだけが上手く抜粋してあった。

「ちょっと待て!何だこれは…『ペッパーの身体は最高。毎日彼女が気絶して足腰が立たなくなるまで一晩中愛し合っています。彼女は特に後ろから攻め立てられるのが好きなんだ…』。おい!私はここまではっきりとは言ってないぞ!」
「でも言ったんでしょ?!言ったから書かれているんでしょ!!私…こんなんじゃ外も歩けないじゃないの!」
手でトニーをバシバシと叩きながら泣き始めたペッパー。そりゃそうだろう…誰もが読める雑誌にまさか性生活を暴かれるなんて…。
「ぺ、ペッパー…すまない…謝って済む問題じゃないと思うが…その…」
喋りすぎたことを今さら後悔しても遅いが…彼女をなだめようと必死なトニーの手を振りほどくと
「もう!トニーなんて嫌い!今日から一生エッチ禁止だから!!!」
大声で叫び、部屋から出て行ったペッパー。

「い、一生禁止だと…」
一生禁止だなんて…私に死ねと言うことか…。
顔を真っ青にしたトニーは彼女に土下座して謝ろうと
「ぺ、ペッパー!待て!一生禁止は絶対無理だ!何でも言うこと聞くから…せめて1週間にしてくれ!」
と叫びながら慌ててペッパーの後を追いかけて行った…。

Reconciliation

「一生禁止」と言われ慌てふためいたトニー。彼にとっては死活問題。
彼女の機嫌を直そうと、試行錯誤するも…ペッパーは電話にすら出ないため、完全に行き詰まってしまった。
こんな時、どうすれば…。
頭を抱えたトニーは、誰かに相談しようと思いついた。だが、問題は誰に相談するか…。

スティーブは…男女の関係はウブなキャプテンは論外。ソーも…無理だろう。あいつにこんな話は無理だ…。バナー?話は聞いてくれそうだが…君が悪い!とハ ルクスマッシュを喰らいそうだ…。バートンに話すとロマノフに筒抜けだからな…そうするとニックにも知れ渡り、からかわれるのは目に見えている。何よりあいつに弱みは握られたくない!
…おい!誰に相談にすればいいんだ…。

そんな時、ふと頭をよぎったのはあの顔。そうだ!あいつに相談してみよう!あいつはちゃんと恋人がいるから、喧嘩もしたことがあるだろう!何か名案があるかもしれない…。
思い立ったら即行動!トニーはいそいそと電話をかけ始めた…。
「スタークだ。内密に相談したいことがある。至急来てくれないか?」

+++++

「どうした?スターク。君が私を呼び出すなんて珍しい…」
スタークタワーへやって来たのは、フィル・コールソン。
「コールソン…わざわざすまない。今日は…その…君に相談したいことが…」

げっそりと痩せて元気のないトニーを見て、コールソンはピンときた。さてはあの雑誌だな。あれで彼女と大喧嘩したんだな…。さすがは S.H.I.L.D.。世の中すべての動きを把握している…と言いたいところだが、偶然にもチェリストの恋人が「こんなに愛されて羨ましい!あなたも見習いなさいよ!」と叫びながら見せてくれたため、コールソンもこの記事を読んでいたというのは、ここだけの話。

「私でよければ相談に乗るぞ」
笑いを堪えながら言うコールソンに、どんより沈み切ってそのまま地面に落ちそうなトニーは話し始めた。
「じ、実はだな…私が調子に乗ったせいで、ペッパーを怒らせてしまって…。いや、愛ゆえの発言だったんだが…どうも私の言ったニュアンスとは別に取られてしまったようで…。いや…だからな、つまりは、彼女と喧嘩をしてしまって、謝ろうにも向こうが完全に私を拒否してしまっているんだ。会ってもくれないし電話にも出てくれない。メールを送ってももちろん返事はない…。社長の権限で強引に連れて来ることもできるが…そんなことに権力は使いたくないんだ。
こういう時、どうすればいいのかと困っている。何とかして彼女に謝りたいんだ…。何か名案はないか、コールソン」

明らかに自業自得。しかもあの記事は単なる惚気話じゃないか…諦めろ、スターク…と言おうかと思ったが、いつになく真剣なトニーにそんなことを言えるはずもなく、コールソンは自分が彼女と喧嘩した時に使った手を伝授することにした…。

「そうだな…あくまで私の使った方法だが…。まず、彼女の好きな物を買ってくる。食べ物に花に…。花はテーブルとベッドサイドに飾るんだ。後はキャンドル も置いたら雰囲気が出るな。そして君が食事を作り、彼女を呼び出し、美味い食事でウットリしたところに、宝石…指輪がいいんじゃないか?君の財力ならいくつでも買えるだろう?をプレゼント。そして謝りながら、愛を囁く…。これで彼女も機嫌を直すはずだ…。私はこれで成功したぞ…」

どうだ?と言わんばかりの顔で語るコールソンに、トニーはため息をついた。
「そんなことは今まで実践済みだ。何度もその手でペッパーは喜んだからな。ちなみに私は料理ができない。この間も3時間かけて作ったオムレツをマズイと言われた。マズイと言いながらも嬉しそうに食べてくれたからいいんだが…。問題はだな、コールソン。彼女に連絡を取ろうにも取れないことなんだよ。連絡さえ取れれば後は何とかできるからな。どうやって彼女を強引にではなく、呼び出せばいいかを君に聞きたいんだよ。食事も喉を通らないし、夜も全く寝れないだ…。このままでは私は死んでしまう…。何とかしてくれ!コールソン!君はエージェントだろ?!」

コールソンは思った。私の必殺技を伝授したのに…しかもエージェントだろとか無茶ぶり…。このバカップルには付いて行けない…もう帰ろうかと…。
だが、自分のスーツの裾を掴み、必死な形相のトニーを見ると、なぜか可愛く…いや、かわいそうに思えたため、コールソンはトニーと頭を突き合わせ、必死で考え始めたのだった…。

しかし、そこまで女性に拒否されたことのないコールソン。いいアイデアが浮かぶわけではなく、夜通し話したにも関わらず結局出た結論は…「スターク、調子に乗った君が悪い」。
ますます落胆したトニーを置いて、コールソンは早朝帰って行った…。

+++++

「ペッパー…今朝も社長、青い顔してフラフラ歩いてたわよ…。そろそろ許してあげたら?」
あの事件から2週間。会社でももちろん家にも行っていないため、ずっと顔を合わせていない…というよりも、彼からは弁明の電話やメールが山ほどきているけ ど、私が頑なに拒否してる…。本当はもう許してるの。あそこまでおおっぴらげに愛していると言われたんだもの…。ただ、ここまでくるとあとに引けないと言うか…。
返事のないペッパーに毎日のようにトニーの様子を教えてくれる同僚は
「あなたも相当頑固者ね」
と苦笑した。

いつもなら仕事中でも電話やメールがくるのに、今日は一切こない。何かあったのかしら…心配そうに携帯を何度も見るペッパーに気を利かせた同僚は
「ねぇ、ペッパー…お願いがあるんだけど…。この書類、急いで社長に持って行かないといけないんだけど…私、手が離せないのよね。悪いんだけど、あなたが持って行ってくれない?」
ついでにちゃんと話し合ってきなさいよ…と同僚に背中を押されたペッパーは部屋を出て行った。

社長室にたどり着いたペッパーだが、ドアをノックする勇気がなかなか出ず、ドアの前に立ち止まっていた。
2週間も声を聞いていないなんて…こんなこと、トニーが拉致された時以来かも…。会えないことはあっても彼はいつもこまめに電話をくれていたし…。

「社長、失礼します…」
勇気を出してドアを開けたペッパーだが、トニーの姿は見えない。
「いないのかしら…」
部屋の中を見渡すと、どこからともなく呻き声が聞こえた。
「トニー?」
デスクの方に向かうと、トニーは床にうずくまっていた。
ペッパーが慌てて駆け寄ると、トニーは額に脂汗を浮かべ、胸をおさえている。
「トニー!どうしたの?!どこか痛いの?!」
「ぺ、ペッパーか?…大丈夫だ…心配ない…」
絞り出すように言うと、苦しそうに咳き込み始めたトニー。
「と、トニー!!しっかりして!」
トニーの額に手を当てると燃えるように熱い。
「トニー!もの凄い熱よ!なんでこんなになるまで放っておいたのよ!早く病院に行かなきゃ!」
ガタガタと震えるトニーをソファーに置いてあったブランケットで包むと、支えるように立ち上がらせ、ペッパーはトニーを病院へと連れて行った。

+++++

寝不足と栄養不足で風邪をこじらせたトニーはそのまま入院。幸いにもすぐに回復し、3日後には自宅に帰ることができた。入院中、ずっと付き添っていたペッパーだが、トニーを自宅に送り届けると
「じゃあ、私は会社に戻るから…」
と帰ろうとした。

病院にいる間はほとんど眠っていたため、きちんと話ができなかった。これを逃せばまた話ができなくなる…と思ったトニーは、彼女の腕を掴んだ。
「ペッパー…話がある」
「トニー…私は忙しいの…話なら…」
せっかくのチャンスなのに、なぜか素直になれないペッパーは、トニーの手を振りほどき玄関に向かった。
「では、仕事が終わったら来てくれ…。ちゃんと話がしたいんだ…」
振り返らないその後ろ姿にトニーは懇願するようにつぶやいた。

夕方、仕事が終わったペッパーは、トニーの元へ行くべきか迷っていた。
しかし、嫌いになって会いたくないわけではない。むしろ会いたい思いは募る一方。苦しむトニーを見て、あのまま彼を失っていたら…私が知らない間に彼がいなくなっていたら…と思うとゾッとする。
やっぱりトニーは私に必要。つまらない意地を張らないで話をしよう…。トニーが好きな物をたくさん作って、栄養をたくさん付けて、早く元気になってもらわなきゃ…。

何か吹っ切れたように明るい表情になったペッパーは、マーケットで大量に買い物をすると、トニーの家に向かった。

+++++

「トニー、ただいまー」
玄関で声をかけるも返事がない。眠ってるのかしら…とリビングへ向かうと、何やら焦げ臭い。
キッチンへ向かうと、部屋中に白い煙が立ち込めている。
「大変!火事?!トニー!大変よ!!」
慌てふためき叫ぶペッパーを遮るように、呑気な声が煙の向こうから聞こえた。
「ペッパーか?大丈夫だ。」
そう言いながら、トニーが顔を覗かせた。
ペッパーは、急いでリビングとキッチンの窓を開け放ち換気をすると、トニーのそばに駆け寄った。
「トニー!火事かと思って、びっくりしたじゃないの…って、何してるの?」
見るとトニーはペッパーのレースの付いたエプロン姿。カウンターの上には、何やら奮闘した跡が…。
「何度やっても君のようには上手くできないな…。やはり私に料理は無理なようだ」
頭を掻きながら苦笑いするトニー。

白い煙が薄れてきた部屋をペッパーが見回すと、テーブルの上にはキャンドルとペッパーの好きな花が綺麗に飾られている。
「トニー…どうしたの?これ…」
エプロンを外したトニーは、ペッパーの手を取り椅子に座らせると、真剣な顔をして話し出した。
「この間のことをきちんと謝ろうと思ったんだ。ディナーを食べてながら…。ペッパー…この間は本当にすまなかった。私が調子に乗りすぎたばかりに、君にも嫌な思いをさせてしまったな…。許してくれ…。君がいないと私は何もできないんだ…。許してくれるなら何でもするから…」
そう言うと頭を下げ、黙ってしまったトニー。

どのくらいそうしていただろう。
沈黙が2人の間を支配し、しばらくたった後、ペッパーが口を開いた。

「トニー、あのね。私、もう怒ってないわよ。確かにあの記事を見たときは恥ずかしくて、あなたのこと恨んだけど…。あ、でも、あなたと私だけの秘密にして欲しかったことまで喋っていたのは、今でもちょっぴり怒っているわよ。でもね、あんなに私のことばかり喋ってくれていたなんて、愛されているって実感でき て嬉しかったのよ。とっくに許していたんだけど、私も頑固ね。意地を張っちゃって素直になれなかったわ。おかげであなたは倒れちゃうし…。私のほうこそごめんなさい。」
そう言うと、ペッパーはトニーの膝の上にのり、ギュッと抱きついた。
ペッパーに抱きしめられたトニーは
「すまなかった…。この償いは何でもする。ペッパー、やりたいことや欲しい物があったら何でも言ってくれ…」
とモゴモゴとつぶやいた。
ペッパーは、何度も謝るトニーの頬を撫でると
「トニー、もう謝らないで。それより、私、あなたが作ってくれた料理が食べたいわ。何を作ってくれたの?」
と、頬にキスをおとした。
「君がよく作ってくれるスープと、後はステーキなんだが…焦げてしまって…」
トニーは苦笑しながらペッパーを膝の上からおろし、キッチンへ向かうと、テーブルの上に料理を並べ始めた。
「美味しそうじゃない!ねぇ、食べていい?」
トニーはシャンパンを開けペッパーと自分のグラスに注ぐと
「味は保証できないが…」
と、グラスを傾けた。
「トニー、美味しいわよ!…ちょっと焦げてるけど…」
美味しそうに食べるペッパーをトニーは嬉しそうに見つめた。その熱い視線を見つめながらペッパーは
「ねぇ、トニー…もう一つお願いがあるの…。後でね…久しぶりに…」
と顔を赤くしてつぶやいた。
「何だ?一生禁止なんだろ?」
ニヤリと笑ってわざと答えるトニーに、ペッパーは
「もう…イジワルなんだから…あれは撤回!一生だなんて私も我慢できない…」
と、さらに顔を赤くして答えたのだった…。

中の人は料理上手らしいですが、社長は料理下手。

3 人がいいねと言っています。

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