オンナはみんな同じだと思っていた。甘い言葉の一つでなびくし、つまらないジョークでも笑ってくれると思っていた。
だが、彼女は違った。彼女は今まで出会ったどのオンナとも違っていたのだ…。
「…で、その時ハッピーが転んだんだ!」
話のネタされるハッピーには申し訳ないが、とっておきの笑い話を聞かせ反応を見る。だが、彼女はニコリとも笑わなかった。
「話は以上ですか?」
「あ、あぁ…」
白けた視線を送ってきた彼女…つい先日秘書になったペッパー・ポッツは、デスクの上の書類を束ねた。
「では、仕事があるので失礼します、社長」
軽く頭を下げたペッパーは、ヒールの音を響かせながら部屋を出て行った。
(もう少し可愛らしいと思っていたんだが…)
椅子を回転させながら大あくびをしたトニーは、彼女と初めて出会った日のことを思い出していた。彼女を秘書に抜擢し迎えに行った時、彼女は真っ赤な顔をして恥ずかしがっていた。その後ランチを食べながらお互いのことを話したり、自宅へ招きラボを見せた時も彼女は感嘆していた。
だが、本来の生真面目さからか、彼女は非常に仕事熱心だった。秘書になって3日後には『冷静で手厳しいミス・ポッツ』として社内で有名になったのだから、トニーが思っている以上にそうなのだろう。文句の一つも言わず、トニーのスケジュールからプライベートの管理…時には女性の後始末までしてくれるのだから、秘書としてはとても優秀だ。それでも仕事が終わりトニーと二人きりになると、時折可愛らしい笑顔を見せてくれるのだが…。
『社長は何でもジョークで済ませるんですか?』
つい先日言われた言葉をトニーは不意に思いだした。
人生その場が楽しければいいと思っていたが…。どうやら彼女と出会い、自分の中で何かが少しずつ変わってきているようだ。それが何かは分からないが…。
「これからゆっくり探せばいいか」
人生まだまだこれからなのだ。答えはそのうち見つかるだろう。
大きく伸びをしたトニーは、今宵の相手を見つけようと、携帯を取り出し適当に番号を押した。