Little of your time

社長、子供になる

『おはようございます。トニー様、ペッパー様…10時でございます…そろそろ起きられてはいかがでしょうか?』
スターク家の優秀な執事の声に目を覚ましたペッパー。
昨晩は休日前ということもあり、先程までトニーと愛し合っていたためか、本当ならまだ眠っていたいのだけど…。

「トニー…朝よ…起きて…」
隣に眠るトニーに抱きつこうと手を伸ばすも、彼の姿はない。
先に起きたのかしら…。だったら起こしてくれてもいいのに…。
そう思いながら起き上がると、足元のシーツが丸く膨らんでいるのに気づいた。
「トニー、何でそんな所で寝ているのよ…」
と言いつつ丸まったシーツをめくると…そこにはあどけない顔をして眠る子どもの姿(推定3、4歳)。
「だ、誰?!」
なぜ知らない子どもがトニーと私のベッドにいるのよ?!
肝心のトニーはどこ?!
「トニー!」
慌ただしくベッド下に散らばった服を羽織りながら愛しい人の名前を呼ぶペッパー。

すると、足元に丸まっていた子供がもぞもぞ動き、かわいらしい声で
「おはよう…ハニー…」
と答えたではないか!

「…え?」
なんでこの子が答えるの?!
状況が理解できず頭がパンクしそうなペッパーに向かってその子供は
「おい、何をうろたえているんだ…」
と大あくび。

よく見ると、以前見せてくれた小さい頃のトニーの写真にそっくりな子供。
「と、トニーなの?!」
寝ぼけ眼のその子供は、自分の状況に気付いていないらしく、
「何を言っているんだ…」
と大きく伸びをしながら言った。

と、ここでやっと子供は気付いた。いつにもましてペッパーの目線が高いということに…。
そして自分の手や身体を見て、声にならない悲鳴を上げると、後ろを振り返り、窓に映る自分の姿に卒倒した。

その場にひっくり返った子供をペッパーは慌てて起き上がらせると
「ね、ねえ?!ホントに…ホントにトニーなの?!」
と子供の頬を手で挟み顔を接近させた。

さすがと言うべきか…見た目は3、4歳でも中身は42歳のトニー・スターク。
慌てふためくペッパーとは対照的に冷静な声で
「私だ、ペッパー。さっきまで君を可愛がっていたトニー・スタークだ。信じられないのなら、君のスリーサイズだって言えるぞ。上から85の63の89だろ?」
と言い放ち、ペッパーの唇にキスをおとした。

いくら中身がトニーとは言え、子供の声で自分のスリーサイズを言われ…しかも突然キスをされ、罪の意識を感じてしまったペッパーだったが、トニーの方は以前にもハプニングがあったため、「そのうち戻るさ…」とあっけらかんとしていた。

幸いというべきか、今日は休日だ。早く元に戻す方法を考えなくっちゃ…と唸るペッパーに向かってトニーはのんきに言い放った。
「なぁ、ペッパー…服がないんだが…」
子供もいない…ましてや、まだ一応結婚もしていない…いやもう結婚しているようなものなのかもしれないが…2人の家に子供服などあるわけがなく、ペッパー は慌ててトニーの脱ぎ捨てたTシャツを…もちろん子供のトニーには大きすぎるのだが…かぶせると、自分も急いで着替えて洋服を買いに行った。

ペッパーがバタバタと出て行った後、お腹が空いたトニーはキッチンへと向かった。
カウンターの上に果物が置いてあるはずだ…。だが、いつもなら何のこともないカウンターも今のトニー(身長100㎝弱)には遥か頭上…。手を延ばしても届くはずもなく、あたりを見回しても踏み台になる物もない…。
そうだ!作業場に食べかけのチップスがあったぞ!
我ながらいいことを思い出した…トニーはニヤニヤしながら地下へ降りて行った…。

一方のペッパーは…
ベビー服や子供服が充実しているショップへ足を運んでいた。いつか子供ができたら、行ってみようと楽しみにしていた店だったのだが…まさかこんなに早く来ることになるとは…。
内心苦笑しながら、店内を見て回る。
「あ!これトニーに似合いそう!これもカワイイ!…子供ができたらこんな感じなのかしら…。あら?ちょっと待って!こっちもいいかも!キャー!親子でお揃いだって~!3人で着たらカワイイかも…」

本来の目的を忘れ、すっかり服選びに夢中になっているペッパーの手元には、すでに持ちきれないほどの子供服…。
嬉しそうに服を選ぶペッパーの姿を、何人もの人間が目撃しているとは知らず…。

ペッパーが出かけて早6時間…。
マリブの海に夕日が沈みかける時間になっても、ペッパーはまだ帰ってこない。
リビングのソファーに何とかよじ登りTVを見ていたトニーだが、帰ってくる気配すらないペッパーに痺れをきらし電話をかけようとしたその時…
「ただいま~」
と楽しそうに響き渡る待ち人の声。

「ペッパー!遅かったじゃな…!!な、何だ!その荷物は?!」
帰宅したペッパーの姿に驚くトニー。それもそのはず、ペッパーの手には数えきれないくらいの紙袋…。
ペッパーは荷物をテーブルに置くと戦利品を嬉しそうに並べ始めた。
「トニー、見て見て~。これ、カワイイでしょ?これもね、ポケットのところがこうなってて…あ、それからこの靴とTシャツ!見て~親子でお揃いなのよ!あなたと私と子ど…あら?トニー?どうしたの?」

肩を震わすトニーに気付いたペッパーはしまった!と思い、謝ろうとしたが…
「ぺ、ペッパー!!君は何しに行ったんだ!私は大変だったんだからな!空腹を満たそうにもカウンターも届かない、冷蔵庫も開けられない!作業場にチップスがあったのを思い出したから向かったが、ロックすら解除できなかったんだ!私が苦労している間に…君は…」

トニーは顔を真っ赤にして怒っているのだか、4、5歳の子供なのだから怖いはずもなく、涙目になっているその顔が逆にカワイイと思ってしまったペッパーは、愛おしくなりトニーを思わず抱きしめた。
「ごめんなさい、トニー…私…つい…ゴメンね…」
頭をなでながらぎゅっと抱きしめるペッパーだが、トニーの方は顔を真っ赤にしている。なぜなら、ちょうどペッパーの胸に顔をギュウギュウ押し付けられてい るからだ…。いつもの大人のトニーなら、願ってもない光景だが…今はちびっ子…。逃げるに逃げられないこの状況を脱するためには…。

「ぺ、ペッパー!お腹が空いたんだが…何か作ってくれないか?」
トニーに言われ、自分も朝から何も食べていないことに気づいたペッパーは、
「そうね。何がいい?ハンバーグなんてどうかしら?」
と、鼻歌を歌いながらキッチンへと向かった。

鼻孔をくすぐるジューシーな香りが漂ってきた頃には、トニーのお腹は限界。
腹が減って死にそうだ…どうせ死ぬならペッパーの胸の中で死にたい…ソファーにぐったり横になり縁起でもないことを考え始めたトニーだが…。
「トニー、出来たわよ」
ペッパーの声に飛び起き、キッチンへと走った。

しかし…椅子に座ろうにも背が届かず、ペッパーに抱きあげられ、フォークとナイフも今の自分には難しいらしく、上手く使いこなせない…。結局、ペッパーに 何から何まで世話をしてもらい、ようやく空腹を満たすことができたトニーだが、満腹になると今度は1日の疲れがどっとでて、眠気に襲われ大きなあくびをし 始めた。
「あら?トニー。眠いの…」
「いや…大丈夫だ…」
そう言いつつも、とろんした目をこするトニーにペッパーは
「じゃあ、お風呂に入って早く寝ましょ?」
頭を撫でると当然のようにトニーを抱きあげ、バスルームへと向かった。

「お、おい?!」
一緒に入る気か?!いつもは私が誘っても恥らうのに…いや、待てよ…すっかり母親気分なのでは…。
ジタバタと抵抗するトニーをペッパーは抱き直すと
「あら?一人じゃ何もできないでしょ?だから一緒に入りましょ?」
と、おでこにキスをするペッパー。
どうやら彼女はこの状況をすっかり楽しんでいるようだ…。
抵抗しても無駄だな…トニーは小さくため息をつき、彼女に従うことにした。

結局、髪を洗おうにもペッパーの言う通り一人では何もできないトニーは彼女にされるがまま。
バスタブに入り、膝の上にちょこんと座らせたトニーの顔をペッパーは嬉しそうにタオルで拭き始めた。
「ペッパー…楽しそうだな…」
ややげっそりした声のトニーとは対照的に
「あら?そうかしら…ねぇ、トニー…。子供ができたらこんな感じなのかしらね?」
ペッパーは楽しそうに答えると
「そろそろあがらないとのぼせちゃうわね…」
そう言うと、トニーを抱きしめバスルームを後にした。

寝室に戻り、ペッパーは大量に買ってきた中からパジャマを出すと手早くトニーに着せ、ベッドに寝かすと自分も横になった。
「ペッパー…君は子供が欲しいのか?」
先程からずっと思っていた疑問をトニーはペッパーにぶつけてみた。
すると…
「そうね。あなたとの子供は早く欲しいわ…。今までもずっと思っていたけど、今日1日小さなあなたをお世話して、余計欲しくなったわ…だって、小さなあなた、可愛いんだもの…」
そういうとペッパーはトニーをぎゅっと抱きしめ柔らかな頬に軽くキスを落とした。

その何とも言えない感触にトニーは顔を赤くするとニヤリと笑った。
「そうだな…私も君との子供は早く欲しいと思っているんだが…こればかりは授かりものだからな…。だが…もっと頑張らないといけないな…」
小さくても一人前にニヤリと笑うトニーに苦笑しながら
「じゃあ、早く元に戻ってくれないとね…おやすみトニー…」
そういうと、トニーを抱きしめ直し、明日は元に戻っていますように…と願いながら眠りについた。

翌朝…いつもより早く目が覚めたペッパーだが、自分が抱きしめていたはずのぬくもりは消え、逆に自分を包み込む大きなぬくもりを感じた。
目を開けると、そこには自分を見つめるいつものトニーの姿が…。
「おはよう、ハニー…」
「トニー!元に戻ってるわ!」
トニーに飛びつき唇にキスを落とすと、トニーは軽々と彼女を抱き抱え一回転。
気付くとトニーに押し倒されていたペッパーが目を白黒させていると
「ほら、ペッパー…早速頑張って子作りしようじゃないか…」
と、トニーは首筋にキスを始めたではないか…。
「と、トニー!もう朝よ?!何も今から頑張らなくても…」
無駄な抵抗だと言わんばかりに蕩けるようなキスをすると、ニッコリ笑ったトニーは
「大丈夫だ…出勤まであと3時間ある…」
と、ペッパーのパジャマを脱がし始めたのだった…。

その後、仲良く出勤したトニーとペッパーだが、周囲の視線がやたらと自分たちに向けられているのに気付いた。
「トニー?何かした?」
「私は何もしていないぞ。それに注目されるのはいつものことだろ?」
エレベーターに乗り込み2人で話していると、
「やっぱりそうだよ」
「あれだけ仲がいいんだから…今までなかったのが不思議だって…」
社員たちがこそこそと自分たちのことを話しているが、今回ばかりは身に覚えのない2人。
その場の空気に耐えきれなくなったトニーが後ろを振り返り
「で、何の話だ?」
とニッコリ笑って社員たちを見渡すと、
「な、何でもありません!」
ひきつった笑いを浮かべ凍りつく社員たち。

「まったく何なんだ…!」
社長室に辿り着くまでも散々噂をされるも、何のことかさっぱり分からない状況に若干イラつき始めたトニーをペッパーは
「ねぇ、トニー…そんなに怒らないで…」
となだめ、頬にキスをした。
「そうだな…君がキスしてくれたら機嫌を直してやってもいいぞ…」
ここぞとばかりにキスをねだるトニーに苦笑しながらも、先程までの情事のせいかその感触が恋しくなったペッパーは、椅子に座るトニーの膝の上に座ると首に手を回し甘い口づけをし始めた。
ペッパーの腰に手を回し、舌で彼女の歯列を舐めるように口内を味わうと、ペッパーの塞がれた口からは
「ん…はぁ…んんっ…」
と甘い吐息が漏れ始めた。

そういえば、今日は朝一番にここでミーティングがあったはず…だが止まらないぞ…外で待たせておけばいいか…。
トニーが都合よく考えていた矢先、ドアがノックされ
「おはようございます、社長」
と数人の社員が室内に入ってきた。
が、2人の姿を見た社員たちはしまった!まずいタイミングで来てしまった!と慌てて引き返そうとした。
そんな彼らに気付いたトニーは、慌てて膝の上から降りようとするペッパーの腰を引き寄せ逃げられないようにしたところで、
「おい、大丈夫だ。ミーティングを始めよう」
と言い放ったのだ。

が、はっきり言って、社員たちにとってはミーティングどころではない。
なんせ社長は専属秘書を膝の上にのせ、あろうことか見せつけるように首にキスをしながら聞いているのだから…。膝の上の秘書は逃げるに逃げられず、真っ赤になった顔を隠すかのように社長の首元に顔をうずめているのだが、傍から見ると抱きあっているようにしか見えない…。
トニーを除く誰もが早く終わらせようと必死に頑張った甲斐もあり、ミーティングは通常の半分の時間で終了。

「では、社長…我々はこれで…」
改めて2人の仲の良さを見せつけられた社員たちは顔を真っ赤にして退出しようとしたが、1人の社員が思い出したようにトニーに言った。
「そういえば、おめでとうございます、社長」
「は?」
書類を眺めながらコーヒーを飲んでいたトニーは、膝の上からようやく解放され身なりを整えていたペッパーと思わず顔を見合わせた。
「何のことだ?」
「聞きましたよ、ミス・ポッツがご懐妊だとか…」

ブーーー!!!!

飲んでいたコーヒーを吹きだすトニーと、真っ赤になり凍るペッパー。

2人の様子に異変を感じた社員は
「あ、あの…違うんですか…?!」
と慌てふためいた。
「い、一体誰に聞いたんだ?!」
拭きこぼしたコーヒーを拭きながらトニーが尋ねると
「あ、あの…。今朝から社内はこの話題でもちきりなんです。昨日、ミス・ポッツが社長のご自宅の近くのベビー服の店でいろいろ買い物されていたと…てっきりお子様がお生まれになるのでその準備をされているものだと…」

その社員は汗を拭きながらしどろもどろに話すと「皆楽しみにしていたんですが…間違いだったんですね…。皆にそう話しておきます…」と凍る2人を残し退室した。

残されたトニーとペッパーは…
「おい、ペッパー…昨日と言うと…」
「トニー!ゴメンなさい!私が早く帰っていれば…」
必死で謝るペッパーをトニーは抱きよせると
「なぜ謝るんだ?聞いたろ?みんな楽しみに待っているんだと…。こうなったら期待に応えられるよう頑張らないとな。幸いにも午後まで何も予定はないんだ。さあ、2人で仕事をしようか?」
そう言うと、デスクの上にペッパーを押し倒すトニー。
「と、トニー?!あ、朝もしたでしょ?!それに私は仕事があるのよ!」
逃げようとするペッパーにキスをすると、
「これも君の大事な仕事だ、ミス・ポッツ」
と、大人しくなったペッパーのジャケットに手をかけながら甘いキスを次々とおとしていったのだった…。

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