025.所有印

「社長…あの…」
会議へ向かおうと立ち上がったペッパーは、秘書の声に振り返った。なぜか秘書は真っ赤な顔をしており、ペッパーと視線を合わせようとしない。
「何?どうしたの?」
小首を傾げたペッパーだが、何か言いたそうなのに秘書は何も言わず黙っている。
「ねぇ、何か問題があるなら教えてくれる?」
ニッコリと笑ったペッパーは、つい先日秘書になったばかりの若い女性の肩を軽く叩いた。
言おう言わまいか迷っていたようだが、秘書は何度か深呼吸すると顔を上げた。
「非常に言いにくいんですが…社長の首筋に…その…」
最後まで聞かなくても、彼女の言いたいことは分かった。つまり、自分の首筋には昨夜から今朝にかけてトニーが付けた所有の証が無数に刻まれているということ。
日常茶飯事だし、今さらなことなのだが、秘書になったばかりの彼女には刺激が強すぎたのかしら…とペッパーは思った。
「大丈夫よ。いつものことなの。目立つところにしないでって、トニーに言うんだけど、彼ったら言うこと聞いてくれないの」
肩をすくめたペッパーは、今朝、家を出る前にトニーが無言で差し出したコンシーラーを取り出すと塗り始めた。
「す、スターク会長がですか?!」
トニーが付けたことになぜか驚いている秘書は、目を白黒させている。
(どうして驚いてるのかしら?)
秘書は、あのトニー・スタークが…と、まだブツブツと言っている。
(彼って、そういうことをしない大人に見えるのかしら…)
部屋を出たペッパーを秘書は慌てて追いかけて来た。
(服を脱いだら凄いことになってるって言ったら、彼女、卒倒しそうよね…)
クスっと笑ったペッパーは、コンシーラーでは隠し切れなかった証を隠すように、ポニーテールを解いた。

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