The cause of worry

「なぁ、スターク。最近娘が冷たいんだ…」
盛大なため息を付いたクリント・バートンは、トニーがちらりと振り向いたのを確認すると言葉を続けた。
「今朝も学校へ行く前に小さい時みたいにキスをしようとしたら、嫌だと飛び蹴りされたんだ…」
バートン家の娘は確かまだ9歳。それなのにあのホークアイを唸らせるほどの飛び蹴りをするとは、さすがブラックウィドウの娘だと妙なところで関心していると、話半分に聞いていると気付いたクリントは、トニーの腕を突いた。
「お前のところはどうだ?娘が2人もいるだろ?それに上の娘は大学生だ。父親の事を嫌がったりしないのか?」
クリントの言葉にトニーはエストとアビーの行動を思い出したが、二人とも飛び掛かってくることはあっても飛び蹴りしてくることはない。
「うちか?うちはそうだな…」
と言いながら、トニーは今朝の出来事を思い出した。

大学生になり家を離れたエストが、夏休みのため帰省してきたのは昨晩。トニーは仕事で帰宅が遅く、昨晩は娘と顔を合わせていなかった。
そして今朝、トニーはキッチンへ向かったのだが、先に起きていた長男と双子に
「パパ、おはよう!」
と挨拶され、3人の頭を撫でながら席へ座ろうとした時だった。
ペッパーと朝食を作っていたエストが父親に気付くと、顔を輝かせながら駆け寄ってきた。
「パパ!」
トニーに抱きついたエストは、あろうことか頬にキスをし始めたのだ。
「え、エスト?!」
目を白黒させたトニーは娘を引き離そうとしたが、ギュっと抱きついたエストは
「もう!せっかく久しぶりに帰ってきたのに!」
と、頬を膨らませると、再びキスをし始めた。
小さい頃と変わらない娘に内心は嬉しいトニーだが、エストももう18歳だ。いつまでもこんな過剰なスキンシップはいくらなんでも良くないだろうと、トニーはエストを膝の上から降ろすと立ち上がった。
「相変わらずだね、姉ちゃん」
助け船を出してくれるのかと思いきや、息子2人は妻と共に苦笑している。そんな3人に何か言おうとした時だった。
「あー!お姉ちゃん!私もパパとチューするの!」
10歳の末っ子アビーが立ち上がるとトニーに背後から飛び付いた。すると妹に負けじとエストは正面からトニーに抱きついた。
「アビーはいつでもパパのこと独り占めできるでしょ!私は滅多に帰れないんだから!お姉ちゃんに譲りなさい!」

朝から父親の争奪戦。
素直に喜んでいいのか、それともいい加減ベタベタするのはおかしいと諭した方がいいものか…。
思い出したトニーはブルっと身を震わせた。
何も言わないトニーにクリントは口を尖らせた。
「何だ?スターク家は安泰なのか…。いいなぁ…俺も娘に…」

安泰と言えばそうなのだろう。だが、『18歳になる娘がキスをしてきて困る』とは目の前の男に相談することもできず、トニーは手元の冷めたコーヒーを飲み干したのだった。

***
エスト18歳にして、このファザコンぶりはいいんでしょうか(汗)

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