Angel

「ビェェェーーン!」
困った…泣き止まないぞ…。

出産して早3ヶ月。家にこもりっぱなしだった彼女に束の間の休息を与えるために、今日1日は仕事もヒーロー業も臨時休業。
「ホントに大丈夫?」
出掛ける間際まで心配そうだった彼女の顔が脳裏をよぎる。
「私も父親だぞ。大丈夫だから、今日はゆっくりしておいで…」
軽くキスをして送り出したものの…。

ミルクもあげた。オムツも変えた…。
抱き上げあやし続けるも、泣き続ける小さな娘…。
泣くことでしか要求を伝えられないのは分かっているが…やはり父親よりも母親なのか…。いつもなら抱き上げてあやすとニコニコと笑いかけてくるのだが…。今日は母親が不在なのを悟っているのか、いつもに増して激しい泣き方にこっちが泣きたくなってきた…。

泣き止む気配のないエストを抱きしめ途方にくれていると、我が家の有能な執事がアドバイス。
『トニー様…お子様はご両親の感情に敏感だと聞いたことがあります。しかめ面をやめて笑ってみてはいかがでしょうか?』

ふと窓を見ると、そこに映るは眉間に皺を寄せエストを抱く自分の姿。
これじゃぁ、泣くのも無理ないか…。
ふぅ…と小さく息を吐き、エストの小さな顔を自分の目の前まで持ち上げる。
「さあ、泣くのは終わりだ。パパに君のとびっきりの笑顔を見せておくれ…」
人には滅多に見せない笑顔で笑いかけると、涙はピタッと収まり天使のような笑顔で微笑みかけてくれる娘。
「私のこの顔を見られるのはママとお前だけなんだぞ…」
鼻と鼻を付けて話しかけると、だぁだぁと言いながら、私のヒゲを引っ張り始めた。
その小さな温もりと笑顔は、私の心に暖かな風をもたらしてくれるのを君は知っているか?
小さな天使はやがて小さな口であくびを一つ。泣きつかれたのかはたまた安心したのか、しばらくすると眠ってしまった。
私と彼女のベッドに起こさぬようそっと下ろし、小さな身体を右手で撫でていると、小さな手で私の指を掴んだ。
「さあ、そろそろお前の大好きなママが帰ってくるぞ…」
小さな温もりは思いのほか私に心の平安をもたらせるらしい。

目を覚ますと、エストを抱いた彼女がニコニコしながら私を覗き込んでいた。
「おはようトニー。2人揃って同じ顔して寝てるんだもの…」
エストの頬を楽しそうに撫でると、彼女は私たちに最高の笑顔をプレゼントしてくれた。

***
トニー、子供と二人で初めてのお留守番

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