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Pepperony Week 2014 Day2:Pre-relationship

明日のスケジュールを読み上げているのに、あいにく先方は聞いていないようだ。いつものことだから別にいいのだが、ため息を付いたペッパー・ポッツは手帳を閉じると事務的に尋ねた。
「以上です、社長。ご質問は?」
デスクに頬杖を付いた彼女のボスは、大あくびをすると鼻の頭を掻いた。
「ポッツくん、恋人はいないのか?」
「は?」
どうしてこのタイミングでプライベートな質問をするのかしら…と、ペッパーは頭を抱えた。

本音を言うと、彼のことが好きだ。
目の前で笑っているあなたが好きと言えたらどんなに楽かしら…という思いがペッパーの脳裏をよぎった。
だが、彼は直属のボスなのだ。それもプレイボーイと名高いトニー・スターク。一夜の相手は星の数もいる。それなのに本命はこの十年間現れたことがないのか、同じ女性と二度デートするのは見たことがない。それはもしかして、誰か秘めた相手がいるということなのかしら…。

視線に気づき顔を上げると、トニーがじっと自分を見つめているではないか。魅力的な瞳に見つめられたペッパーは、本心を隠そうと咳払いをした。
「いません。あなたの世話で忙しくて、そんな暇はありません。私より、社長ですよ。大勢いらっしゃるじゃないですか」
わざとプーっと頬を膨らませたペッパーは、少々トゲのある言い方をしてしまった。それに気づいたかどうかは定かでないが、トニーの顔からは先程までの笑みが消えていた。
「どうだろうな…。身体だけのオンナは大勢いるが…」
さみしそうな顔をしたトニーは、
「君がいるからいいんだ。私のそばには君がいて、世話してくれるだろ?」
とわざとらしくウインクをした。

自分の本能に従えたらどんなに楽だろう…。その身体を抱きしめたい…。キスをしたい…。そして君が欲しいと言えたら…。

そんな思いを掻き消すかのように頭を軽く振ったトニーは、立ち上がるとペッパーの肩を軽く叩いた。
「恋人のいない君のために、今日はデートをしよう。…嘘だ。ディナーを食べに行かないか?美味い店があるんだ。いつか行こうと考えていたが、急に食べたくなった。だから今から行こう」
何か言いたげなペッパーだったが、彼と少しでも長く過ごしたいという思いには逆らえなかった。
「仕方ないから一緒に行ってあげるわ。でも、ディナーに行くなら前もって言って下さいね」
言葉とは裏腹に嬉しそうに笑ったペッパーの手をトニーはそっと握ったのだった。

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Pepperony Week 2014 Day1:Injury/Hurt

「無茶をしたと思っているだろ?」
黙ったままのペッパーを上目遣いに見上げると、トニーは恐る恐る口を開いた。
(知っているぞ。君がその態度をする時は、とても怒っているということを…)
だが、そんなことを口に出すほどトニーも馬鹿ではない。いや、正確にはペッパーと言い争うほどの気力が残っていないというところだろうか。
両手両足をギブスで固定されたトニーは、枕に顔を埋めた。ベッドサイドの椅子に腰掛けたペッパーは、相変わらず黙ったままリンゴを剥いでいる。
悪いのは自分だと分かっている。危険な作業…すなわち、爆発の危険性がある開発は家では行わないと約束していた。だが、こっそりと行っていたラボでの実験中に起こった爆発。トニーは部屋の隅から隅へ吹き飛ばされた挙句、ありとあらゆる物が身体の上に積み重なり、この様だ。
約束を守らなかったのは自分だ。すなわち、今回の怪我は自業自得。しかも、一歩間違えれば死んでいたかもしれないのだ。
(だから余計に怒っているんだよな…)
彼女の真っ赤になった目が全てを物語っている。おそらく手術の間、そして意識不明の間ずっと泣いていたのだろう。もう二度と会えないかもしれないという恐怖と、彼女は必死に戦っていたのだろう。
結局のところ、いつも心配させてばかりだ。泣かせてばかりではないか…。

チラリと横目で確認すると、リンゴを剥き終わったペッパーは、ふぅ…と小さく息を吐いた。そのタイミングを見計らうように、トニーは口を開いた。
「…すまなかった…。もう二度としない…」
伏せていた視線を上げたペッパーだが、トニーの方を見ようともしない。何とか振り向かせようと、トニーは必死に喋り続けた。
「私が悪かった。君との約束を破ったばかりか、こんなことになってしまった。あのまま死んでいてもおかしくなかった。だが、生き残った。運がいいんだな、私は。いや、運がいいのは、きっと君がいてくれるからだ。君は私にとって幸運の女神だからな」
と、言ってみたものの、ペッパーの冷ややかな視線に気付いたトニーは口を閉じた。手に持っていたフォークをリンゴに思いっきり突き刺したペッパーは、無言でトニーに差し出した。
「えっ…と…」
どういうことかと戸惑うトニーに、ペッパーは立ち上がった。
「もう二度としないで!あなたに死なれたら困るの!私にはあなたしかいないの!もしあのまま死んでたら、私はどうすればいいのよ!」
叫ぶように言ったペッパーの目からは大粒の涙が零れ落ちた。それでも口をへの字に曲げ、必死で涙を堪えたペッパーは、何か言おうとしているトニーにリンゴを突きつけた。
「分かったら、このリンゴを食べなさい!」
何度も頷いたトニーが口を開けると、ペッパーはリンゴを押し込んだのだった。

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