「高校生」カテゴリーアーカイブ

⑨19.肯定の証

ペッパーが退院したのは、あの事件から一ヶ月経ち春休みも終わった3月の中旬だった。
いよいよ学校へ行くという初日。まだサポーターを付けたペッパーは、足を引きずりながら玄関に向かっていた。
「ヴァージニア、送っていくぞ?」
思わず声をかけた父親だが、ペッパーは慌てて頭を振った。
「大丈夫!いってきます!」
玄関を飛び出して行った娘に、母親はニンマリ笑った。
「大丈夫よ。ほら、トニーくんが迎えに来てるから」

「あ、先輩!おはよ!」
「おはよう、ハニー」
ひょこひょこと近づいてきたペッパーを抱きしめたトニーは、唇を奪うと助手席のドアを開けた。
「今日からは毎日送迎するよ」

学校へ到着すると、トニーはペッパーを抱き上げた。
「せ、先輩?!歩けるから降ろして?!」
真っ赤になって暴れるペッパーにキスをしたトニーは、顔をしかめた。
「まだ足が痛いんだろ?いいから黙っとけ」
「…うん」
真っ赤になった顔を隠すようにトニーの肩に顔を埋めたペッパーは、周囲から聞こえる悲鳴にますます顔を赤らめた。

「また昼に迎えに来るよ」
ナターシャたちの隣にペッパーを座らせると、トニーは手を振りながら教室を出て行った。
「朝から愛されてるわね。羨ましい…」
からかうナターシャの肩を小突いたペッパーは、恥ずかしそうに顔を隠した。
「先輩ったら…ここに来るまでずっとキスするのよ…」
「なるほどね…。ちゃんと考えてるってこういうことだったのね」
「え?何?」
何でもないわ…と笑うジェーンにペッパーは小首を傾げた。

昼休みになり、ランチに行こうと腰を上げたペッパーの耳に、黄色い声が聞こえてきた。顔を上げると、教室の入り口にはトニーの姿。ペッパーを見つけたトニーは、駆け寄って来た。
「迎えに来たよ、ハニー」
頬にキスをしたトニーは、屈みこむとペッパーに背を向けた。
「ほら、乗れよ」
要するに、おぶってやろうということだろう。
「せ、先輩!!あ、歩けるから大丈夫!」
首を振り必死で拒否するペッパーだが、ムッとしたトニーはペッパーの腕を引っ張ると抱き上げ歩き出した。

二人がカフェテリアに向かう途中、女子生徒の悲鳴が学校中に響き渡った。
「ねぇ。トニー…恥ずかしいから降ろして?」
こっそりと聞いてみたものの、トニーは口をへの字に曲げた。
「嫌だ。これ以上君が怪我したら困る」
「そんなことないわよ…」
意外と頑固なトニーは、一度決めたら曲げないため、仕方ないわね…とペッパーはため息を付いた。

トニー・スタークがペッパー・ポッツを抱えてこちらに向かっているという情報は、本人たちが到着する前にカフェテリアにいる全生徒に行きわたっていたため、二人が入口に姿を見せると、みんな一斉に静まり返った。
あのトニー・スタークのことだ。おそらくあの事件について何か言うに違いない…。
部屋の真ん中のテーブルに向かう二人を、みんな固唾を飲んで見守った。異常な雰囲気に身体をビクッと震わせたペッパーは、トニーのシャツをキュッと掴ん だ。
「大丈夫だ、君の事は二度と傷付けさせない」
優しい声で囁いたトニーは、ペッパーの椅子に座らせると、自分は椅子の上に立ち上がった。
「おい、聞いてくれ!」
手を叩いたトニーをみんなが振り返った。
「みんな知りたがってることを今から言う。いいか、俺はここにいるヴァージニア・ポッツさんと付き合っている。俺は彼女のことを愛している。世界一愛している。彼女なしの人生なんて、俺には考えられない。だから、いいか、彼女を傷つけてみろ。俺が絶対に許さないからな。彼女を傷つけた奴は、俺に喧嘩を売ったと思え。いいな?」
シーンと静まり返った部屋を見渡したトニーは、椅子から降りるとペッパーを立ち上がらせキスをしたが、我に返った生徒たちは一斉に拍手をし始めた。
大歓声の上がるカフェテリアの真ん中で、ペッパーを抱き締めたトニーの口づけは次第に深くなっていく。
大騒ぎになっているカフェテリア。何事かと駆けつけてきた教師は思わず声を荒げそうになった。だが、あの事件で傷ついたであろうペッパーが幸せそうに笑っており、あの人には無関心だったトニー・スタークが彼女を守ろうとしている姿を見ると、何も言わずそっと出て行った。

⑩012.誘ったのは君

高校生パロ。3月のお話。みんなの前で告白

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⑧107.求愛

ペッパーが入院してから毎日のように病院へ通っているトニーだったが、三週間ほど経ったある日、学校を出ると門のそばに見覚えのある車が停まっていることに気づいた。
(おい、まさか…)
ため息をついたトニーが車に近づくと、後部座席の窓が開き一人の女性が顔を覗かせた。
「トニー、待ってたわよ」
自分とよく似た笑みを浮かべたその女性は、マリア・スターク、すなわちトニーの母親だ。ドアを開けたマリアは渋い顔をしている息子を車の中に引っ張り込んだ。
「何でいるんだよ?」
ぶっきらぼうに答える息子にマリアは口を尖らせた。
「あら?『大事な人の一大事』と言って飛び出してから、何も言ってこないでしょ?ハワードも心配してるわよ?ジャーヴィスから聞いたわよ。トニーったら恋人ができたんでしょ?何でママに教えてくれないの?それもあなたのせいで大変な目にあったんでしょ?ちょうどこっちで用事があったの。だから母親としてきちんと謝っておかなきゃって…」
ペラペラと話す母親にため息を付いたトニーは、勝手にしろと窓の外を眺め始めた。

病院へ到着すると、マリアは大きな荷物をトランクから山のように取り出した。目を白黒させているトニーに持つように命じると、マリアはスキップしながらペッパーの病室へ向かった。

母親と話していたペッパーは、突然見知らぬ派手な女性が入ってきたのに驚き飛び上がった。母親共々呆然としていると、その女性の後ろから大荷物を抱えたトニーが顔を覗かせた。
(先輩?!ということはもしかして…)
どことなくトニーに似ているその女性は、ペッパーと母親に歩みよると頭を下げた。
「ヴァージニアさんとお母様ですよね?初めまして。トニーの母親のマリアです。ポッツさん、この度はうちのバカ息子のせいで、お宅のお嬢様を大変な目に合わせて申し訳ありませんでした。本来なら主人共々ご挨拶に伺うべきなんですが、あいにく主人は仕事で…。本当にすみません」
頭を下げ続ける女性がトニーの母親…すなわち、あのスターク・インダストリーズの社長夫人だと知ったペッパーの母親は立ち上がると、つられるように頭を下げた。
「スタークさん、頭を上げて下さい。今回のことは、トニーくんのせいでも何でもありません。それに、彼には本当によくしてもらってるんです。ですから…」
お互い頭を下げ続けていたが、そのうちすっかり意気投合した母親たち。ペッパーにと持ってきたお土産…有名店のお菓子に可愛らしいフリルの付いたパジャマやガウン、洋服などを次々と出すマリアは、恐縮しまくるペッパーと母親に向かいにっこり笑った。
「遠慮しないでちょうだい、ペッパーちゃん!私ね、ずーっと娘が欲しかったの。結局この子しかできなかったんだけど、あなたが娘になってくれたらさぞかし楽しいでしょうね!あ、ポッツさん、ペッパーちゃんはトニーに責任を取らせますから、安心して下さいね」
「私もトニーくんが息子になってくれたら…って、ずっと思ってたんです!スタークさん、こちらこそよろしくお願いします!」

「…というわけで、親公認に…というよりも、勝手に母親同士で婚約まで話が進んだぞ」
マリアの襲撃から三日後。
放課後のカフェテリアで、トニーはクリント、ナターシャ、スティーブの前で、事の顛末を話していた。
「さすがお前の母親だな…」
クリントだけでなく全員が苦笑する中で、真面目なスティーブは顔を曇らせた。
「だが、トニー。君たちの気持ちは…」
スティーブの言いたいことが分かったトニーは、彼の肩をポンっと叩いた。
「ああ。俺も彼女と一緒にいたいと思ってたから、伝えたさ。ずっとそばにいてくれって…」
「そうか…」
ホッとしたように息を吐いたスティーブは、嬉しそうにトニーの背中を叩いた。
「ところで、どうするんだ?」
カフェテリア中の生徒の視線が自分に向いているのは、入った時から気づいている。ちらりと見渡したトニーは、
「ちゃんと考えてる。大丈夫だ」
と言うと、ニヤリと笑った。

⑨19.肯定の証

高校生パロ。3月のお話。親同士で盛り上がる両家

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⑦103.スキャンダラス

あのカフェテリアでの告白の翌日。
校門を潜るや否や、ペッパーは道行く生徒が皆自分を指差しコソコソと話しているのに気付いた。
(きっと昨日のことよね…)
トニーと付き合い始めてから、こうなることは覚悟していたけど、いざ遠巻きに噂されるとあまりいい気はしない。ため息を付いたペッパーは、居心地の悪さを感じながらも教室へと向かった。
教室では、ナターシャとジェーンがいつもと変わらない笑顔で迎えてくれた。
「おはよ、ペッパー。で、昨日はあれから先輩とヤったの?」
皆が聞き耳を立てているのに、どうしてそんなことを聞くのよ!と、ナターシャを睨みつけたペッパーだが、首筋にある赤い印を見つけたジェーンにコンシーラーを手渡されると、黙って塗り始めた。

「何でポッツさんなの?」
「あんな地味な子のどこがいいのかしら?」
授業中ですら聞こえる陰口。俯いたペッパーの目から涙が一粒零れ落ちた。そんな状況に我慢できなかったのだろう。授業が終わるや否や、ナターシャが机を叩き立ち上がった。
「あんたたち、いい加減にしなさいよ!先輩がこの子を選んだのよ?嫉妬もいい加減にしとかないと見苦しいわよ!」
あまりの迫力にコソコソと話をしていた生徒は口を閉じた。
「ペッパー、行きましょ?」
ペッパーを立ち上がらせた二人は、教室を出て行った。

昼休みのカフェテリアは生徒たちで賑わっていたが、ペッパーたちが姿を現すと静まり返った。
「あの子よ、スターク先輩の彼女」
「あんな子のどこがいいの?」
「先輩に色仕掛けで迫ったんじゃない?」
「一年生のくせに生意気よ」
聞こえるように囁かれる誹謗中傷に耐えきれなくなったペッパーは、ナターシャたちの手を振り切るとカフェテリアを出て行った。同級生になら言い返せるものの、さすがに上級生には言えるはずもなく、ナターシャは唇を噛み締めた。
「おーい、ナターシャ。どうした?」
そこへ姿を現したのは、クリントとスティーブ。
「いいところに!ねぇ、スターク先輩は?」
「あいつは今日明日休みなんだ。家庭の事情だってさ。…何かあったのか?」
ナターシャから話を聞いたクリントは顔色を変えると、慌ててトニーに連絡し始めた。

近くの女子トイレに駆け込んだペッパーは、洗面台の前に立った。
(しっかりしなさいよ、ペッパー!先輩が私を選んでくれたのよ?だから負けちゃダメ!)
涙を拭い、心配しているだろうナターシャたちの元へ戻ろうとしたペッパーを複数の女子生徒が取り囲んだ。見ると、トニーと同学年の女子生徒ばかり。
「何ですか?」
ビクっと身体を震わせたペッパーの髪を一人が引っ張った。
「あんたでしょ?スタークくんのオンナって。一年生のくせに生意気なのよ!」
「誰の許可をもらって、彼と付き合ってるの?」
「あんたなんか、二度と彼に会えないようにしてやるわ!」
彼女たちの言っていることはめちゃくちゃだが、ここにいると酷いことをされると感じたペッパーは、慌てて逃げようとしたが、口をガムテープで塞がれ、トイレの個室に押し込められた。
「んー!!!」
手足をバタつかせるペッパーの頬を何度も殴った生徒たちは、トニーが美しいと褒めてくれた髪の毛を切り始めた。
(い、いや!!トニー…助けて!!)
恐怖と悔しさで涙を流すペッパーを嘲り笑うように、服を破いた生徒たちは頭から水を掛けた。
「ねぇ、誰か男子を呼んできてよ。こいつのこと、めちゃくちゃにしてもらいましょ?」
慌てて逃げようとしたペッパーは、生徒の一人に足を引っ掛けられ、転倒してしまった。
「逃げても無駄よ。あんたのこと、犯してもらうんだから」
ペッパーの身体を蹴り始めた生徒たち。何度も蹴られ泣き叫ぶペッパーだが、その声は誰にも届かない。
目をギュっと閉じたペッパーは、トニーの顔を思い浮かべた。
(先輩……)
意識が遠のき始めたペッパーの耳に、聞き慣れた声と複数の怒鳴り声が聞こえた……。

ペッパーが目を開けると、目の前には白い天井が広がっていた。
「ヴァージニア、気がついた?」
目に涙を溜めた母親が自分の手を握りしめているのに気付いたペッパーは、にっこりと微笑んだ。
「ママ…」
「良かったわ、大事がなくて。ナターシャちゃんたちがあなたのこと助けてくれたの。待ってて、呼んでくるわ」
母親が廊下へ出て行くと、ペッパーは自分の状態をチェックし始めた。
身体中は痛み、左腕と左足にはギブスがはめてある。頬は腫れ上がり、そして髪の毛は肩の辺りで切り揃えられている。
あの悪夢のような出来事を思い出したペッパーは、目をギュと閉じた。
「ペッパー…」
ジェーンの声に目を開けると、ナターシャとそしてクリントが駆け寄ってきた。
「みんな…」
三人の顔を見たペッパーの目に涙が溜まり始め泣き始めた。
「ペッパー、大丈夫よ。ごめんなさい。もっと早く気がつけば…」
ペッパーの手を握りしめたナターシャとジェーンも、一緒に泣き始めた。
その時、何かバタバタと走って来る音がし、病室のドアが壊れそうな勢いで開いた。
「ペッパー!!」
入口に姿を現したのは、真っ青な顔をしたトニー。パーティーだったのだろうか、タキシードを着たトニーはペッパーの姿を見るとさらに顔色を変え、駆け寄って来た。
「先輩…」
トニーの顔を見た瞬間、安心したペッパーは声を上げて泣き始めた。腕を伸ばしたペッパーを抱きしめたトニーは、声を震わせた。
「ペッパー、すまなかった。俺が守らないといけないのに、守れなかった。君に辛い思いをさせてしまった…。許してくれ…」
「先輩…怖かった…」
トニーの背中に手を回したペッパーだが、その背中は小さく震えているではないか。ちらりと顔を上げると、トニーの目は涙で光っている。ペッパーの視線に気付いたトニーは、乱暴に袖で顔を拭うと頬にキスをした。
「俺がずっとそばにいる。だからもう大丈夫だ。それと…」
ナターシャたちの方を振り向いたトニーは、怒りに満ちた顔を三人に向けた。
「ペッパーをこんな目に合わせた奴は誰だ!ぶっ殺してやる!」
トニーの口から恐ろしい言葉が飛び出し、ペッパーは思わず声を上げた。するとそれまで黙っていたクリントが、トニーに近づくと肩を叩いた。
「トニー、落ち着けよ。あいつらなら俺が…」
口ごもったクリントをチラリと見たナターシャは、ため息をつくと言葉を続けた。
「クリントったら、あの子たちに向かって得意技を披露したの。あの子たち、怖がって大変だったんだから…。それと、あのロジャース先輩が!トイレの壁を壊したんだから!でも、ペッパーにしたことを考えたら、当然の報いよね。あ、安心して。さすがに先生もうやむやにはできないわよね。警察に通報して、あの子たちは捕まったから…」
クリントの得意技と聞いて思い浮かんだのは、彼はアーチェリーで何度も優勝していること。それに、トイレの壁を壊したというスティーブは、一体何をしたんだろう…と、トニーとペッパーは思わず顔を見合わせた。
「ところで、トニー。大丈夫なのか?」
明らかにパーティーか何かに行っていたのだろう。トニーは頭を搔くとペッパーの背中を撫でた。
「あぁ…。親父とお袋に駆り出されてNYにいたんだけど…。大事な人の一大事だと言うと、二人とも大慌てで…。とっとと帰れと飛行機を出してくれたんだ」
そこへ、買い物へ行っていたのだろう。ペッパーの母親が紙袋を抱えて戻ってきた。
ペッパーの横に座り背中を撫でている見知らぬ男の子に気付いた母親は、パッと顔を輝かせた。飛び上がったトニーは、ベッドサイドに直立不動すると、母親に向かって頭を下げた。
「初めまして。トニー・スタークーです。ペッパー…いえ、ヴァージニアさんとお付き合いさせて頂いてます。今までご挨拶せずにすみません…」
嬉しそうに笑みを浮かべた母親は、トニーに駆け寄ると手を取った。
「まぁ、あなたがヴァージニアの?いつもお世話になってます。ヴァージニアったら、かっこいい男の子を捕まえて!やるわね!」
「ママ…何で分かったの?」
両親にはトニーのことはおろか、彼氏ができたことを話していないのに…と、目を白黒させていると、母親はニヤっと笑った。
「あら?私はあなたの母親よ?言われなくても、あなたの様子を見てたらいい人ができたってことくらい分かるわよ?」
ところで…と切り出した母親は、トニーを椅子に座らせると根掘り葉掘り聞き始めた。それを見たナターシャたちは、ペッパーに手を振るとこっそりと帰って行った。
すっかり母親と打ち解けているトニーを見たペッパーだが、トニーがそっと自分の手を握りしめたのに気づき、温かく大きな手を握り返した。

⑧107.求愛

高校生パロ。2月のお話。ペッパーちゃんをいじめてごめんなさい…

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