Day 2  (Sunday, August 22): meeting pepper’s family

恋人になって初めての感謝祭は、ペッパーの実家で迎えることになった。というのも、ポッツ家では感謝祭やクリスマスなど、季節ごとのイベントに、親戚中が集結するというのだ。勿論ペッパーも帰らなくてはならない。だが、トニーとも離れたくない…。そこでペッパーは考えた。それならトニーも連れて行けばいいのではと…。家族の集まりなのに…と、最初は渋っていたトニーだったが、ペッパーの熱意に負けたこと、そして恋人になったのだから彼女の両親にはきちんと挨拶をすべきだと考え直したトニーは、結局は彼女に同行することにした。

「…で、何でコイツがいるんだ?」
大歓迎されるかと思いきや、それは大間違いだった。車から降りた瞬間、彼女の父親から浴びさられた言葉に、さすがのトニーも閉口してしまった。
「パパ、トニーは私の大切な恋人なの。紹介したいからって電話で何度も話したでしょ?」
ペッパーは溜息を付いた。数ヶ月前にトニーと恋人になったことは、両親に電話で報告済みだ。母親は最初から味方をしてくれていたが、トニーの悪い噂ばかり信じている父親はずっと反対していたため、この反応はある程度想定内だった。
父親はトニーを毛嫌いしているが、ペッパーには秘策があった。父親の末の弟であるモーガン・ポッツは、ポッツ家の親戚一、変わっている叔父さんだ。だが、彼はトニーの大ファンなので、きっと歓迎してくれるはず。あの叔父には父も甘いので、モーガン叔父さんが説得してくれれば、父親も何も言えなくなるだろうと、ペッパーは目論んでいたのだ。
が、いつもは賑わっている庭に、1台も車が停まっていないではないか。
「ところでみんなは?」
「お前がコイツを連れてくるというから、今年は中止した」
ペッパーは思わず叫びそうになった。モーガン叔父さんという必殺技を繰り出そうとしていたのに、これでは計画が全ておじゃんだ。見るからに落胆している娘を勝ち誇ったように見つめたポッツ氏は、黙ったままのトニーに向かって小さく唸った。
「お前を泊める部屋はない。さっさと帰れ!」
追い払うように手を振っている父親を、ペッパーは非難するように睨みつけた。
「パパ!酷いわ!」
キィっと叫んだペッパーは、目を三角にすると、父親に反論しようとしたのだが……。

「あなた!!!!どうしてトニーを虐めてるの!!!!!!!」
ペッパーによく似た声の罵声に、トニーとポッツ氏はその場で飛び上がった。そして先程までの威勢はどこへやら、急に借りて来た猫のように縮こまったポッツ氏は、ビクビクと辺りを見渡した。すると玄関のドアが外れそうな勢いで開くと、ポッツ夫人が姿を表した。怒り露わに夫に近づいた夫人は、大声で捲し立て始めた。
「何度も話したでしょ!トニーはヴァージニアが選んだ大切な人なのよ!それなのにあなたはヴァージニアの大切なトニーを追い払おうっていうの?!!!最低ね!私はトニーを歓迎するわ!そんなにトニーのことが気に入らないなら、今日はあなたが外で寝てちょうだい!!!!!」
「い、いや……その……」
モゴモゴと口籠もったポッツ氏はおろか、あまりの迫力に、ペッパーもトニーも呆気に取られてしまった。
ふぅと深呼吸をした夫人は、満面の笑みを作ると、今度はトニーの元に向かった。そして珍しく何も言えず固まったままのトニーに抱きつくと、頬にキスをし始めた。
「トニー!会いたかったのよ!ヴァージニアからあなたの話は何年も聞いていたし、ようやく恋人になったって聞いて、安心したのよ!だから今日はあなたに会うのを楽しみにしてたの!外野がいるとあなたと話が出来ないから、パパが風邪を引いたことにして、親戚には来るなって言っておいたから、大丈夫よ!さあ、入って!あ、それから、私のこと、母親だと思って、何でも言って頂戴!」
ポカンと口を開けたままのトニーの手を引っ張り、ポッツ夫人は家の中に入って行った。

結局、ポッツ夫人の有無を言わせぬ大歓迎もあってか、半日もするとポッツ氏もトニーのことをすっかり気に入った。そして帰る頃には『どうしてトニーのことをあんなに嫌っていたのだろうか…』と思うほど、意気投合していたとか…。

最初にいいねと言ってみませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。