The best thing my dad ever made.⑤

夢心地に聞こえていたペッパーの声がハッキリと聞こえ始め、トニーはゆっくりと目を開けた。
「気がついた?」
声の方に視線を向けると、ペッパーが左手を握りしめていた。何度か瞬きをしたトニーだが、身体中に襲いかかる痛みに小さく悲鳴を上げた。痛みは次第に激痛へと変わっていき、息も満足に出来ず、指先ひとつ動かせない。
何が起こったのだろうか…。ペッパーを守ろうとミサイルが直撃して、そのまま地面に墜落した記憶がある。即死しなかっただけマシなのかもしれないと無理矢理考えたトニーだが、いずれにせよ酷い状態に違いはない。

「けが……ないか……」
「えぇ、私は大丈夫よ」
涙の浮かんだ目元を拭ったペッパーは、トニーを安心させるようにニッコリと笑った。
ペッパーが無事だと知り、トニーは安心したように息を吐いた。次に考えねばならないのは、ここから逃げる術だ。
トニーは様子を探ろうと、視線を動かした。するとペッパーが首を振った。
「残念ながら逃げ道はないの。窓もないし、ドアも向こう側から溶接されてる。それに…部屋ごと生き埋めになったみたい」
「さいあくの…きゅうかだ…」
顔を顰めると、ペッパーは調子を合わせるように
「本当ね。2人きりには変わりないけど」
と、肩を竦めた。いつものようなやり取りにトニーは小さく口の端を上げたが、ペッパーは既に逃げることを諦めたのだろう。
「でも、最期の瞬間まで、あなたと一緒にいられるわ…」
と、大粒の涙を溢した。

自分はもう長くもたない。
だが、ペッパーだけでも逃さなくては…と、ぼんやりする頭で必死に考えたトニーは、ペッパーが自分が贈ったネックレスを身につけていることに気づいた。トニーとペッパーとモーガンの3人のイニシャル、そしてリアクターと同じ色のサファイアをあしらったネックレスは、先月のペッパーの誕生日にトニーが贈ったものだ。ペッパーには話していないが、このネックレスには秘密があった。
「ペッパー……」
「どうしたの?」
顔を近づけてきたペッパーに、トニーはゆっくりと左手を伸ばした。そしてネックレスのサファイアに触れた。するとピッっという小さな音と共に、サファイアが青く光り出したではないか。
「え……」
トニーの顔を見つめたペッパーは、すぐさま状況を把握した。
「もしかして………追跡装置を仕込んでたの?」
眉を吊り上げたペッパーに、トニーは気まずそうに瞬きをした。

⑥へ・・・

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