Day 1 8/3 : 5+1 times

2018年。
夫婦の誓いを立てると、トニーは妻になったばかりの最愛の女性にキスをした。
「これからは毎年、あっと驚くようなサプライズを用意する。楽しみにしておいてくれよ」
「サプライズはもうなしって約束したでしょ?」
眉を吊り上げたペッパーに、トニーはわざとらしく目を見開いた。
「知らないのか?私はサプライズ好きなんだ。特に君を驚かせるのが…」
グイッと顔を近づけたトニーは、素早く妻にキスをした。
「ということで…サプライズだ!」
ペッパーを車に押し込んだトニーは、町外れの森へ向かった。そして湖畔に立つ家に降り立つと、新居だとペッパーに紹介した。
ペッパーはこの家が一目で気に入った。歓声を上げたペッパーはトニーに抱きつきキスをした。新妻を抱き上げたトニーは、キスをしながら家の中に入った。

2019年。
初めての記念日は、娘が産まれたばかりということもあり、二人きりでゆっくりとは出来なかった。が、可愛らしい娘に二人は夢中だったし、娘が産まれたことが、何よりのプレゼントだとペッパーは思っていた。が、トニーはちゃんとサプライズを用意していた。
モーガンが寝静まると、トニーはペッパーに告げた。
「今年のサプライズは……いや、そんなにサプライズじゃないかもしれない」
そう前置きしたトニーは、ペッパーに鍵を渡した。
「車だ。モーガンを乗せても安全な車だ。ありきたりだな。私としたことが…全然サプライズじゃない…」
ショボくれているトニーだが、彼の気遣いがペッパーは嬉しかった。

2020年。
2回目の記念日。
モーガンも1歳になり、夜もゆっくり眠ってくれるようになった。2人きりでディナーというサプライズも考えたが、娘を置いて出かける気にもならず、トニーは家で出来るサプライズを考えることにした。
当日の夜。ペッパーの手を繋ぎ外に出ると、湖にボートが浮かべてあった。
「さぁ、乗って」
ペッパーをボートに乗せると、トニーは漕ぎ始めた。湖の真ん中までやってくると、トニーは漕ぐのをやめた。そして何やら取り出すと、ポンっと手を叩いた。するとボートの周りに青白く光るものがたくさん飛び始めた。ふわふわと浮かぶ光は二人を包み込み、まるで星が降ってきているような幻想的な世界に、ペッパーは感嘆の声を上げた。
「素敵ね…」
うっとりと見つめているペッパーの瞳は、光を反射しキラキラと輝いており、トニーは美しい妻の瞳に釘付けになった。
トニーはペッパーの手を引っ張ると、腕の中に閉じ込め、ボートの底に横になった。
「どうだ?気に入ってもらえたか?」
「ロマンティックじゃないあなたにしては上出来ね」
ふふっと笑ったペッパーは、首を伸ばすとトニーの唇を奪った。
二人は光の中で、いつまでもキスをしていた…。

2021年。
3回目の記念日。
2歳になった娘に手伝ってもらい、トニーは可愛らしいサプライズを用意した。
「ママ!はい!」
自分より大きなバラの花束を抱えたモーガンは、母親に差し出した。
「あら?綺麗ね。ありがとう、モーガン」
「いいのよ」
ニコニコ笑った娘を後ろにいたトニーが抱き上げた。
「ハニー、何か気づかないか?」
「え?」
花束の中を覗くと、写真があった。先日撮った家族写真だった。そしてその写真には、指輪が貼り付けてあった。オリーブグリーンに輝く宝石に、ペッパーは一目で魅了された。
「素敵ね…。ありがとう、トニー。何の宝石?」
指輪を嵌めたペッパーを抱き寄せたトニーは、頬にキスをした。
「ペリトッドだ。いつまでも幸せな夫婦で…という意味があるそうだ。結婚記念日にぴったりだろ?」
ペッパーはニッコリ笑うと頷いた。来年も幸せな日を送れますようにと願いながら…。

2022年。
4回目の結婚記念日。
ハッピーにモーガンを任せると、久しぶりに2人きりのデートに出かけた。
「まさか2人きりで過ごせるとは思わなかっただろ?」
「えぇ。2人で出掛けるのって、本当に久しぶりよね…」
娘が幼いこともあり、必ずどちらかが共にいようと決めていたが、せっかくの記念日なのだから…と、モーガンの『一番大好きなおじさん』であるハッピーが留守番を買ってでてくれたのだ。が、それでも2人は泊りがけのデートをする気にはなれなかった。そのためトニーは、家の近くの一軒だけ開いているレストランへ向かった。
レストランは賑わっていた。と言っても、4年前のような賑わいはなかった。
旨いディナーに舌鼓を打った2人は、すぐ近くの夜景の見える丘へと向かった。

遠くに見えるNYの街は暗く、以前のような明るさは見られなかった。
ペッパーは胸が苦しくなってきた。多くの人が消えた。地球の半分の人が消えた。当たり前が当たり前でなくなった世界…。
それでも自分にはトニーがいる、ハッピーもローディもいる。そしてモーガンという大切な存在も授かった。
自分たちは本当に運が良かったのだ…。
贅沢かもしれない。でもこの幸せがこれから先も永遠に続いて欲しい…。
ペッパーの願いは、トニーとモーガンとずっと幸せに暮らしていきたい…ただそれだけだった。
「ねぇ…来年も2人きりで過ごしたいわね…」
甘えるようにトニーの肩にもたれかかったペッパーは、夫の腰に腕を回した。
「モーガンもハッピーとお留守番できるようになったし…たまには昔みたいに恋人気分になるのって良くない?」
「そうだな…」
トニーは遠くを見つめた。
「来年は君がもっと驚くようなサプライズを用意しないとな…」

2023年。
5回目の記念日。
トニーは記念日のプレゼントだと、ペッパー専用のアーマーを渡した。
急にどうしたのかと尋ねると、トニーは寂しそうに、そして苦しそうに笑った。
「何かあった時のためだ…」
何かが起こる…そう感じたから、トニーはこれを渡したのかもしれない…。ペッパーの胸にどっと不安が押し寄せた。が、ペッパーは甘えるようにトニーに抱きついた。
「来年こそは…2人で過ごしましょうね…」
トニーは何も言わなかった。彼はただ黙って妻を抱きしめた。

2024年。
そして6回目の記念日を迎えた…。
「ねぇ…。今日は結婚記念日よ…。あなたのことだから…本当は…きっとサプライズを用意したかったでしょうね…」
小さく笑みを浮かべたペッパーは、トニーが好きなひまわりの花束を置いた。
「サプライズはもうなしよってずっと言ってたけど…本当はね、あなたのサプライズ、楽しみで仕方なかったのよ。とっくに知ってたでしょうけど」
無理矢理笑みを浮かべたペッパーは、鞄の中から娘の写真を取り出すと、立て掛けた。
「でも…もう…あなたのサプライズは…ないのよね…」
ポロポロ涙を零したペッパーは、冷たい石に手を置くと、泣き崩れた。

その時だった。
「ハニー…」
背後から声が聞こえ、ペッパーは顔を上げた。恐る恐る振り返ると、トニーが立っていた。目にしている光景が信じられないと口を覆ったペッパーに、笑みを浮かべたトニーは告げた。
「サプライズだ…。君の好きな…」
ゆっくりとペッパーに近づいたトニーは、立ち上がった妻を腕の中に閉じ込めた。
トニーの温もりがペッパーを包み込んだ。途端にペッパーは、一年近く胸の中に空いていた穴が、少しだけ塞がった気がした。
「私たちの…記念日なんだ…。2人きりでって…約束したろ?…だから毎年…ここで…待ってる……」
「うん……」
ペッパーは目を閉じた。いつまでもこの瞬間が続きますように…と祈った…。

我に返るとトニーはいなかった。が、ペッパーには聞こえた。
『ペッパー……愛してる……』
そう囁くトニーの声が聞こえた。
「来年も…2人きりで過ごすのを、楽しみにしてるわね…」
小さく笑みを浮かべたペッパーは、墓標のトニーの名前にキスをした。

4 人がいいねと言っています。

Day 1 8/3 : 5+1 times」への2件のフィードバック

  1. 初めまして。
    すごく素敵な小説で読むたびにドキドキしてます。
    トニペパにはず~っと幸せでいて欲しかった・・。
    もし良かったらR18のパスワード教えてください。
    私は1973年生まれのアラフィフです。

  2. もも様
    ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しい限りです。
    パスワードは、メールにて送信させていただきますね。

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