Kiss the Teacher~秋編2

いつしか、週末だけの逢瀬では満足できなくなった二人。
放課後、人目を避けるようにやって来るペッパーをトニーが部屋で抱くようになったのは、秋も終わり冬の足音が聞こえ始めた頃だった。
二人で並んで座り語り合っていたソファーは、いつの間にか逢瀬を楽しむ場所になっていた。

「ん…やぁぁ…も、もっとぉ…」
ソファーに腰掛けたトニーの上に乗り、腰を振るペッパー。その腰を両手で支え、下から突き上げるように動かしていたトニーだが、ペッパーが身体を仰け反らせると同時に中がギュッと締まり、二人は甘い声をあげて果てた。

後始末をして身なりを整えた二人だが、再びトニーの膝の上に腰掛けたペッパーは、甘えるように身体をすり寄せた。
「どうしたんだ?甘えん坊さんは?」
「帰りたくないの…」
帰ればまた明日までトニーに会えない…。少しでも長く温もりを感じていたいペッパーは、トニーの首筋にキスをしながらつぶやいた。
「早く卒業したいわ…。そうしたら、あなたと堂々と歩けるのに…」
「そうだな…」
重い空気を追い払うかのように、トニーはペッパーに囁いた。
「なぁ…。まだ時間あるだろ?」
囁きながら、トニーの手はペッパーのスカートの中に侵入していく。
目的の場所に到達した指は、自由に動き回り、湧きあがる感覚に我慢できなくなったペッパーは、トニーにキスをしながら囁いた。
「ねぇ…もう一回だけ…。お願い…」
「一回で終わる自信はないが…いいか?」
「もう…トニーったら…」
おかしそうに笑ったペッパーは、トニーのベルトに手を伸ばした。

その時…
「スターク、今いいか?」
ドアを叩く音と共に、ある男性教師の声がした。
クリント・バートン。
トニーよりも年上の音楽教師。
校長であるニック・フューリーがどこからともなく連れてきたこの男。
実は英語教師なのにロシア語が堪能なナターシャ・ロマノフと密かに付き合っているのだが…周囲に知れ渡っていることを本人たちは知らない。

鍵をかけているためこの状況を見られることはないが、問題はペッパーをどこに隠すかだ。
「と、トニー…、ど、どうしよう…」
真っ青になったペッパーは、トニーのシャツの裾を握りしめ、今にも泣き出しそうだ。
「とりあえず隠れろ。あいつは追い返す」
幸いにも部屋には少し大きめのロッカーがあり、その中にペッパーを隠すと、トニーは大きく息を吸い込んで鍵を開けた。
「何の用だ?」
年下なのに相変わらずな態度のトニーにバートンは苦笑した。だが、その間にも部屋のチェックは忘れない。
「ん?誰かいたのか?」
鋭い眼光がテーブルの上に置かれたかわいらしいカップに注がれた。
(しまった…。片付けるのを忘れていた…)
「タイミング悪かったか?」
ニヤニヤと笑うバートンをトニーは睨みつけた。
「何が言いたい?」
「いや、別に。ただ、スタークにはお気に入りのおもちゃがいるっていう噂だからな。お前に抱かれるのが大好きで、いつもお前の上で腰を振っているカワイイおもちゃが…」

部屋の中を歩き回っているバートンが、ペッパーの隠れているロッカーの方に行こうとしたのを見たトニーは、バートンの言葉を遮るように言った。
「いいのか?知ってるぞ?君とロマノフは、夜な夜な教室でヤッてるだろ?」

余計な詮索をするな、早く帰れ。
トニーの無言の訴えに気付いたバートンは、ドアに向かって歩き出した。

「大丈夫だ。誰にも言わない。俺たちの弱みを握っているお前のことを告げ口するつもりはない。お互い様だからな。ただ、気をつけろ。校長が薄々感づいている。まあ、あのハゲ親父は、気付いても何も言わないだろうが…。生徒に気付かれたら…お前だけじゃない。彼女も…」
ロッカーの方にチラリと目線を送ったバートン。
この男…やはり侮れない…。
作り笑いを浮かべたトニーは、バートンの肩を叩いた。
「忠告ありがとう」
「いいさ。妙な動きがあったら知らせてやるよ」

「ペッパー? もう大丈夫だ…」
ロッカーが開くと同時に、ペッパーはトニーに飛びついた。
「どうしようかと思ったわ…」
ロッカーの中は暑かったのだろう。真っ赤な顔をしたペッパーは、ハンカチで額に浮かんだ大粒の汗をぬぐった。
「それより、バートン先生って何者なの?」
「ああ、あいつは、とある国の諜報員で…ってそんなことを聞きたいんじゃないだろ?」
「…うん」
トニーはいつだって私のことをお見通し…。どうして分かっちゃうのかな…。悔しいけど、私が聞きたいのはそんなことじゃなかった。でも…もしそうだったらと思うと、怖くて聞けない…。

ペッパーが言葉を濁していると、気持ちを察したのか、トニーはペッパーを抱きしめた。
「言っておくが…俺は君のことをおもちゃだと思ったことは一度もない。君のことは、一人の女性として愛し敬っている。だから、もっと自信を持ってくれ。俺が君を選んだのだから…」
「うん…分かってる…」

やっぱり彼はすごい。
彼に抱きしめられると、私の心から不安なんて吹き飛んでしまうもの…。もっとそばにいたい…。ずっとそばにいて欲しい…。
卒業まであと半年…。

だが、この時の二人は知らなかった…。この後訪れる波乱に満ちた出来事を…。

番外編・嫉妬編/冬編へ続く

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