「かがみよかがみ。せかいでいちばんびじんなのはだれ?」
『それはエスト様です』
鏡の前でポーズを取る小さな主の問いかけに、ジャービスは気を利かせて答えたのだが…。
「じゃーびちゅ、いちばんはママよ」
あろうことか、彼女は怒り露わに足を踏み鳴らしているではないか。
折角気を利かせたのに…と言えるはずもなく、黙り込んでしまったジャーヴィスに、溜息をついたエストは小さく首を振った。
「あのね、じゃーびちゅ。びじんなのはママよ。えちゅとはね、せかいいちかわいいの」
彼女の言葉にジャーヴィスは昨夜の主一家の会話を思い起こした。
『白雪姫』の絵本を読み聞かせていたトニーは、娘に聞かれた。『せかいいちうつくちいのはだれ?』と。トニーとしては『もちろんペッパーだ!』と答えたかったのだろう。だが、可愛い娘を邪険にする訳にはいかない。考え抜いたトニーは、こう答えたのだ。『世界一の美人はママだ。世界一かわいいのはエストだ』と。両方の顔を立てたとトニーはご満悦だったが、その言葉をしっかり覚えていたエストは、ジャーヴィスの言葉を素直に受け止めなかったらしい。
両手を腰に当て頬を膨らませているエストの姿は、父親であるトニーにも母親であるペッパーにも似ており、子供心は難しいものだとジャーヴィスは思ったとか…。