本日1月31日は愛妻の日らしいので。
【トニペパとアベンジャーズメンバーから「愛妻家」と呼ばれるトニー】で書き始めたのですが、アベンジャーズAoUの予告編が頭から離れないせいか、あまり愛妻な感じではなくなってしまいました(^ω^;)
【もしIM3後にトニペパが結婚していて、NYへは危険だから…とペッパーはマリブでお留守番…という遠距離な夫婦生活だったら…】という設定でどうぞ。
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NYのマンハッタンにそびえ立つスタークタワー改め、アベンジャーズタワーには、今日もお馴染みの面々が顔を揃えていた。
リビングの中央で熱弁をふるっているのは、戦術担当となったキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。その周りを取り囲むように座った面々は、スティーブの演説を一応真剣に聞く振りはしている。
だが、今やアベンジャーズの資金源となっているトニー・スタークは違った。彼は1人輪から離れ、窓際で電話越しに誰かと話をしている。
「…ハニー、会いたいのは私も同じだ。だが、困ったことに、あのうるさいじいさんが待機していろと言って帰してくれない。…浮気?そんなものする訳ない。神に誓ってもいい!いや、まて。神様は目の前にいるか…。いいか、ペッパー、私には君だけだ。…あぁ、君が恋しくてたまらない。一人寝は嫌いだ。…そうだ、今夜帰る。大丈夫だ。朝までに戻ればいい。じいさんは鈍感だから気づかない。…あぁ、私もだ。愛してるよ…」
電話口にキスをしたトニーは電話を切ると、エレベーターに向かって歩き出した。
「用があったら連絡くれ」
手を振りながら姿を消そうとするトニーを、眉間に皺を寄せたスティーブが止めた。
「スターク、また抜け出す気か?昨晩もだろ?私が気づかないとでも思うのか?今朝方、帰って来たのを知っているぞ。いや、NYに来て毎晩だ。挙げ句の果てに今日の任務中、寝不足で欠伸をしていただろ?今は緊迫した状況なんだ。一瞬の隙が命取りになることもある。分かってるのか?」
顔を顰めるスティーブに、振り返ったトニーは肩を竦めた。
「おい、じいさん。私は既婚者だ。それも新婚だ。妻を毎晩抱きしめて寝たいと思うのは当然だろ?あぁ、じいさんは童貞だから分からないか」
からかうようなトニーにムッとした表情を浮かべたスティーブだが、二人の間には微妙な空気が流れている。二人の意見が合わないのは今始まってことではないのだが、その空気をいち早く感じ取ったブルースは、文句を言おうとしているスティーブを制するとトニーに声を掛けた。
「トニー、ペッパーもたまにはNYに連れて来たらどうだい?僕も久しぶりに会いたいな」
確かにブルースの言葉は正しい。いや、初めはトニーもペッパーを連れて来ていたのだ。それが次第に連れて来なくなったのだ。理由は言わないが、皆薄々気づいてはいた。いや、皆ではない。トニーのことを他の仲間よりは多少理解しているナターシャとブルースだけは気づいていたと言うべきだろうか…。
皆の視線が自分に集中していることに気づいたトニーは、ため息をつくと、重い口を開いた。
「確かにそうだ。連れてくればいい。できることなら、私だってそばにいて欲しい。だが、ここには連れてきたくない。最も妻は毎回一緒に行くと言うんだ。…だがな、私はペッパーを危険に晒したくない。ペッパーはマリブにいる方が安全だ…」
寂しそうに笑ったトニーは皆を見渡すと、エレベーターに乗り込み姿を消した。
「全く…」
呆れたように大きなため息をついたスティーブは、そばのソファーに腰を下ろした。
「まさかあのスタークがこんなに愛妻家になるとはなぁ…」
手元にあった水を飲み干したクリントは、大きく伸びをすると、隣に座るナターシャの膝を枕にして横になった。
「だが、国を守るためには何かを犠牲にしなくてはならない。スタークにはその覚悟が出来ていない」
真面目で実直なスティーブは、以前に比べると現代社会に馴染んできてはいるが、やはり愛国心ということになると昔から変わらない。彼とて最愛の女性はいた。だがあの時、彼は彼女の愛を犠牲にして国を守った。それは彼にとって当然のことだったし、そして今同じ状況になっても同じ選択をすると信じている。だが、トニー・スタークは違う。彼は彼女との愛を選択するかもしれない。それが世界を滅ぼすことになっても…。そのことがスティーブには理解できなかった。
だが、他の仲間は違った。その辺りが分かっている仲間は顔を見合わせた。
「それは違うよ、キャプテン」
重苦しい雰囲気を破ったのは、ブルースだった。
「トニーは分かってる。でも彼にとっての優先順位は、時として君とは違うんだ。でも、いざという時、彼は自分を犠牲にしてでも守り抜く。ほら、NY決戦の時のように…」
あの時トニーが見せた行動は、スティーブにとっては意外なものだった。自分勝手な男だと思っていたトニー・スタークが見せた自己犠牲ともいえるべき姿勢。あの瞬間、彼に対するイメージが変化したのは確かだ。
黙ったままのスティーブに、ナターシャは優しい声で語りかけた。
「あのね、スタークは彼女が傷つくことを最も恐れているの。彼にとって彼女は自分の世界で受け入れてる唯一の存在なの。もっとも、私達もここにいるってことは、少しは受け入れられてるみたいだけど。でも、彼が自分の命に変えてでも守りたいのは彼女だけなのよ。あのクリスマスの事件…覚えてるでしょ?」
ナターシャの言葉に思い出したのは、2年前のクリスマスの事件。あの事件でトニーは一度は全てを失った。最愛の女性すらも失いかけた。失った物は多かったが、得た物も多かったと笑っていたが、あの事件以来、トニーはペッパーが事件に巻き込まれることを酷く恐れているのだ。もう二度とあの時の思いをしたくないと…。
ソーは思い出した。彼もまた最愛の女性を失いかけたのだから…。だからトニーの気持ちが彼には痛いほど理解できた。
「そうだな。スタークの思いは分かる。ジェーンを危険な目に合わせたくないのと同じだ」
力強く頷いたソーに同調するかのようにクリントも頷いた。
「あいつはいざという時にやる男だ。だからキャプテン、心配するな」
それに続けとばかりに、スティーブの隣に座ったブルースは彼の肩をポンと叩いた。
「トニーの好きにさせてあげよう。きっと彼は大事な時には戻ってくるから…」
まだ腑に落ちないような顔をしているスティーブだが、ソーとブルースに言われたのだから仕方ない。やれやれと息を吐いたスティーブは、仲間を見つめた。
「そうだな。だが、一つだけ分かったことがある」
肩をすくめたスティーブは、わざとらしく眉を吊り上げた。
「それは、トニー・スタークは私が知る限り一番の愛妻家だということだ」
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全速力でマリブへ戻ってきたトニーは、アーマーを脱ぐとリビングへと続く階段を駆け上がった。
「ハニー!帰ったぞ!」
だが、前もって連絡していたにも関わらず、リビングにはペッパーの姿はなかった。
「ペッパー?…ハニー?」
もしや誘拐されたのでは…と、あらぬ考えが浮かんだトニーだが、セキュリティが厳重なこの家で、そんなことはないだろう。それに、何かあれば有能な電脳執事が知らせてくれるはずだ…と。頭を乱暴に振ったトニーは、寝室へと急いだ。
予想通り、寝室にペッパーはいた。
ベッドの上で本を読んでいたペッパーだが、トニーの姿を見ると駆け寄ってきた。
「おかえりなさい」
ひょいっと妻を抱き上げたトニーは、
「ただいま、ハニー。会いたかった」
と言うと、離れていた時間を埋めるかのように、そして自分の存在を刻みつけるかのように、啄むようなキスを繰り返した。
ペッパーとて、トニーと離れていたくない。出来るならずっとそばにいて彼を支えてあげたいと思っている。だから何度もNYへ一緒に行くと言った。だがトニーは拒んだ。今やアベンジャーズの本拠地となったタワーは危険だと言い、ペッパーを連れて行くことを拒んだのだ。そのためペッパーはトニーの意思を尊重して、マリブへ残ることになった。だが、不安だった。離れている間、彼に何かあったら…と思うと不安だった。それはトニーも同じな訳で、結局彼はNYに滞在している時も出来るだけ帰ってくるようになったのだが…。
「トニー、無理に毎晩帰って来なくてもいいのよ?疲れてるでしょ?」
今回トニーがNYへ向かったのは一週間前。そしてほぼ毎日こうやって帰って来ているのだ。さすがに疲労の色の濃い夫が心配になったペッパーは、目の下にできた隈に触れると眉を顰めた。
だが、トニーはいつものようにニヤリと笑うと、ペッパーの首筋に赤い花を散らした。
「大丈夫。そんなにヤワではない。それに君の顔を見たら疲れてなんか吹き飛んだ」
ニヤニヤと笑うトニーにつられ、ペッパーの顔にも笑みが浮かんだ。そんな妻の可愛らしい笑顔に胸の高まりが抑えきれなくなったトニーは、咳払いするとベッドに向かって歩き始めた。
「さあ、ハニー。今日は何があった?私はひどいもんだ。ワインでも飲みながら聞かせてくれ。だがその前に、しっかり妻孝行させてくれよ?つまり……な?分かるだろ?」
クスクスと笑ったペッパーは、嬉しそうにトニーの胸元に顔をすり寄せた。
「えぇ…」
ギュッと抱きついてきたペッパーの身体は一日の疲労感が吹き飛ぶ程優しくそして柔らかく、甘い香りを吸い込んだトニーは、キスをしながらそっと彼女をベッドに下ろした。
………
彼女だけは、もう二度と傷つけたくない。この存在だけは守ってみせる。それが例え、仲間を…世界中を敵に回すことになったとしても…。
だが、一番はやはり『アベンジャーズ』という存在が必要でなくなる日が来ることなのだろう…。
腕の中で眠ってしまったペッパーの素肌をすっと撫でたトニーは、彼女を逃がさないように硬く抱きしめると目を閉じた。