昔々あるところに、トニー・スタークという青年がいました。
17歳で超有名大学を卒業した彼は、父親であるハワードの経営する会社に入社しました。元々頭のいいトニーですから、入社と同時に頭角を現した彼は、数々のヒット商品…と言っても、スターク・インダストリーズは武器兵器を製造する会社ですからそういった物ですが…を生み出していったのです。そしてトニーは自分が作り出した物がヒットすることが嬉しくて、朝から晩まで仕事ばかりするようになっていました。
いつまで経っても仕事一筋な息子が心配になったのは、母親であるマリア。実は、トニーには一夜限りの女性が大勢いるのですが、幸か不幸かマリアはそのことを知りませんでした。
いつまでも独り身にさせておくわけにはいかない!と考えたマリアは、息子が好きそうな女性を秘書として送り込み始めました。ですが、何が気に入らないのか、トニーは見向きもしません。しかしそこはさすがトニーの母親。マリアも負けません。息子の元に片っ端からいろいろなタイプの女性を送りつけました。
もう何十人と送り込んだか分からなくなった頃でした。さすがのマリアも音を上げそうになり、これが最後と送り込んだのは、ペッパー・ポッツという女性でした。このペッパー、仕事はできますがどちらかというと大人しく地味で、派手好きな息子のタイプとは思えません。半分諦めモードのマリアでしたが、何ということでしょう!トニーはペッパーのことをすっかり気に入ってしまったのです!
これにはマリアも大喜び。これで孫の顔が見れるわと小躍りして喜びました。
一方のトニーとペッパーですが、お互いすっかり夢中になり、あれほど仕事熱心だったはずなのに、今では愛し合うのに夢中で何も手につかない始末。
納期が迫っているからと催促に行っても、「今忙しいんだ。見て分かるだろ?」と、目の前で愛し合い始めるのですから、催促に行った社員はハワードの元に飛んで帰ってくるばかり。
「お前が余計なことをするからだ」とマリアに零してみますが、当の本人は知らぬ顔。逆に「いいじゃないの!あなたはあの子に幸せになって欲しくないの?!ひどい父親ね!」と怒られる始末です。息子を叱咤しようと思えばできるのですが、仕事はきちんと納期内に納めますし、何だかんだ言っても可愛い一人息子です。幸せそうな息子を見ると、結局ハワードは何も言えなかったのです。
そんな矢先、事件は起こりました。
社の命運を掛けた一大プロジェクトを任せられていたトニーは、一応卒なく仕事を終わらせ、後はクライアントの前でデモンストレーションを行うのみとなっていました。ですが、デモンストレーション当日、会場にトニーは姿を現しません。何度電話しても繋がらず、約束の時間になっても現れない息子にしびれを切らせたハワードは、結局トニーの代わりにデモを行ったのですが、開発に直接関わっていたわけではないのです。細かいことは分かるはずがありません。それでもたどたどしくもデモを終えたハワードに、クライアントは「さすがスターク・インダストリーズですね」とその場で契約を結んだのでした。ですが、元々は次期社長であるトニーが開発担当ということを売りにしていたのですから、ハワードとしては面目丸つぶれです。
ということで、会場からトニーの家へ向かったハワードは、怒り露わに家に入っていきました。しかし、キッチンにもリビングにも二人の姿はありません。時刻は夕方です。もしかして…と寝室へ向かったハワードがドアを開けると、二人はベッドの上で愛し合っている最中でした。
突然父親が入ってきたのです。二人は慌てて身体を離すと、シーツの中に潜り込みました。
今まで少々のことは目を瞑り許してきたハワードでしたが、さすがに今回は限界でした。
「トニー!お前は何をしているんだ!」
シーツの中から息子を引っ張り出したハワードは、彼を殴りました。
「お前は仕事をほっとらかして何をしているんだ!オンナと遊んでばかりではないか!もう許さん!」
まさか今日がデモンストレーションの日だとは知らなかったトニーは青ざめました。部下からは明日の日付を告げられていたと父親に説明しますが、ハワードは聞く耳をもちません。秘書であるペッパーもトニーに非はないこと、スケジュール管理ができていなかったのは自分だと必死に弁解しますが、ハワードはトニーに服を着させると、彼を車に押し込みました。
「お前たちはもう二度と会ってはならぬ!」
泣きながら縋り付くペッパーを突き飛ばしたハワードは、そのまま車を発進させました。
トニーは見知らぬ屋敷へと押し込まれました。外部との連絡も一切取ることは許されず、もちろん屋敷の外へ出かけることもできません。いわゆる軟禁状態です。せめてメールだけでもさせて欲しいと懇願しましたが、ハワードは首を縦に振りませんでした。
その日から、トニーは持ち込まれた仕事だけを黙々とこなしていくだけの生活が始まりました。ですが、元々社交的なトニーなのですから、そんな生活は三日で飽きてしまいました。それでもあの日の父親の誤解を何とか解こうと、そして失われた信頼を何とか回復させようと、トニーは与えられた仕事を必死でやりました。そんな息子の姿に、一週間も経った頃にはハワードも二度と会わせないと言ったのは間違いだったかもしれないと思うようになりました。ですが、あれだけ啖呵を切ったのですから、今さら一緒に暮らしていいというのはどうもバツが悪いのです。マリアが知れば「あなたの気持ちなんてどうだっていいの!」と怒りそうですが、生憎トニーの居場所もペッパーの居場所もハワードのみが知っているため、マリアはこの件に関しては悔しいかな手出しができないのでした。ですが、やはりハワードも親です。自分の気持ちを押し殺している息子が可哀想になったのです。
そんなある日、トニーが目を覚ますと枕元にハワードがいました。父親が会いにくることは仕事以外ないためトニーは驚きました。戸惑う息子にハワードは何ヶ月ぶりかの笑顔を見せました。
「トニー、今日は一日休め」
そう言うとハワードはドアを開けました。ドアの外に誰かいるのに気付いたトニーですが、それが誰か気付いた彼はベッドから飛び起きると抱きしめました。そう、そこにいたのはペッパーだったのです。
「親父…でも…」
二度と会えないと思っていたのにと困惑するトニーにハワードは微かに笑みを浮かべました。
「一年中仕事ばかりでは可哀想だ。だから1年に1回、7月7日には会わせてやる。ただし、二人ともきちんと仕事をしていたら…だ。少しでも怠けていたら、もう二度と会わせないからな」
そう言うと、ハワードは部屋を出て行きました。
残された二人は、1年分の想いをぶつけるかのように、一日中抱き合っていました。
翌年の7月7日。
呼び鈴が鳴ると同時に玄関を開けたトニーは驚きました。目の前にはペッパーがいるのですが、その腕には何か抱えてます。目を見開いてぽかんとしているトニーに、ペッパーは恥ずかしそうに腕の中のものを渡しました。
「あ、あのね…赤ちゃんが…」
一瞬何のことだか分からなかったトニーでしたが、抱きしめている小さな男の子が自分の息子であること、そしてそれはペッパーが授けてくれたことを理解すると、歓声を上げてペッパーを抱き締めました。
さすがに子供が生まれたとあっては二人を引き離しておくわけにはいきません。ですが、ペッパーと結婚し父親になったトニーは、より一層仕事に打ち込むようになったのでした。
★★★
「七夕のお話を聞いてね、パパとママで考えたんだけど…よく分かんなくなっっちゃった…」
自作の小説を持ってきたアビーは、首を傾げながら文句を言っている。
「そうよね、パパとママは1年に1回しか会えないなんて無理よね」
妹の大作を読んだエストは苦笑い。そう、四六時中寄り添っている両親に1年に1度きりの逢瀬なんて到底無理だろう。
「うん、だってね、もしパパが彦星でママが織姫でもね、パパは天の川を毎日渡れるアイアンマンを作ってママに会いに行くよ!」
両手を広げて嬉しそうに言う妹にそうよねと同意したエストだったが、こんな小さな娘にも見抜かれているなんて、パパもママも分かりやすいわよね、と気づかれないようにため息をついたのだった。
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書いているうちに方向性を完全に見失ってしまったのがとてもよく分かる七夕SSです^_^;
彦星トニーが悪天候の空を見てソーにどうにかしろと喚いたり、天の川を渡るスーツを開発するというネタもいれるはずが…入ってない…