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Shame

LAのディズニーホールに一台の車が横づけされた。白のAudiR8から降り立ったのは二人の男女。
彼らに気付いたマスコミが一斉にカメラを向けた。
アルマーニのタキシードに身を包んだ男性は、白のトム・フォードのドレスに身を包んだ女性の手を握ると、カメラに向かってVサインをした。
「スタークさん、ミス・ポッツ、ご婚約おめでとうございます」
投げかけられる質問に、ペッパー・ポッツはカメラに向かって微笑みかけた。
「ありがとうございます」
髪を掻き分けたペッパーの指に光る物を女性レポーターが目ざとく見つけた。
「それはエンゲージリングですか?」
その言葉にトニー・スタークは婚約者であるペッパーの手を取ると、指輪にキスをした。
「そうだ。知ってのとおり婚約したんだ」
カメラに向かい突きだされた指輪。眩い光を放つ指輪にその場にいた女性レポーターたちはため息をついた。バンドの全周にはダイアモンドが散りばめられ、中 央の大きなブルーサファイアは、トニーの胸に光るリアクターと同じ輝きを放っていた。

「結婚式はいつですか?」
「お子さんはまだですか?」
次々と投げかけられる質問を笑顔でかわすと、二人は腕を組んで会場へと入って行った。

今日はスターク社主催のチャリティーパーティー。
各界の著名人の集まったホール。人々は主催者であるスターク・インダストリーズのCEOトニー・スタークの到着を待っていたのであろう、二人が会場に入る と、皆一斉に拍手を始めた。
ペッパーの腰に手を回し、部屋を歩いていたトニーだが、ステージ上にいる司会者に呼ばれると、
「すぐに戻ってくる」
とペッパーの頬にキスをし、ステップを踏みながらステージへ向かった。

「お集まりのみなさん、今日は…」
軽快なトークで場を盛り上げるトニー。ステージの脇に移動したペッパーはその様子をニコニコと見つめていた。
だが、トニーの正面に立っている女性陣が顔を赤らめ何やらクスクスと笑っているではないか。
(何かあったのかしら?)
その笑い声に気を良くしたトニーはますます饒舌になり、スピーチが終わり乾杯の合図がある頃には、会場内は笑いの渦に包まれていた。

ステージから降りたトニーは、ペッパーの元へ急いでやって来た。
「どうだった?」
腰に手を回したトニーは、ペッパーの身体を引き寄せると、唇に軽いキスをおとした。
「あら?あなたにしては上出来だったんじゃない?」
「だろ?」
ニヤリと笑ったトニーはペッパーを抱き寄せたまま歩き出した。
途中、二人の婚約を祝う人々に声を掛けられながら、しばらく会場を歩き回っていた二人だが、
「すまん、トイレに行ってくる」
ペッパーの耳元でつぶやいたトニーは、会場を出て行った。

一人になったペッパー。何か食べようとテーブルに向かっていたペッパーの元へ、スターク社の広報担当の社員が顔色を変えてやって来た。
「ミス・ポッツ…あの…今、よろしいですか?」
「どうしたの?」
「ここでは…」
そう言うと、会場の外へペッパーを連れ出した社員。
周りに人がいないことを確認した彼は、
「あ、あの…社長は?」
と小声でペッパーに尋ねた。
「トニー?彼ならお手洗いに行ったわよ?」
状況がさっぱり分からないペッパー。不思議そうな顔をしているペッパーに、男性社員は自分の携帯を恐る恐る差し出した。
「5分前の記事です。言いにくいんですが…社長の…その…」
顔を赤らめた社員。受け取った携帯を見たペッパーは言葉を失った。

「や、やだ!!!!」

携帯にはゴシップ紙のサイトが表示されているのだが、それは先ほどの自分たちの写真と、そしてステージで挨拶するトニーの写真が掲載されており…
『トニー・スターク、チャリティーイベントでスタークJr全開』
という下品な見出しが踊っているではないか。
そしてご丁寧にも、股間のアップの画像まで掲載されており…よく見ると、隙間から見えているのは…間違いなく彼が今日履いている黒のトランクスで…。(黒 だから目立たないと言えばそうなのだが…)

「トニーったら!!!!」
怒りで携帯をへし折りそうになったペッパー。携帯を社員の手に押し付けると、急いでトニーのいるトイレへと向かった。

幸いにもまだトニーは出てきていないようだ。
ドアの前で仁王立ちしたペッパーに、周りの人々は何事かと思いつつもあまりの迫力に急いでその場を立ち去った。

トニーを待つ間、会場に到着するまでを思い返すペッパー。
今日は休みだったので、昼前まで愛し合っていた二人。そろそろ準備を…と動き始めたのがお昼過ぎ。
その後シャワーを浴びていたらトニーが乱入してきて、そこで1時間ほど過ごしてしまい、慌てて用意をし始めたのが14時過ぎ。キスマークを隠すのをトニー に手伝ってもらいながら、ペッパーの支度が整ったのが16時近く。16時半にトニーの運転する車で家を出発して…。

(家を出る前にお手洗いへ行っていたから…もしかして…その時からずっと?!じゃあ、さっきのスピーチの間、彼の正面に立っていた女の子たちが笑っていた のも…パンツが見えていたの?!ヤダ!私以外見ちゃダメなのに…って、そういうことじゃないわ!)

ペッパーが赤くなったり青くなったりしていると…
「ペッパー?どうしたんだ?」
顔を上げると、トニーが目の前にいた。
「何だ?出待ちか?そんなに私と離れるのが…」
冗談めかして言うトニーをカッと睨みつけたペッパーは、トニーの足元へ屈むと、太腿を掴んだ。
これにはさすがのトニーも驚き、慌ててペッパーを引き離そうとした。
「お、おい!ペッパー!いくら私が欲しいからと言って、こんなとこ…」
「違うわよ!チャックよ!ズボンのチャック!!閉まっているか確認してるの!!」
「は?」
チャックが閉まっていることを確認したペッパーは立ち上がると、携帯を差し出した。
「トニー、大変よ。あなたの下着が世界中に配信されたわ」
訳が分からないよ…と変な顔をしたトニーだが、差し出された携帯を見ると、みるみるうちに顔色が変わっていった。
「ど、どういうことだ?!」
真っ赤になったトニーにペッパーは白けた視線を送った。
「そういうこと。あなた、家を出る前にトイレに行ったでしょ?その時閉め忘れたんじゃない?ここに到着した時も、ステージでスピーチしている時も、ゲスト のみなさんに挨拶している時も…ずーっとあなたの『社会の窓』は開いていたってことよ」
ペッパーの言葉に、さらに真っ赤になったトニーは頭を抱えた。
「ペッパー…どうすれば…」
「知らないわよ。もう世界中に知れ渡っているわ!」
口を尖らせたペッパーに、トニーは気付いた。
(さては、ペッパーが怒っているのは…)
立ち直りが早いというか、そういう気恥ずかしさはすぐに忘れてしまうのはさすがというか、ニヤリと口角をあげたトニーは、ペッパーの肩を抱き寄せ歩き出し た。
「そうだよな。済んだことを嘆いても仕方ない。だが、すまなかったな。私の下着を見てもいいのは君だけなのを忘れていたよ。もう帰ろう。家に帰ってゆっく り…」
トニーの言わんとしていることを理解したペッパーは、顔を赤らめ文句を言おうとした。
その口をキスで封じ込めたトニーは、ペッパーの腰を抱き寄せると入口へ向かった。
「おそらくパーティーの客には、この件は知れ渡っているだろうから。恥ずかしさのあまり帰ったと言えばいいさ。帰ったら思う存分見てくれよ、私の下着姿 を。それとも、何も着ていない…」

「と、トニー!!!!」

真っ赤になって悲鳴をあげるペッパーを車に押し込むと、トニーは颯爽と会場を後にした。

元ネタは、社長の中の人のIM3韓国レッドカーペットでの全開事件です。

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