「Pepperony Week 2021」カテゴリーアーカイブ

Day 2  (Sunday, August 22): meeting pepper’s family

恋人になって初めての感謝祭は、ペッパーの実家で迎えることになった。というのも、ポッツ家では感謝祭やクリスマスなど、季節ごとのイベントに、親戚中が集結するというのだ。勿論ペッパーも帰らなくてはならない。だが、トニーとも離れたくない…。そこでペッパーは考えた。それならトニーも連れて行けばいいのではと…。家族の集まりなのに…と、最初は渋っていたトニーだったが、ペッパーの熱意に負けたこと、そして恋人になったのだから彼女の両親にはきちんと挨拶をすべきだと考え直したトニーは、結局は彼女に同行することにした。

「…で、何でコイツがいるんだ?」
大歓迎されるかと思いきや、それは大間違いだった。車から降りた瞬間、彼女の父親から浴びさられた言葉に、さすがのトニーも閉口してしまった。
「パパ、トニーは私の大切な恋人なの。紹介したいからって電話で何度も話したでしょ?」
ペッパーは溜息を付いた。数ヶ月前にトニーと恋人になったことは、両親に電話で報告済みだ。母親は最初から味方をしてくれていたが、トニーの悪い噂ばかり信じている父親はずっと反対していたため、この反応はある程度想定内だった。
父親はトニーを毛嫌いしているが、ペッパーには秘策があった。父親の末の弟であるモーガン・ポッツは、ポッツ家の親戚一、変わっている叔父さんだ。だが、彼はトニーの大ファンなので、きっと歓迎してくれるはず。あの叔父には父も甘いので、モーガン叔父さんが説得してくれれば、父親も何も言えなくなるだろうと、ペッパーは目論んでいたのだ。
が、いつもは賑わっている庭に、1台も車が停まっていないではないか。
「ところでみんなは?」
「お前がコイツを連れてくるというから、今年は中止した」
ペッパーは思わず叫びそうになった。モーガン叔父さんという必殺技を繰り出そうとしていたのに、これでは計画が全ておじゃんだ。見るからに落胆している娘を勝ち誇ったように見つめたポッツ氏は、黙ったままのトニーに向かって小さく唸った。
「お前を泊める部屋はない。さっさと帰れ!」
追い払うように手を振っている父親を、ペッパーは非難するように睨みつけた。
「パパ!酷いわ!」
キィっと叫んだペッパーは、目を三角にすると、父親に反論しようとしたのだが……。

「あなた!!!!どうしてトニーを虐めてるの!!!!!!!」
ペッパーによく似た声の罵声に、トニーとポッツ氏はその場で飛び上がった。そして先程までの威勢はどこへやら、急に借りて来た猫のように縮こまったポッツ氏は、ビクビクと辺りを見渡した。すると玄関のドアが外れそうな勢いで開くと、ポッツ夫人が姿を表した。怒り露わに夫に近づいた夫人は、大声で捲し立て始めた。
「何度も話したでしょ!トニーはヴァージニアが選んだ大切な人なのよ!それなのにあなたはヴァージニアの大切なトニーを追い払おうっていうの?!!!最低ね!私はトニーを歓迎するわ!そんなにトニーのことが気に入らないなら、今日はあなたが外で寝てちょうだい!!!!!」
「い、いや……その……」
モゴモゴと口籠もったポッツ氏はおろか、あまりの迫力に、ペッパーもトニーも呆気に取られてしまった。
ふぅと深呼吸をした夫人は、満面の笑みを作ると、今度はトニーの元に向かった。そして珍しく何も言えず固まったままのトニーに抱きつくと、頬にキスをし始めた。
「トニー!会いたかったのよ!ヴァージニアからあなたの話は何年も聞いていたし、ようやく恋人になったって聞いて、安心したのよ!だから今日はあなたに会うのを楽しみにしてたの!外野がいるとあなたと話が出来ないから、パパが風邪を引いたことにして、親戚には来るなって言っておいたから、大丈夫よ!さあ、入って!あ、それから、私のこと、母親だと思って、何でも言って頂戴!」
ポカンと口を開けたままのトニーの手を引っ張り、ポッツ夫人は家の中に入って行った。

結局、ポッツ夫人の有無を言わせぬ大歓迎もあってか、半日もするとポッツ氏もトニーのことをすっかり気に入った。そして帰る頃には『どうしてトニーのことをあんなに嫌っていたのだろうか…』と思うほど、意気投合していたとか…。

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Day 1 (Saturday, August 21): high school/college au

M.I.T.に通う学生に『一番有名な学生は?』と聞けば、誰もが口を揃えてこの人物の名を挙げるだろう。
トニー・スターク。
世界屈指の大企業であるスターク・インダストリーズの跡取り息子。知的でハンサムな彼は、明るくユーモアに富んでおり、非常にモテた。毎日誰かに告白されているのに、彼は全て断っていた。女性に興味がない堅物…と言いたいところだが、そうではない。特定の恋人はいないが、パーティーで知り合った一夜限りの女性は山のようにいるのだ。親友のジェームズ・ローズことローディー曰く『M.I.T.にある紙を使い切っても一夜限りの女性の名前は書ききれない』らしい。
どうして一人の女性を愛せないのかと、ローディーはトニーに聞いてみた。するとトニーは肩をすくめた。
「忘れられない人がいるんだ」
トニーが忘れられない女性…それは彼が幼い頃、親友だった女の子。『ペッパー』という愛称の、そばかすの可愛い赤毛の女の子だ。小学校へ上がる前に、その子は引っ越してしまい、それ以来音信不通になってしまったらしいが、毎日のように共に遊んでいた彼女といる時だけは、トニーは幼いながらに心が安らいだのだ。
「向こうもさ、俺のこと好きだって言ってくれたんだ。だから結婚の約束もしたんだ。おもちゃの指輪をプレゼントした」
真面目くさった顔で頷くトニーに、ローディーは吹き出した。あのトニー・スタークが初恋の彼女を忘れられないというのだ。子供の約束を信じ、今でも彼女のことを思っているのだから、ローディーは笑いそうになった。が、トニーに思いっきり睨まれると慌てて咳払いした。

そんなある日のこと。
講義を終えたトニーは家に戻ろうと校内を歩いていた。すると目の前からアルドリッチ・キリアンが歩いてきた。A.I.M.の跡取り息子である彼は、何かにつけてトニーを目の敵にしていた。最も、あらゆる面において、トニーの方が何歩もリードしているのだが…。
いつもは仲間と連れ立っているキリアンだが、今日は一人の女性と一緒だった。キリアンは鼻の下を伸ばして女性の肩を抱こうとしたが、彼女はあからさまに嫌がっており、その手をするりと交わしていた。
何故か見覚えがあるその女性から、トニーは目が離せなくなった。一夜限りの女性は名前も顔も覚えていないトニーだが、目の前にいる女性はそういう類の女性ではない。彼女の瞳はずっと昔から知っている気がした。
(もしかして……)
心当たりのある名前を口に出そうとしたトニーだが、視線に気づいたキリアンが嫌そうに唸った。
「スターク 、ジロジロ見るな」
すると女性がトニーを見つめた。何度か瞬きをした彼女は、パッと顔を輝かせた。
「トニー?!」
「…ペッパー?」
やはりそうだ。幼馴染のペッパー・ポッツ。トニーが密かに思い続けていた初恋の彼女だ。
こんな所で十数年ぶりに…しかも同級生の恋人として再会するとは、何たる奇跡なのだろう。立ちすくむトニーだが、駆け寄ってきたペッパーは彼に抱きついた。
「トニー!久しぶりね!会いたかったわ!!」
トニーにぎゅーぎゅー抱きついたペッパーの眼中には、もはやキリアンの姿はないようで、積もる話があるからと、ペッパーはトニーをランチに誘った。
するとキリアンは、顔を真っ赤にして怒りだした。
「おい、ヴァージニア。これから俺と…」
「幼馴染に再会したのよ?」
キリアンの言葉を遮ったペッパーは、彼を睨みつけた。そしてトニーの手を握ると、呆気に取られているトニーを引っ張って、近くのカフェに向かった。

「良かったのか?」
席につきランチを注文したトニーは、ペッパーに尋ねた。すると彼女はニコニコと笑みを浮かべた。
「ええ。あなたと再会したんですもの。それに、恋人じゃないの」
「は?」
目をパチクリさせるトニーに、ペッパーは溜息を吐いた。
「付き合ってくれと言われたけど、断ったのよ。でも、しつこくって…。だからお友達から始めましょうって言ったのに、すっかり恋人気取りで困ってたの」
肩を竦めたペッパーに、トニーは神妙な顔をして頷いた。
「あいつは勘違い野郎だから、あり得るな」

それから2人は、お互いの近況を話した。
ペッパーはハーバードに通っており、偶然にもトニーの家の近くに下宿していると分かった。

連絡先を交換した2人は、それから時折ランチやディナーをするようになった。次第に10年以上心に秘めていた想いが蘇ってきた2人だが、幼馴染という関係から一線を越えられずに数ヶ月が経過した。

そんなある日のこと。
授業も終わり友達とランチに向かおうとペッパーがキャンパスを出ると、目の前に車が止まった。一体何事かと思っていると、キリアンが血相を変えて降りてきた。
「どうしたの?」
いつになく慌てふためいたキリアンは、
「ヴァージニア、大変だ!」
と、叫ぶとペッパーの肩を掴んだ。以前強引に車に乗せられ、デートに連れて行かれたことを思い出したペッパーだが、その時のキリアンとは違い、彼は青い顔をして取り乱しているではないか。
「落ち着いて」
何度か告げると、キリアンは深呼吸をした。そして、ペッパーをじっと見つめると、意を決したように口を開いた。
「落ち着いて聞いてくれ。スタークが…病院に運ばれた」
「え……」
トニーが病院に運ばれた…。それもキリアンの様子から考えると、大変なことになっているに違いない…。

真っ青になったペッパーは、ガタガタ震え始めた。その腕を支えたキリアンは、ペッパーを助手席に押し込むと、車を発進させた。

車内でキリアンはペッパーに説明し始めた。

実習中に、とある生徒が作ったロボットが暴走し始めた。皆が逃げ惑う中、トニーはロボットを何とか止めようと奮闘し、大怪我をして病院に運ばれたというのだ。トニーは意識不明の重体で、それならば早くペッパーに知らせなければと、キリアンは急いで迎えに来たと言うのだ。

「でも…どうして……」
キリアンはトニーのことを嫌っているはずだ。それなのに、何故キリアンは知らせに来てくれたのだろうか…。
ペッパーの戸惑いに気づいたキリアンは、彼女にチラリと視線を送った。
「スタークのことが好きなんだろ?」
ペッパーが息を呑んだ。そんなペッパーにもう一度視線を送ったキリアンは、先程よりも明るい声で話し始めた。
「俺は君のことが好きだ。だからずっと君のことを見てきた。だから君の気持ちにはとっくに気づいていたさ。それなのに、どうして俺がこんなに親切なのかって思ってるだろ?確かに俺はスタークのことを目の敵にしてきた。何かにつけて昔から比べられるのが、俺は嫌で仕方なかった。だけど、あいつがいるから俺は負けないように頑張ろうって思えるんだ。あいつが死んだら、ライバルがいなくなって困る」
素直に言いたくないのだろうが、結局のところ、キリアンもトニーのことが心配でならないのだろう。小さく頷いたペッパーは、キリアンを見つめると頭を下げた。
「ありがと、キリアンくん」
そう告げると、キリアンは照れ臭そうに鼻の頭をかいた。

病院へ到着したのは、丁度手術が終わった頃だった。
眠り続けるトニーの手を握りしめたペッパーは、頬にそっとキスをした。
「トニー、そばにいるわ…」

翌日、家に戻ったペッパーは宝石箱を取り出した。そして一番奥に大切にしまっていたおもちゃの指輪を手に取ると、十数年前のあの日のことが鮮明に蘇ってきた。


「ペッパーってさ、かわいいから、ぼくのおよめさんにしてあげるよ」
「ホント?あたしもトニーのことだいすきだから、トニーのおよめさんになりたい!」
すると、トニーがポケットから指輪を取り出した。おもちゃの指輪には、ブルーの宝石が付いており、キラキラ光るその指輪は、幼いペッパーから見ても、美しかった。
「パパがいってたんだ。たいせつなひとには、ゆびわをあげたらいいって。パパもママにいつもあげてるんだよ。だから、これはぼくからペッパーへのプレゼント」
「ありがと!」
頬にチュッとキスをしたペッパーは早速指輪をはめてみた。
「いつおよめさんにしてくれるの?」
するとトニーはニヤリと笑った。
「おおきくなったら!パパみたいな、りっぱなひとになったら、ペッパーのこと、むかえにいくからね!」
「うん!やくそくよ!」

あの時はピッタリだった指輪も、今では小さくて入らない。だが、どんな高価な物よりも、この指輪はペッパーにとって世界一大切な物だった。

その指輪を持ち、ペッパーは病院へ戻った。そしてトニーの手を取ると、話しかけた。
「トニー、覚えてる?小さい時に、あなたは私にプロポーズしてくれて、指輪をくれたでしょ?あの指輪、今でも私の宝物なの…。ずっと忘れられなかったの、あなたのこと…。いつか会えたら、あなたに気持ちを伝えようって思ってたわ…。あなたのこと、好き…。愛してる…」
すると、トニーの手がピクリと動いた。そして…。
「約束通り…迎えに来た…」
ペッパーを見つめたトニーは掠れた声で囁くと、彼女の腕を引っ張った。途端に、ペッパーはトニーの腕の中に閉じ込められた。子供の頃と変わらない温もりと、あの頃とは違い力強いトニーの腕の中で、ペッパーはようやく自分があるべき場所に戻ってきた気がした。

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