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On Your Side Forever①

男の一日は早い。主人のために紅茶をいれ、『ゴミ出し』をし、主人の寝室の窓を開け、ベッドを整える。
毎朝日課となっているこの一連の作業を終えた男は、主人の待つキッチンへと向かった。

「帰った?」
男の主人である若き美女は新聞片手に紅茶を飲んでいた。
黒のランジェリーにバスローブを羽織った女性は、全米屈指の軍事企業であるポッツ・インダストリーズの若きCEO、ヴァージニア・ポッツ。
バスローブは申し訳ない程度に羽織っただけなのだから、括びれた腰もスラっと伸びた美脚も惜しげもなく丸出しだが、いつものことなのか男は特に気にすることない様子だ。
「はい。ですが次はいつ会えるのかと期待しておりました。ミス・ポッツ、一夜限りの関係にするならば、あまり期待させると面倒なことになりますので…」
忠告しようとする男を制したヴァージニアは、やれやれと大袈裟にため息を付いた。
「分かってるわ。トニーったらうるさいんだから」
トニーと呼ばれた男を追い出すように手を振ったヴァージニアは、身支度を整えようと立ち上がった。

ポッツ・インダストリーズのことを語るには、この『トニー』と呼ばれた男性のことにも触れなければならない。
元々ポッツ・インダストリーズはこの業界では2番手の存在だった。最大手の会社はスターク・インダストリーズ。だが15年前、そのライバル社であったスターク・インダストリーズの社長夫妻が突然事故死。しかも重役共々全員が飛行機事故で死亡という痛ましい事件が起こったのだ。社長を筆頭に重役が全員いなくなったスターク・インダストリーズはこのまま路頭に迷うと思われた。そこへ救いの手を差し伸べたのは、ポッツ・インダストリーズの先代の社長であるヴァージニアの父親だった。彼はスターク・インダストリーズを合併吸収した。そして当時まだ17才だったスターク夫妻の一人息子だったアンソニー・エドワード・スタークを自分の秘書にしたのだ。
アンソニー・エドワード・スターク、つまりトニーは17歳でMITを卒業した天才児だった。そのためポッツ社長の下でみるみる頭角を現した彼は、1年後にはなくてはならないポッツ社長の右腕となっていた。彼の有り余る才能を見抜いたポッツ社長は、彼を社の重役にしようとしたが、ライバル社の後継ぎを…と周囲は猛反対。トニー自身も今のポジションで十分だと言うため、彼はそのまま秘書を続けていた。
真面目で堅実な彼はポッツ夫妻もいたく気に入っており、将来は娘の結婚相手にと考えていたのだが…。
ところが2年前、ポッツ夫妻も事故でこの世を去ってしまった。そこで当時20歳だった娘のヴァージニアが跡を継ぐことになったのだが、社の内情を一番把握しているのはトニーということで、彼は引き続きヴァージニアの秘書となっていた。最も、10年以上ポッツ家に出入りしていたトニーなのだから、気心が知れているとヴァージニアが望んだことも理由なのだが…。

ハーバード大で経済学を学んだヴァージニアは、美しく知的で社交界の花形だった。
その知性と美貌をフル活用する彼女は、あまたの男どもを虜にした。LA中の実業家にモデルや俳優など、彼女と一夜を共にした男性は星の数とも言われており、彼女をモノにできれば出世するという噂まで広がっていた。
「ミス・ポッツ、あまりお遊びになられますと…」
と、いつか彼女が傷つくのではと事あるごとに忠告するトニーだが、
「いいじゃないの。トニーったらうるさいわよ」
と、ヴァージニアは毎晩違う男性とデートを繰り返していた。

②へ…

***
トニペパの逆Ver.です。
この後登場する2人の恋路を邪魔するのはもちろんあの方ですよ(笑)

2 人がいいねと言っています。